プレシーズン2021

(ネタがたまってきたので、しばらく更新頻度を上げる)

 NFLでは全チームがプレシーズンの2試合目を終えた。残りはもう1試合しかなく、その後はシーズン開幕だ。もちろんプレシーズンの勝ち負けや成績にはあまり意味はない。むしろこの時点で注目すべきなのは、1週ごとに行われるようになった選手のカットの方だろう。ロースターの境界線上にいる選手たちにとっては毎週がサバイバル競争だ。
 これまでのところ、目立ったというか話題になったカット例としては、たとえばJaguarsのTebowがいる。もちろんTEとして復活を図った30過ぎの元QBがうまく生き残れる可能性はもとからそれほど高かったわけではない。正直、彼についてはスポーツ選手としてよりも芸能界への転身を考えた方がいいのではないかと思っていたら、実は既にESPNと複数年契約をしていたらしい。そのうえで夢を追うことを認めてもらっているのだから、ある意味幸せな人生なんだろう。
 もう1人、少し話題になっていたカット選手がRosenだ。同期のAllenが高額契約をゲットしてから間を置かずにクビになったわけで、実に対照的な結果となっている。もちろんRosenとAllenのプロでの実績を見ればこの差は仕方ない。いやむしろ、1巡指名という理由だけでダラダラとbustを使い続けるよりは、既にジャーニーマン化している現状の方がずっと合理的だろう。2018年ドラフト組でのRosenのbustっぷりはDarnoldがまともに見えるレベル(EPA/PはDarnoldの-0.030に対しRosenは-0.255)。ちなみにRosenはその後でFalconsに拾われた

 さてプレシーズンと言えば昔も書いたことがあるHackenberg指数だ。新人ドラフト上位QBでプレシーズンのANY/Aが2ヤードを割り込むようだとヤバいという、およそ母数が少なく参考にならない指数である。あくまでネタのない時期に取り上げるお遊びでしかないが、せっかくなので今年もやってみよう。ただし、2試合出場時点でHackenbergと同じ48試投かそれ以上に達している新人QBは、今年は不在。本当に当てにならないデータとなる。
 実のところプレシーズンのQBスタッツを掲載しているのはCBSのサイトくらいしか見つけられなかった。一応、Pro Football Focusはルーキーのプレシーズンゲームのグレードを出しているようだが、載っているのはグレードであって、基本的なパスの成功率やヤード数などはない。というわけでCBSのデータを使った分析となっている。
 2巡指名のTraskまで含めて6人を対象に調べたところ、いずれも2試合でプレイしている。データは以下の通り。左から選手名、パス試投数、パス成功率、そしてANY/Aだ。

Trask 41 41.5 1.32
Fields 39 59.0 5.78
Jones 38 68.4 5.74
Lawrence 32 62.5 4.66
Lance 28 46.4 6.06
Wilson 20 75.0 11.55

 もちろんこれだけの母数で何かを決めつけることはできないのだが、Hackenberg指数的に見るとTraskがヤバい。もちろんANY/Aが2を割り込むというまさにHackenbergなところもヤバいが、パスの成功率が4割ちょっとというのも不安ではある。とはいえこれを論拠にTraskを見捨てろなどというつもりはないし、そもそも彼がいるBucsはスターターは超有能だがデプスがないことで知られており、彼が2nd、3rdチームでプレイしていたことを考えるなら、その分は下駄を履かせて評価すべきとも言える。それに少なくとも今年の時点で彼らがTraskに頼る必要はないだろう。2年後は不明だが。
 逆に最もいい成績なのはWilson。ただしこちらはたったの20回しかパスを投げておらず、それだけデータの信頼度は低い。いやもちろんデータの信頼度が低いのは全員そうなのだが、中でも低いのがWilsonとなる。でもまあ下にブレるよりはずっとマシなのも確かだ。私がJetsファンだとしたら、現時点で喜ぶことはしないものの、とりあえず不安に苛まれることはないだろう。
 ANY/Aでは以下Lance、Fields、Jonesと指名順に並び、その下に全体1位指名のLawrenceが来ている。とはいえ彼らの誰一人として2を割り込むような数字ではないので、別に気にする必要はない。逆に対照的なのはパス成功率で、5割を切っているLanceと7割近いJonesとの間にかなりの差が存在している。もちろんこの母数であまりこの数字に過大な意味を持たせてはいけないだろう。

 なおPFFのデータではJonesの評価が妙に高い。カレッジ時代に彼がいい成績を残したことは知られているが、その時に強みであったパスの正確さを引き続き発揮しているうえに、PatriotsのQBたちの中ではパスまでの時間が圧倒的に短く、判断が早いという。こちらのツイートだとZack WilsonとBridgewaterを抜いて現時点でプレシーズン最高のグレードを出していることになる。
 それでもPatriotsの開幕先発はNewtonだろうとの声は多い。McDanielsは現時点でNewtonがスターターだと断言していたそうだし、その後でNewtonがCovid-19のプロトコルで5日間は活動できなくなったのを受けても、Jonesにとってはなお「ドアは少しだけ開かれた」程度の違いしかないという。
 にしてもNewtonがワクチンを拒否しているらしい点には同意しかねる。もちろんワクチンと言えども万能ではないし、時間が経過すると効果が薄れるという研究結果も、まだ査読前だが登場してきている。それでも重症患者は減少傾向にあるそうだし、スポーツ云々を別にしても個人としてワクチンを打った方がリスク回避にも公衆衛生の向上にもつながると思う。
 ついでに言うとMac Jonesもワクチンを打ったかどうかについてコメントしていないそうだ。Patriotsファンとしては余計なことはせず、素直にワクチンを打ってほしいところ。でないと昨シーズンのようにCovid-19プロトコルによって先発QBが出場できないリスクが高まってしまう。確かに彼らは若く、罹患しても重症化する確率は低いかもしれないが、それにしても無駄なリスクを冒している印象は強い。
 正直、米国でも足元はまた感染者が増えてきている。ワクチンの効果か、死者数はそれほど増えているわけではないが、CDCが新たなマスク着用指針を示し、それに合わせて小売店などがルールを見直すなど、一時期よりは警戒感が高まっている。昨シーズンはスケジュールを大きくずらすことなく乗り切ったNFLだが、今年は問題なしと言えるかどうかはまだ分からない。
 今のところプレシーズンゲームで大規模なクラスターが発生したという話は聞かないが、本番になった時にどこでそうした事態が勃発するかは分からない。そうした意味で今年もドキドキのシーズンになる、かもしれない。
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