NFL21 week10

 NFLは第10週が終わり。いよいよ後半戦に本格突入したわけだが、引き続きアップセットが多い。TNFでは2勝のDolphinsが2敗のRavensを相手にダブルスコアで勝利。怪我でバックアップに回っていたTagovailoaが先発Brissettの負傷でプレイを引き継ぎ、チームを勝利に導いた格好だ。ただしQBRを見る限りそれほど大活躍した印象はない。むしろRavensのオフェンス不振の方が目立っている。
 日曜日にはリーグ最高勝率だったCardinalsが、Murrayの負傷もあって控えのMcCoyでプレイせざるを得なくなり、Panthers相手に大敗した。後ほど紹介するがPanthersに復帰したNewtonはパスで1TD、ランで1TDと派手な復活を見せた。先発はあくまでWalkerだったのだが、プレイブックに習熟すればNewtonが先発になってもおかしくはないだろう。もし彼の下でチームが勝ち星を重ねたりすれば、IRに入ったDarnoldが戻ってきた時にいろいろと面白いことになりそう。
 同じくNFCで優勝の有力候補と見なされてたBuccaneersはこれまた2勝しかしていないFootball Teamに10点差で敗北。QBRでもANY/AでもレーティングでもHeinickeの方がBradyを上回ったという、完全な力負けにしか見えない展開だった。WFTの本来の先発であるFitzpatrickは今シーズンはもう戻ってこないと報じられており、その意味ではHeinickeが踏ん張ったのは朗報だろう。
 もう少しでアップセットだったのがLionsとSteelersが引き分けた試合。もともとこのゲームはRoethlisbergerがCovid-19リストに入ったために出場できず、控えのRudolphが試合に出ていた。その意味では勝ち星のないLionsにとって千載一遇のチャンスだったのだが、これでも勝てないあたり今年の彼らは呪われているのかもしれない。でもまあ逆パーフェクトは避けられた。
 他にも細かいアップセットがいくつかあり、結果として今週もまたアナリティクス系ランキングで大きな変動があった。FiveThirtyEightのEloではついにTitansがトップ、Packersが2番手と、なかなか予想外な並びになっている。上位にいたCardsやBucs、Rams、Ravens、Chargersなどが大幅に評価を下げた一方、大勝したChiefsとPatriotsがそろってトップ10に顔を出すなど、激しい入れ替わりが生じている。一方、ESPNのFPIではCardsやBucs、Ramsなどはそこまでランクを落としてはいない。ただRavensは3つランクを下げているし、実はWilson復活にも関わらず完封負けだったSeahawksの下げの方が大きい。上げが目立っているのはPatriotsだ。
 成績ではなく試合の中身で言うと、面白かったのはTNFのこのプレイ。こんなに必死にプレイしている無資格レシーバーは見た記憶がない。あと、2週間ほど前にいきなり注目を集めた控えQBの化けの皮があっという間にはがれた。その昔、少しだけいい試合をしただけで先発含みの契約を手に入れたQBもいたが、それよりも短い期間で夢が潰えた格好だ。そもそも大都市フランチャイズのファンはちょっとしたことで騒ぎすぎなのであり、普通にWilsonが成長するかどうかを見定めるのに時間を使った方がチームとしては妥当だろう。とはいえこんなデータを見せられるとファンが色々言いたくなる気持ちも分からなくはない。

 なおBrownsをクビになったOdell Beckham Jr.はRamsと契約した。どちらかというと事前の噂とは違うチームに行くことになった格好だが、今年のRamsの動向を踏まえると「さもありなん」な結果。RamsはJacksonを解雇したばかりなので、その交代要員ということになるんだろう。契約額はインゼンティヴを除き1.25ミリオンだそうで、半シーズン分の金額だとすれば割と大盤振る舞いだ。ただ、Beckhamがどこまで活躍できるかは現時点では微妙だと思う。
 彼のEPAを調べるとルーキー年だった2014シーズンは66.9でレシーバーとしてはリーグ6位、その翌年は96.3でリーグトップと、間違いなくエリートWRだった。2016シーズンにも46.2で18位とトップクラスの成績を残したものの、これが現時点では彼の全盛期の最後だった。この後、彼がトップ100以内に入れたのは2018シーズンの35.9(34位)だけで、あとは冴えない成績にとどまっている。特に2020シーズンは162位、今シーズンは第9週時点で165位と、かなり凡庸な数字にとどまっている。
 もっと重要なのはEPA/Pだ。こちらで見るとBeckhamの全盛期はさらに短く、2015シーズンまでとなる。ルーキー年のEPA/Pは0.475でリーグ10位(80プレイ以上)、翌年は0.557でリーグ4位になったのだが、2016シーズンにこの数字は0.253で39位に低下。2017シーズンは80プレイに達していないが、数字的には39位と40位の間にあり、2018シーズンは0.268の34位となっている。
 それでもGiants時代はまだマシ。Browns時代になると2019シーズンが0.084の63位、プレイ回数の少ない2020シーズンが59位相当で、2021シーズンも同じくプレイ回数は少ないが65位か66位のあたりに位置している。2014シーズンからの累計では0.247となり、500プレイ以上のレシーバー52人中34位にとどまっている。具体的に言えばKyle Rudolphの下でNelson Agholorの上というポジションだ。Jones(0.460の5位)やThomas(0.451の6位)といった本当の一流WRたちに比べれば、これまた凡庸な数字である。というか実のところ、Ramsに解雇されたJackson(0.398の9位)よりもかなり低い。
 キャリアトータルだけでない。今シーズン(第9週まで)の数字を見ても、JacksonのEPA/Pは0.636あるのに対し、Beckhamは0.116と大きく下回っている。もちろん半シーズンの数字だと母数が小さすぎてあまり参考にはならないが、それにしてもJacksonを切り捨ててBeckhamを取りに行った狙いは正直よく分からない。Ramsの選択はこれで正しかったのだろうか?
 Beckhamは基本的には凡庸なWRであるか、さもなくば早々に燃え尽きてしまった選手なのだろう。最初の2~3年がたまたまよかったのか、もしくは当時はそれが実力だったがその後ですぐに衰えてしまったのか、そのどちらかだと思われる。派手なハイライトリールのおかげで過大評価されているが、実力はもっと下なのではなかろうか。だとすれば2年前のGettlemanの判断は正しかったわけだ。
 なおBeckhamは第10週のMNFに早速参加したが、EPAはトータル-1.0と地味な数字で終了。1試合で結論を出すわけにはいかないが、現時点では予想通りの結果だ。そりゃこうやって煽られるのも仕方ない。

 そしてもう1人、このタイミングでFAを脱して職にありついたのがNewton。かつてのチームであるPanthersと1年10ミリオンの契約を結んだと報じられているが、保証されているのは4.5ミリオン(おそらく1シーズン換算)だそうで、悪くない金額だ。何しろPatriotsがNewtonに支払ったのはフルシーズン+今年のキャンプまでで3.75ミリオンでしかない。そして早速試合にも参加したのは上に述べた通りで、ランとパスで3.2EPAを獲得している。
 Newtonにとっては「よかったね」という話だが、Panthersファンから見れば「何しとんねん」という感想になるだろう。昨年春にNewtonを切り捨ててから、Bridgewater、Darnoldと先発QBで迷走した挙句に、結局Newtonを呼び戻しているわけで、フロントの不手際という印象が強い。もちろんDarnoldの負傷という事態があったからこそだが、彼の今シーズンの成績を見てもDarnoldトレードが成功だったとはとても言えない状況だ。
 それでも、以前のNewtonの契約よりは安い金額で、まだ32歳で実績があるQBを手に入れることができたと考えれば、シーズン途中の緊急事態対応としては悪くない。Newtonにしてもワクチンを打ったかいがあったというものだ。ただどちらにしても、シーズンが終わった後にはきちんと方向性を見直す必要があるんだろう。
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