NFL21 week4

 NFLは第4週が終了。例年ならこのタイミングでQBの成績をいったん確認するのだが、今シーズンから試合数が増えるので、今年は第5週の時点でまとめてみたい。
 成績で見ると、残っていた全勝チームのうちBroncos、Panthers、Rams、そしてRaidersが敗北。全勝チーム同士の対決になったRamsはもちろん、他のチームもアウェイでそれなりに強いチームを相手に敗れているので、それほど悲観する必要はなさそうに見える。それにしても、これで残った全勝チームはCardinalsのみとなったわけで、彼らの評価がこれから爆上がりしそうな気がする。
 一方、全敗チームの中ではJetsがTitansに、ColtsがDolphinsに、そしてGiantsがアウェイながらSaintsに勝って初白星。一方Jaguarsは途中までリードしていたが最後に突き放され、Lionsは引き続き冴えない状況が続いている。それでも4週終了時点で0勝と0敗のチームが3つしか残っていないのは、比較的まぎれの多いシーズンになっていると見てもいいんだろうか。
 ゲームの中でアナリティクス的に注目を集めていたのは、Patriotsの第4Qにおける4th downの選択だ。Next Gen Statsの分析によると、ゲーム終盤Bucsの38ヤード地点でFGを選んだのは失敗だったそうだ。結果論としての失敗ではなく、この選択が勝利の確率を下げたという主張である。
 それによると、FolkのFG成功率は45.1%、Patriotsがgo for itした場合にFDをとれるチャンスは52.3%だった。もしFolkがFGに成功した場合もBucsは1分近い時間と2つのタイムアウトを残しており、Patriotsのwin probabilityは52.3%にしかならなかった。逆にもしオフェンスがコンバージョンに成功していたなら、Folkはおそらくより近い距離で、より残り時間の少ない状態でFGを蹴ることができ、win probabilityは65.3%にまで上がっていた。そしてFG失敗はコンバージョン失敗同様、実際のゲームと同じ結果をもたらしただろう。プレイ前の時点でFGを選んだ場合のwin probabilityは24.3%、go for itなら34.7%あったそうで、両者の差は10.3ポイントもあった。
 もう1つ、Patriotsの前半終了前残り2分時点の選択もいろいろと話題になっていた。Bucs陣44ヤードでの4th & 2だが、Belichickはディレイオブゲームのうえでパントを蹴った。こちらのツイートによればパントの場合のwin probabilityが49.5%であったのに対し、go for itなら54.5%になったそうだ。結果的にパントの後でBucsは残り時間を使って69ヤードのドライブを行い、3点を追加している。最終的にはこの点差がゲームを決めた。
 ただしこちらの判断についてはモデルによって違う結果が出てくる。こちらのツイートだと、この局面はどちらを選んでもwin probabilityが48%になるようで、ゲーム終盤の決断ほど明確な判断ミスとは言いがたい。ただ、いずれにせよ今シーズンのPatriotsはgo for itを選ぶべき局面で全然選んでいない。以前はBelichickといえばリーグ全体に比べてずっとアグレッシブな選択をするHCだったが、リーグ全体が積極的なプレイ選択をするようになった結果、むしろ保守的なHCになっているように見える。もちろん新人QBを使っているから、という理由もあるだろうが。

 ちなみにDAKOTAで見ると第4週までの時点でリーグのワースト4に4人の新人QBが並んでいる。29位がLawrence、30位がMills、31位がWilsonで32位がFieldsだ。ワースト10に入っていないのはJonesだけだが、彼も22位と大した成績ではない。新人らしい成績と言えばそれまでだが、1巡で5人も指名された年にこの状態にあるのは人目を引く。また第3週の時点でFieldsが先発したこともあってか、第4週が始まる前にあちこちで今年のルーキーQBに対する現時点でのまとめ記事が掲載されていた。
 当然ながら内容は厳しいもので、わかりやすい一例がこちら。1巡ルーキー4人とMillsを含めた成績は第3週終了時でトータル1勝10敗であり、しかもその1勝はWilsonとJonesというルーキーQB対決で記録したものである点を紹介している。
 彼らの成績が単に悪いだけでなく「歴史的に見てかなり悪い」と指摘しているのが、FiveThirtyEightに掲載されたこちらの記事。その中に1970年以降、第3週までの時点で複数の1巡ルーキーQBが先発していた年を取り上げ、それぞれの平均QB Eloがどうであったかを比較した表が載っているのだが、見て分かる通り今年はぶっちぎりで最下位。少なくとも第3週の時点で見て今年のQBの状況がかなり悪いことが分かる。
 もちろん第3週の時点で結論に飛びつくのは気が早すぎるのは確かだが、それにしても数字が厳しいのは事実。昨年はCovid-19の影響もあり、特にカレッジのオフェンスは過大評価されているのではないかと書いたことがあるのだが、現状のQBたちの数字を見ているとそうした懸念がもしかしたら現実になっているのかもしれない、という気になってくる。元々、今年のドラフト有力QBたちはいずれも大学でのプレイ経験が少なく、その実力には不安があったのは確かだ。
 それにしてもFiveThirtyEightに載っているこの過去の1巡QBたちの成績を見ると、非常に目立つ特徴が1つある。複数の1巡QBが3試合目までに先発した全16事例のうち、実に半数が2010年代以降、4分の3が21世紀の事例なのだ。それ以前の例は1970年代に2例、1990年代に2例しかない。出てくるQBの数で見るとさらに極端で、全38人中20人と過半数が最近10年の選手だ。かつてのNFLはそもそも1巡でのQB指名が今ほど多くなかったし、指名されたQBも早くからプレイに投入されるケースは少なかった。その状況が、特に足元になって様変わりしていることがわかる。
 記事中にもある通り、昔に比べてQBを早い内からプレイさせる傾向が強まっているのは間違いないだろう。ルーキー契約の存在もあり、実力があるかもしれないQBを安く利用できる期間があるのなら、それを使わないのは損という発想が背景にある。もちろんルーキーを早々に先発させるのがいいことかどうかについては、様々な意見がある。それでも今の傾向を見る限り、来シーズン以降もルーキーQBが前倒しで試合に投入される流れは継続すると思われる。
 もう一つ、ルーキーQBに焦点を当てた記事を書いていたのがBill Barnwell。こちらは実際に個々のQBを取り上げてもっと詳しく書いている。例えば初先発で散々な結果になったFields(第3週時点のQBRは7.0)については、コーチのプレイコールがゲームに慣れていないQBを守るようなものになっていない点を指摘し、加えてこの数年BearsがQBのポジションを巡って迷走を続けていることにも触れ、Fields自身だけでなくチーム全体に課題があるとしている。
 Lawrence(QBR23.1)に関しては悪い点だけでなく、全体1位指名にふさわしいプレイも紹介。むしろNFLでは新人HCとなるMeyerのスキームに対して周囲のベテランがまだ信頼を抱いていないのではないかと書いている。Jones(同52.0)はルーキーの中では1番まともであり、2.5秒以内でパスを投げている時は安定しているが、時間をかけてロングパスを投げようとする際の成績は悪化していると記している。最大の懸念は、彼が既に能力の上限に達しているように見える点にあるそうだ。
 Wilson(同21.9)に対しては、既にチーム内で批判する声も出ているという。彼がボールを持ちすぎているという批判なのだが、Barnwellに言わせればチームメイトたちにも問題は山積しているそうだ。Jetsが採用しているKubiakスタイルのオフェンスは効果的にランを進めつつプレイアクションを生かすオフェンスなのだが、現時点でWilsonのプレイアクション時のQBRはリーグ最低。他にも8回行ったスクリーンパスでトータル13ヤードしか稼いでいないそうで、ブロッカーも含めた他選手がきちんと役割をこなしていない可能性がある。
 要するに1巡先発4人のうち3人はQB自身もさることながらチーム全体に課題があり、それが理由で酷い成績になっている可能性があるというわけだ。一方、Jonesだけはかなりまともなチームでプレイしており、そのため今の彼の成績が実力そのものであるように見える。もちろん3試合の時点で安易に結論を出すと間違える可能性がある点はBarnwell自身も指摘しているのだが、彼の見方がドラフト前の評価とも通じる面があるのは興味深い。最終的にこの4人プラスLanceの評価がどうなったかを見た時点で、ドラフト前の評判とどのくらい共通し、どのくらいずれているかを調べるのも面白いだろう。
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