NFL21 week7

 NFLは第7週が終了。相変わらず際どい試合が多いようで、つまり引き続きツキの左右する要素が大きいと考えられる。1試合当たりの発生数が少ないターンオーバー関連のスタッツもその一例だろう。こちらのデータを見ると、ターンオーバーレシオがプラスのチームの中には大きく勝ち越しているところが目立つし、逆にパニックの時間と言われているChiefsなどはこの数字がかなり悪いことが分かる。
 Chiefsについては前に指摘したのはスケジュール問題だ。ただしPro-Football-ReferenceのSoSを見ると、第7週終了時におけるChiefsのスケジュール強度は+1.8で、実のところAFCでも3番手にすぎず、NFL全体では10番目とそれほど極端に厳しいわけではない。そのためSRSは-0.4とマイナスまで落ち込み、何とAFCで10番目と下位まで低下している。さすがにESPNのFPIFiveThirtyEightのEloではそこまで低下してはいないが、まあ確かに「パニックの時間」になってもおかしくはない。
 それでも一時期ぶっちぎりで酷かったディフェンスは僅かながら改善しているようで、EPA/PだとJaguarsよりはマシな全体31位になっている。一方オフェンスは上位陣(Bucs、Rams、Cardinalsなど)からそこそこ差をつけられての5位。オフェンスのEPA/PからディフェンスのEPA/Pを引くとマイナスになってしまい、負担のかかるオフェンスがディフェンスを引っ張り上げきれていない状況にあることがわかる。もちろんシーズンが進めば状況も変わると思われるが、現状ではSuper Bowl Hangoverと言われるのもさもあらん、という状態だ。
 そのChiefsのMahomesは第7週に脳震盪を起こした。一応、試合後には大丈夫だと言っているようだが、脳震盪はかつてTroy AikmanやSteve Youngのキャリアを終わらせた怪我だけに、油断は禁物だろう。彼のプレイスタイルを考えるとそのリスクを避けるのはなかなか大変かもしれないけど。
 他にもJetsのWilsonが膝を負傷して途中で引っ込んだ。試合後に診断したところ、2~4週間は戻ってこられないという。Jetsは彼以外にはプレイ経験のないWhiteしかいないため、慌ててFlaccoをEaglesからトレードで確保。かなり泥縄な展開になっている。個人的には現在の成績を踏まえても、ここで下位とはいえドラフト権を譲るのは反対。それこそNewtonでも雇えばよかったような気がするが、チームでのプレイ経験があるQBの方が対処しやすいのも事実であり、判断には悩むところだ。
 あとはMayfieldが負傷したBrownsはKeenumが先発した。幸い僅差ではあったが勝利できたため、大きなダメージにはならなかったようだ。逆にBroncosはPanthersと並び、開幕当初の勢いが失われつつあるように見える。そのPanthersはついにDarnoldが試合中にベンチに引っ込められた。彼のANY/Aは33人中29位、DAKOTAは同27位であり、定位置に戻ってきている。
 以前こちらで指摘した通り、このオフにDarnoldを手に入れるためドラフト権を3つも譲り渡したPanthersの判断は、やはり間違いだったのではなかろうか。確かにJetsというチームにいたせいでDarnoldの成績が下がっていた面はあるだろう。それでもRANY/Aが-1.28という数字は、言い訳が効かないレベルの酷さだ。QBの成績は、確かにチームやコーチの影響もあるが、それでも他の影響を受けにくい独立性の高い数字だと私は思っている。BridgewaterのANY/Aはあまり冴えない数字だがDarnoldよりはずっといい。Panthersのこのオフは失敗だったと思う。

 で、追い詰められたPanthersが11月2日のトレード期限までにTexansとWatsonをトレードするのではないかとの話が出てきている。確かにWatsonならDarnoldどころかBridgewaterよりずっといいQBなのは間違いない。Panthersは既にシーズン中にGilmoreもトレードで手に入れており、いわばwin nowモードに入っている。であればDarnoldを数試合で見捨てて他のQBに走る可能性もなくはないだろう。
 同じくWatsonを狙っていると言われているのがDolphinsだ。ただしオーナーはあまり乗り気でないという。最大の問題はWatsonを手に入れても、セクハラ告訴絡みで彼が使えなくなるリスクが存在すること。大量のドラフト権を譲ってWatsonを入手したのに、裁判がらみでNFLからプレイを止められてしまえば大損となる。
 Watsonがらみのトレードについては、Over The CapのFitzgeraldがエントリーを書いている。彼もまた、Watsonの「フィールド外における法的問題」が事態をややこしくしているが、それに対してNFLが積極的に動いていない点を指摘している。このような状況においてNFLがダチョウのように「顔を砂にうずめる」(見て見ぬふりをする)のは珍しくない。加えてTexansがWatsonを試合で使わない方針を示していたこともあり、NFLとしても知らんぷりを決め込むことができたのだそうだ。
 しかし彼がトレードされるとそうは行かない。トレード相手は明白にWatsonを今シーズン中に使うつもりでドラフト権を差し出すわけで、それを受けて見て見ぬふりをしてきたNFLがWatsonの出場を差し止める可能性も出てくる。そうならない保証がないと、なかなかトレードは難しいだろう。NFLとしては大きな動きがないままトレード期限を迎え、その後で方向性が定まるまで何もしないという「時間切れ戦略」を狙っていると思われる。それでもトレードを成立させるなら、Watsonがロースターにいる試合数に応じて差し出すドラフト権を変えるような条件付きトレードが望ましいのではないかとFitzgeraldは指摘している。
 そのうえでトレード先について、まずDolphinsが今シーズン中にトレードを急ぐ可能性は少ないとみている。既に1勝6敗に成績が落ち込み、Lions、Jets、Jaguarsらと並んで最弱チームの1つと思われていることから、希望の少ない今シーズンにリスクを取るよりも、先行きが見えている可能性の高い来年3月にトレードする方がDolphinsにとっては合理的との指摘だ。Tagovailoaについてはあまり評価しておらず、来年には彼をトレードに出す想定もしている。また今シーズン内にWatsonを迎え入れるだけのキャップスペースが現在はなく、今年中にトレードするなら他の選手のリストラも必要になるという。
 指摘はその通りだが、個人的にはTagovailoaについて2年目のこの時点でbustと評価してしまうのはさすがにまだ早いと思う。昨シーズンの彼のANY/Aは規定数に達した36人のうち28位と冴えなかったが、一方で彼は9試合しか先発しておらず、母数が小さい。今シーズンは現時点で33人中21位と少し上向いているうえに、これまた先発数が4試合と他のQBより少なめ。1年目のRosenのようにリーグでもどん底の成績なら早々に見捨てる考えもあるかもしれないが、Tuaはそこまで酷いQBではない。さすがに判断が早すぎるのではなかろうか。
 一方、PanthersはDolphinsと状況が全く異なる。彼らのロースターはQBを除けば充実しており、Dolphinsよりも今トレードすることにメリットがある。そもそも彼らは昨年はBridgewater、今年はDarnoldと相次いでQB市場に選手を探しに出ており、それぞれにかなりの金額を投じている(Darnoldについては来年のオプションだが、これも全額保証だ)。加えてPanthersにはキャップスペースもある。FitzgeraldはPanthersの方が「最良のトレードパッケージ」を差し出せるのではないかと見ている。
 とはいえどちらとトレードしても法的問題は残る。Fitzgeraldも、Watsonに対する告発が信頼できるとしているこちらの記事を紹介しており、法的リスクが存在することは否定していない。最悪の場合、Vickのように数年はリーグから遠ざかる必要もあるかもしれない。現時点でのトレードは、言われるほど簡単ではなさそうに見える。
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