NFL21 week20

 いや素晴らしい。ディヴィジョナルプレイオフはアップセットが続出し、これで今年もまたMVPを輩出したチームは優勝できないというジンクスが(ほぼ確実に)継続だ。確か前回、リーグMVPがLombardy Trophyを掲げることができたのは1999シーズンのSt. Louis Rams。つまり21世紀に入ってからは1度たりともこの現象は生じていないことになる。マッデンの呪いよりよほど的中率は高い。チームの優勝を望むのなら、オーナーやファンはスター選手がMVPを取るのだけはやめてくれと祈った方がいいのかもしれない。
 NFL第20週はまず両カンファレンスのシード1位が相次いで敗北。正直、Titansの敗北については違和感はない。オフェンスEPA/PからディフェンスEPA/Pを引いた数値で見れば、Titansの実力はリーグ14位(+0.043)。プレイオフに出られなかったChargers(+0.044)やColts(+0.060)、ワイルドカードで敗れたEagles(+0.052)よりも下だ。彼らはそもそもシード1位に入ったこと自体が幸運だったわけで、もしかしたらその時点でツキを使い果たしていたのかもしれない。
 今シーズンのTannehillはANY/Aでリーグ平均を下回る数値を残し、キャリアトータルのRANY/Aは-0.10とBledsoe(-0.11)とあまり変わらない水準になっている。元々Dolphins時代の彼は平均以下のQBで、それがTitansでプレイしていた1シーズン半の間だけリーグ平均を大きく上回る数字を残していた。今シーズンになって彼の成績はDolphins時代まで戻った格好だ。どちらが本当の彼かと言われれば、普通に考えてDolphins時代及び今シーズンのTannehillこそ本物と考えられる。一方、BengalsのBurrowは母数は少ないもののキャリアトータルでRANY/Aは+0.52だ。
 そんなQBが率いるTitansでもゲーム前のオッズは-4.0とBengalsに対してfavoriteと考えられていた。Titansのホームだったのが一因だろうが、HFAを除いてもこれはTitansの方が高評価だったと見るべきだろう。実のところ、たとえばDVOAFPIで見れば、確かにTitansの方がBengalsより微妙に評価が高い。だからこのゲームがアップセットだったのは間違いないとはいえ、想定できないアップセットではなかった。
 それより驚きなのは49ersがPackersを破ったゲームだろう。それも第4QのパントブロックからのリターンTDで追いつき、最後はさよならFGで決めるという実に渋い展開。両オフェンスがろくに機能しなかった残念ゲームとも言える。今シーズンのANY/A全体1位と6位のQBがぶつかったとは思えないような試合だ。
 オッズはPackersの-5.5と、Titansの試合よりもさらにホームが有利とされていた。そしてこの両チームの比較の場合、EPA/Pの差はPackersが+0.117に対して49ersが+0.080と前者の方が評価が高いし、FPIも同じくPackersが上。DVOAについては実は49ersが全体4位に対してPackersが9位となっており、この視点から見ればこのゲームはアップセットではないという結論になるが、まあ全体としてはアップセットと見ていいだろう。なおこれでRodgersはプレイオフで49ersに4戦全敗となった。
 さらにディフェンディングチャンプのBuccaneersはRamsに3点差で敗北。実はこの組み合わせについてはFiveThirtyEightが事前に「アップセットもあり得る」という記事を書いていた。もともとBucsがfavoriteだとはいえ、オッズは-3.0とHFAがなければほぼ力が均衡していると見られていたわけだが、例えばPFFのグレードを見るとむしろRamsの方がBucsよりも高い評価を得ていたらしい。
 またBucsディフェンスはリーグでも最も5人以上がラッシュをかけた比率の高いチームだが、対戦相手であるStaffordはブリッツを受けた時のQBRやレーティングなどでリーグでもトップに位置している。ブリッツを受けたプレイに限るため母数が小さく、信頼度はそれだけ低いが、気になるスタッツではある。またBucsはブリッツをかけた時の方がディフェンスの成績は悪く、またブリッツ時にはマンカバーが増えるのだが、マンカバー相手に最もいいQBRを記録しているのもStaffordだ。要するにBucsにとっては非常に相性の悪い相手だったわけだ。
 EPA/PではBucsが+0.208に対してRamsが+0.108だったが、上記のような予想がある程度は当たったのか、StaffordのトータルEPAが+11.5に達したのに対してBradyは-12.9となった。それでもこの点差にとどまったのはランでBucsの方が圧倒的によかったから。Ramsと言えばまるで未来がないかのようなチーム作りが特徴だが、BeckhamがこのゲームでEPA/P+0.80を記録するなど、今シーズンはその投資が実を結びそうな数少ないチャンスになりつつあるのかもしれない。
 そして唯一アップセットを避けられたのがChiefs。オッズは-2.0と4試合の中で最も接戦になると予想されており、実際にOTまでもつれたのだが、それでも敗北は回避した。実はシーズンEPA/Pで見るとBillsが+0.202に対してChiefsが+0.102と、Billsの方が上。ディフェンスのBills、オフェンスのChiefsという戦いだったが、42対36という数字を見る限りBillsディフェンスが期待外れに終わった、と考えていいんだろう。
 プレイオフはディフェンスの強いチームが有利になる傾向が見られるのだが、実際このゲームについてはそうでない方向に流れた。両QBの数字はAllenが4TD、Mahomesが3TDで、Y/Aはそれぞれ8.9と8.6。QBRはAllenが90.3でMahoesが96.0と、どちらも文句のつけようがないレベルに達している。シーズン中からディフェンスが冴えなかったChiefsにとってみれば想定の範囲内の展開だが、Billsにとっては想定外だろう。これで彼らは2年連続でChiefsに負けてシーズンが終わったことになる。
 結果、AFCのChampionshipはBengals @ Chiefsに、そしてNFCは49ers @ Ramsと西地区同士の対決に決まった。シーズン前の予想と比べれば、ここにいて不思議でないのはChiefsくらいか。ディヴィジョナルでアウェイだったチーム同士がChampionshipでぶつかるのは、私の記憶だと確か2006シーズンのPatriots @ Colts以来。ホーム優位でアップセットが少ないのがディヴィジョナルの特徴のはずだが、今年は上位陣の実力差があまり開いていなかったためにこのような結果になったと思われる。何にせよリーグとしては接戦でもつれる展開が相次ぐのは大歓迎に違いない。

 ゲーム外ではブラックマンデーがまだ継続中だ。ワイルドカードで敗れたRaidersはGMのMayockを解雇。既にHCだったGrudenが辞任しているため、これで首脳部一掃が決まった格好だ。プレイオフまで進みながらこの展開というのも珍しいかもしれないが、こちらでも指摘した通り今シーズンの彼らは非常にツキに恵まれていたのであり、内実を考えた時に見直しが入ること自体にはそれほど違和感はない。
 逆に新GMを決めたのはGiantsで、BillsのアシスタントGMだったSchoenを雇った。長年、今一つの成績を続けてきたBillsが最近になって強豪へと姿を変えたことを評価したものだろう。Billsが敗れたためSchoenはすぐにでもGiantsの仕事に移ると思われる。GMの能力を見定めるのは正直簡単ではないのだが、さてGiantsの今回の選択はどう出るだろうか。
 他に報じられているネタとしては、まずSaintsのHCであるPaytonがチームに戻るかどうか決めていないという話がある。Breesの引退後も今シーズンはプレイオフまであと一歩に迫るなどそれなりに健闘はしていたのだが、開幕で先発に指名したWinstonは今の契約だとシーズンが終わればFAになる見通し。次にどうするか見えてこないチームに残るべきか否か、悩むところだろう。
 逆にオーナーがHCについて「どうするか決めていない」と話しているのはCowboys。McCarthyはPackersでも実績のあるHCではあるが、今シーズンに限って言えば有利と思われたプレイオフ初戦での敗退のせいで落胆している人は多いだろう。もっともオーナーの息子が、McCarthyは2022シーズンも指揮を執る可能性が高いと述べているそうなので、結果的には普通に継続という落ちがつきそうな気がする。
 来シーズンに向けて選手絡みの話も出ている。例えばRodgersは「プレイを続けるなら再建の一部を担いたくはない」と発言しており、Packersがチームの立て直しに動く場合はよそでプレイする可能性もにおわせている。元々彼はこのオフについてある程度の自由裁量を手に入れていると報じられている。Packersに残るのも一つの手だが、少しでも不満があればよそへ行く選択肢が現実味を帯びる。
 競争のレベルが低かったとはいえ2年連続MVP(ほぼ確定)を手土産にすれば、大半のチームが喜んでRodgersを歓迎するだろう。例えばディフェンスが充実しているもののQBに問題があるとされるチーム(SaintsやPanthersなど)に彼が行くとしたら、勢力図もまた変わりそうだ。結果としてPackersに残るケースも含め、これまたオフの注目点になりそうだ。
 そしてBradyだが、驚いたことに彼については「引退の可能性」がささやかれている。今までオフに突入しても普通に来シーズンもやるとだけ言っていた彼について、周辺情報とはいえこういう話が出てくるのは興味深い。正直、Rodgers同様に彼の成績を見る限り引退の必要は全く感じられないが、にもかかわらずこういう話が出てくるということは、何か心境の変化があったのだろうか。個人的には以前から言われていたように45歳までやってみせて、後世のためにここまでできるというハードルを設定してから引退してもらいたいものだが、さてどうなることやら。
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コメント

おかべさせ
Bills@Chiefsは観ていて心底感動しました。
上位陣だけでもここまで上手く戦力均衡を実現できているリーグ運営には本当に感謝です。

desaixjp
リーグにしてみればファンがそう言ってくれれば大成功なんでしょう。
できればJaguarsみたいに低迷が続いているチームが急に強くなる場面がもっと増えれば、さらに面白いかなと思います。

おかべさせ
急に強くなるチームが増えるということは急に弱くなるチームも増えるということで。
鉄ファンとしては、衰えゆくQBと共にチームが徐々に勝てなくなっていくさまを見ているのが辛くはありましたが、実に感慨深く。
移り変わりが激しすぎてもついていけないので、今ぐらいが丁度よいですw

desaixjp
理想としては「自分が応援しているチームは常に強豪で、それ以外は強弱めまぐるしく入れ替わる」といったところかと、個人的には思っています。
特定チームがいつまでも強い状態というのは、そのチームのファン以外にとっては面白くない事態でしょうし。
個人的にはこれでChiefsが4年連続AFCCG出場という点にそろそろ飽きてきています。

Kichinkito
いつも感心しながら読ませていただいています。
チーフスはマホームズの新人契約2~5年目を最大限に活かせましたね。
今後はキャップヒットも増えて、戦力の維持に苦労しそうです。
戦力均衡の意味では、ブレイディのように超一流QBに安く契約されると厳しいです。
あとSBを狙えるチームはそれ自体が売りとなり、FA戦線で有利と思うので、
補償ドラフトはもう少し高くても良いかも。
そして弱いチームはとにかくQBガチャを引くことですね。
ただ引いてから何年見守るかが難しいです。

desaixjp
Mahomesのキャップヒットが本格的に増えてくるのは2022シーズンからなので、確かにそこからは色々と工夫が必要でしょうね。
ただサラリーキャップという制度は工夫の余地がかなり大きいことを踏まえるなら、まだまだ彼らが強豪でい続ける可能性はそれなりにあるように思います。
なにより優秀なQBがいれば一定の確率でプレイオフに出続けることは、そのQBのサラリーが高くても十分に可能でしょう。
むしろ63歳のAndy Reidがいつまで続けるかの方が問題かもしれません。
弱いチームがQBガチャを引く、という点についてはその通りだと思います。
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