RodgersとWatson

 キャンプ開始を控えてNFLで色々と動きが出てきたので、マーケット・ガーデン作戦は1回休み。特にドラフトの頃から問題となっていた2人のQBについて、新たな動きが報じられている。
 まずはPackersを出たいと言っていたRodgersについて、チームとの間で新たな合意がなされそうだという話をSchefterが報じている。この合意によってRodgersは現地27日から始まるキャンプに合流し、以後少なくとも今シーズンの間はPackersの一員としてプレイすることになるのだそうだ。
 合意条件についてSchefterは以下の4つを挙げている。

1)2023年のRodgersの契約はvoid yearとなり、タグは禁止される
2)今シーズン終了後にPackersはRodgersの状況をレビューすることに合意する
3)足元でのPackersのキャップスペースを広げるためRodgersの契約は修正されるが、彼の収入は減らない
4)チームとのRodgersの問題を解決するためのメカニズムが導入される

 そのうえでSchefterは、この合意が最終的に確定すれば2022年にどこでプレイするかを決める自由をRodgersは手に入れる、と記している。今シーズン終了後のレビューとは、Rodgersが望めばシーズン後にPackersは彼をトレードするという意味なのだそうだ。おそらくは今年がRodgersにとってPackersで過ごす最後のシーズンになる、というわけだ。また足元でキャップスペースを増やすのは、Davante Adamsとの大型契約のためとしている。
 Over The Capでもこの記事に関する解釈を書いている。Fitzgeraldによれば、まず最初の合意条件は「多くの注目を集めるだろうが意味はない蜃気楼のような条件」だそうだ。2023年はLoveの4年目のシーズンであり、だとすると彼の5年目オプションを使うかどうかはその前に決めなければならない。一方でRodgersは40歳を超えることになり、元々そこまで彼を引っ張る考えがPackersにはなかっただろう、というわけだ。
 2つ目のレビューについてはSchefterの解釈と同じ。3つ目についてはAdamsとの大型契約が難しい場合に翌年にロールオーバーしてAdamsにタグを貼る可能性も指摘している。そして4つ目については、Rodgersが引退した場合にチームが彼に払ったボーナスを取り戻す可能性を消すような仕組みではないかと書いている。
 トータルとして、この取り決めはRodgersのトレードに関する決断を変えるようなものではない、というのがFitzgeraldの感想だ。確かに以前から2022シーズンにはLoveが先発するのではという話は言われていたし、その既定路線に変化をもたらすような内容の合意ではない。もちろんその既定路線が一段と明確なものになり、他の選択肢がほとんどなくなったという意味で、Packers側から見ればRodgersに譲歩したことになるのだろう。でもチームとして大きな方針変更を強いられたという印象はない。
 Rodgers側としては来シーズン以降の選択の自由が拡大した点がメリットだろう。逆にこの程度でチームに復帰してくれるのならPackersとしては願ったりかなったりだろう。毎年のようにやめるやめる詐欺を繰り返していたFavreに比べれば、チームにとってははるかに扱いやすい相手ではなかろうか。

 一方、WatsonはTexansのキャンプに顔を出した。キャンプに欠席すると、1日あたり5万ドルの罰金を科せられるようになったのが理由だろう。以前はよく銭闘のためにキャンプをバックレるベテランがいたものだが、この新ルールによってやる気はともかくキャンプに「顔は出しておく」ベテランが今後も増えることが予想される。
 Watsonのキャンプ出席についてもOver The Capに説明が載っていた。一般的なNFLの契約だと、選手がチームに出席できなかった場合、あるいはチームの同意なしに去った場合などは、将来の保証額の一部あるいは全部が無効になると書かれているそうだ。彼が昨年結んだ契約では112ミリオン弱が保証されていたが、実際に支払われた額はサイニングボーナスを含む一部のみであり、彼が契約違反行動を行えばその他の保証額が失われる可能性がある、という理屈だろう。
 実のところWatsonは、延長契約で手に入れることになっている156ミリオンのうち、まだ18.8%しか受け取っていない。やっとルーキー契約から抜け出したばかりの彼にとっては、収穫期はむしろこれから。ここで無理のあり抵抗を続けると、収穫を得られなくなってしまう恐れがある。まずは妥協してキャンプに出たのにはそういう理由もあるのだろう。
 ただし彼は引き続きトレードを志望しており、またチームはトレードの申し出について話を聞くつもりだと報じられている。それによれば少なくとも1巡3つとプラスアルファ以上の条件は必要になるそうだ。

 個人的に他の問題を除いて考えるなら、Watsonのトレードにはたった3つの1巡指名権では釣り合わないと思う。Watsonが指名された2017年ドラフトまでの10年間、1巡で指名されたQBは計27人。その全27人のうち、Watsonと交換しても文句がこない選手はRyanとMahomesくらいだろう。つまりWatsonレベルのQBは1巡でも9人に1人くらいの逸材となるわけで、であれば9つの1巡指名権くらいはもらわないと割に合わない。
 だがTexansにはそこまで強気になれない理由もある。何よりWatson自身がチームに残りたくないと言明していること。それでもWatsonは2025年まではTexansと契約を結んでおり、従って彼の意向を無視し、あと5年は彼をチームのQBとして働かせることも理屈の上では可能となる。
 でもこれは机上の空論。まず、たとえ5年彼にプレイさせたとしても、Texansは現状チーム自体がリーグでもどん底レベルの戦力と見られているうえに、前にも書いた通り2022シーズンも引き続きFA離脱が多く、再建には時間がかかりそうだ。
 つまりWatsonの残り5年のうち2年間は無駄に費やされる可能性がある。となると実質Watsonとともに優勝を目指せる「窓」は3年しかない。加えてWatsonは2025年には延長契約156ミリオンのうち124ミリオンは既にもらっていることになる計算で、それだけあれば罰金覚悟で試合に出ないという選択肢に打って出ることも可能だろう。無理やりWatsonを手元にとどめても、実際にその能力を生かせる期間は2年ほどしかない、かもしれないのだ。
 2年の「窓」では不十分に過ぎるのであれば、むしろ高く売れる時期にWatsonをトレードし、できるだけ多くの対価を得る方がいい、という判断もある。それでも1巡3つはさすがに安い。これだと49ersがドラフト上位でQBを指名したのに費やしたのと同じ数だ。海のものとも山のものとも分からない選手にそれだけのドラフト資源を投入するチームがあるのに、まだ25歳だが実績十分で当たりの確率がずっと高い選手を同じ条件で譲り渡すのは論外だろう。
 個人的には5つくらい1巡指名権をもらっても問題はないと思う。それは無理でもせめて4つは必要だ。そして現状、それだけ余裕のある1巡指名権を持っているチームはないわけではない。実はLionsは2022シーズンと2023シーズンに2つずつ1巡指名権があり、この4つを投じればWatsonを取りに行ける。またEaglesは2022年に3つの1巡を手に入れられる可能性があり、こちらも1巡4つを投入する余力が生まれるかもしれない。
 だがLionsは今シーズンに関してはGoffの使用を想定しているだろうし、EaglesはHurtsの能力見極めを考えているだろう。またLionsはともかく、Eaglesはキャップスペースにもあまり余裕がない。キャップはいくらでも調整の利く部分があるのは確かだが、開幕まで余裕がない中での作業となると、なかなか大変そう。加えてWatsonの法的問題はまだ解決したとは言い切れない。足元ではTexansが期待するほどの対価を提示するチームが見当たらない可能性は高そうだ。

 それにしても今回の事例、Packersの巧妙さとTexansのグダグダぶりが実に対照的。それぞれの組織が持つチーム作りの能力差が如実に表れている。Texansのファンには、ご愁傷様というしかない。
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