NFLでは第6週が終了。全勝を続けていたCardinalsはアウェイでBrownsを圧倒して6勝目を達成。Brownsにとっては踏んだり蹴ったりだが、チームの勝率は5割に低下したうえに
Mayfieldは左肩を痛めたという。他にもBucs、Packers、Rams、Ravens、Cowboysなど1敗を維持したままのチームもいくつもある。
もつれた試合が増えているのはリーグにとっては狙い通りだろう。一方、各チームにとっては運不運が分かれていることを示す。特に試合数の少ない序盤では、単なる勝ち負けだけを見ると実力からかけ離れた成績を残している多くなりがち。もちろん過去の数字はもう変わらないのだが、それを踏まえても現時点でツキに恵まれているチームは今後はそうでもなくなる可能性が、逆に不運に見舞われているチームは今度は成績が上向く可能性がある。というかVikingsなどはその典型例だろう。
現時点でのツキを測るうえで、
Pythagenpat勝率を使ってみる。実際の勝率とPythagenpat勝率との差がプラスだとそのチームはツキに恵まれており、マイナスならむしろツキに見放されているわけだ。まずはツイているトップ5。
Packers +0.296
Cardinals +0.176
Chargers +0.176
Raiders +0.153
Titans +0.146
勝率の高い2チームが紛れ込んでいるのが分かる。逆に言えば彼らは他の強豪チームより実力的には劣っている可能性があるわけだ。それ以外の3チームも現状は勝ち越しているが、実力を測る場合はツキの効果を差し引く必要がありそう。続いてボトム5。
Lions -0.232
Bills -0.208
Colts -0.205
Patriots -0.157
Seahawks -0.126
勝ち越してなおこの水準にいるBillsが、各種予想でSuper Bowl優勝の有力候補に挙がっているのは不思議ではない。もちろん彼らの強力なディフェンスが継続可能かどうかという問題はあるが、プレイオフ競争も含めて現時点では生き残りの可能性は高そう。残る4チームは負け越し状態だが、それは不運も働いていると考えられる。特にLionsにはその傾向が色濃いようだ。
もちろんシーズンを通して運不運はある。だからこれらのチームの中には平均への回帰に見舞われないところもあるだろう。逆にここまでは平均的なツキの偏りだったが、これからシーズン後半にかけてツキが偏るチームも出てくるかもしれない。勝ち負けに一喜一憂するのは当然だが、そこから一歩引いてチームの実力を見ると、時に違う風景が見えてくる点も忘れないようにしておきたい。
さて、前に
こちらのコメント欄で、RBのサラリーが安くなっているがこれを制度面で手助けするのは難しい、という話を書いた。その時も指摘した通り、ベテランミニマムで働いている選手はRB以外のポジションにも大勢おり、RBだけを救済するのは難しい。それでも何か手立てはないだろうか。RBだけというより、安くこき使われている選手に対して救済手段となるような制度は考えられないだろうか。
1つの方法として考えたのが、プレイ均等割りサラリーという仕組みだ。すべてのチームがサラリーキャップのうち一定金額をキープしておき、シーズン終了時にスナップカウントに応じた割合をプレイに参加した全選手に配る。この方法を使えば、ポジションごとのサラリー格差をある程度は埋め合わせられる。一例として2020シーズンのSeahawksを見てみよう。
同年の
彼らのキャップを見ると、最高額となっているRussell Wilson(QB)は31ミリオンのキャップヒットを計上しているのに対し、RBを見ると最も高額のRashaad Pennyですらキャップヒットは2.936ミリオンとWilsonの10分の1未満。プレイ回数が最も多かったChris Carsonはさらに少なく、2.149ミリオンしかもらっていない。今のNFLだと珍しくもない傾向だろう。
一方、
スナップカウントを見るとWilsonは98.31%の1047回、Carsonは37.84%の403回だ。1スナップあたりのサラリーを計算するとWilsonが2万9608ドル、Carsonが5333ドルとなり、格差は多少縮まるがそれでも大きな差がある。同じ1回のスナップでも、Wilsonの価値は同じフィールドにいるCarsonの5倍以上に達しているわけだ。
プレイ均等割りサラリーでは、この価値を等しいものとする。Seahawksのスナップカウントはオフェンスが1065回、ディフェンスが1152回、スペシャルチームが451回の計2668回だ。この2668回に毎回11人の選手が参加しているので、トータルスナップカウントは2万9348回となる。このうちWilsonのスナップカウントが占める割合は3.57%、Carsonは1.37%となる。
もしプレイ均等割りサラリーがサラリーキャップ全体の5割を占めていたとしたらどうだろうか。Seahawksの2020年のサラリー総額は200.9ミリオン弱。その半分は100.4ミリオン強だ。この分はプレイ均等割りで選手に配られ、残る100.4ミリオン強が通常のサラリーキャップとして機能する。各選手のキャップヒットもこれに合わせて半額になるとすれば、Wilsonのキャップヒットは15.5ミリオン、Carsonは1.1ミリオン弱となり、のこりの分はプレイ均等割りサラリーをもらうことになる。
Wilsonのプレイ均等割りサラリーは100.4ミリオン×3.57%の3.6ミリオン弱となる。Carsonは100.4ミリオン×1.37%の1.4ミリオン弱。これに上記のキャップヒットを足し合わせると、Wilsonのキャップヒットは19ミリオンちょい、Carsonは2.45ミリオンとなり、プレイ均等割りサラリーを導入する以前の14.4倍の格差が7.8倍にまで縮小している。サラリーが安い割にこき使われている印象のあるポジションが、より報われやすいサラリーの仕組みになるわけだ。
問題はこれがどのような影響を及ぼすかだ。おそらくこの仕組みを導入すればリーグが目指している「勢力均衡」を阻害するだろう。NFLはQBのリーグとなっており、とにかく有能なQBがいれば勝ちやすくなっている。となるとサラリーキャップで均等化を図るためには、有能なQBのサラリーが他のポジションより極めて高額になる必要がある。だがプレイ均等割りサラリーを導入すると、高騰を続けているはずのQBサラリーを相対的に抑制する効果をもたらしてしまう。
例えばSeahawksの控えであるGeno SmithがWilson並みのプレイ回数を記録すれば、彼のキャップヒットは現状の88万7500ドルから4ミリオン超まで増えてしまう。Wilsonとの格差は35倍近くあったものが4.7倍となり、ダメQBと一流QBのサラリー格差がむしろ縮小してしまう。Smithのような選手に頼らざるを得ないチームに比べ、Wilsonを使えるチームが今よりずっと有利になるわけだ。
RBだけ助けるのは不公平だから、プレイに参加した選手全体に均等に行きわたるようなサラリーの仕組みを作る、というのが今回紹介したプレイ均等割りサラリーの目的。だがこれをやると、リーグがずっと取り組んできたはずの勢力均衡に反してしまう。今でさえ一流QBとそうでないベテランQBのサラリー格差がなかなか広まらず、それが勢力均衡を妨げる要因になっているのに、その傾向をさらに強めるような制度になりかねないのだ。
プレイ均等割りサラリーは一部の選手にとっては望ましいルールになり得る。でもリーグにとってはおそらくそうではないし、ファンにとっても同じだろう。残念ながらRBのサラリーを上げる際にこの方法は使えないと思う。
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