NFLではサラリーキャップに関するルールが変わる6月1日を境に、再び動きが出てくると見られている。例えば
Breesの引退 などは正式には6月2日以降になるはず。Saintsのキャップの都合上であり、そのため現時点ではまだBreesはSaintsとの契約下にある。足元で6月2日以降の動きとして注目されているのは、FalconsのJulio Jonesだ。というわけでフルーリュスの史料については1回休み。
Jonesのトレードに関する噂がこの時期に出てきた理由は、
こちらのツイート の通り。いわゆる6月1日以前のトレードだと今シーズンのキャップヒットがかなり大きくなるのに対し、それ以降にトレードすれば15.3ミリオンのキャップを開けることが可能になる。
今シーズンのキャップスペースがほとんどないFalcons にとって、この時期に彼をトレードすることには大きなメリットがある。
もちろんJonesの存在はFalconsにとって重要。
こちら にある通り、彼がいるときといない時で、RyanのEPA/Pは実に0.180も違う。昨シーズンのRyanのEPA/Pが0.035(Jonesがいないケース)だったなら、それはルーキーのTagovailoaとほぼ同レベルで、Daltonより下、Lockより上という位置づけになる。逆にいる時の数字(0.215)ならWatsonよりは下だがCarrやCousinsよりは上になる。
実際にはJonesが来る前(2008~10シーズン)のRyanのEPA/Pは0.155と、そこまで極端に低かったわけではない。それでもJones効果は+0.060くらいになる計算で、同じく昨シーズンの成績で見るならMurrayより下の選手がCarrより上になるくらいの効果が期待できるわけだ。ただし、昨シーズンのようにJonesのスナップカウントが4割ちょっとしかなければ、メリットは限定的だ。
さらにJonesの年齢(32歳)も踏まえるなら、この活躍を今後も続けられるかどうかは不明。それでもこれだけQBを引っ張り上げてくれるかもしれないWRなら、ほしがるチームがいても不思議はない。
こちらのツイート ではColtsが来年の3巡と再来年の2巡を出すと予想しているが、キャリアトータルでEPA/Pが0.088しかないWentzがもし0.268(Mahomesに次ぐリーグ2位)のQBになれるのなら、もっと多い対価を出しても釣り合うだろうし、そこまで行かずともCousinsより上、Wilsonの下くらいになるのなら、やってみる価値はありそうだ。
ただしJonesのコストは高い。今シーズンだけで15.3ミリオンのサラリーが保証されているため、それだけ払えるチームでないと簡単には彼に手を出せない。このあたりについては
元代理人が書いているこちらの記事 が参考になるだろう。
記事中にもある通り、Falconsが彼をトレードに出す最大の理由はキャップスペース。ドラフトルーキーと契約するため彼らは6ミリオン強のキャップスペースが必要なのに対し、残されている額は36万ドルにも満たない金額だ。かといって今すぐ彼をトレードに出すと、均等配分すべき各種ボーナスの残り23.25ミリオンを今シーズンに一気に計上しなければならなくなり、キャップスペースはむしろ減ってしまう。6月2日になり、来シーズンにキャップヒットを先送りできるようになる以前でのトレードは困難だ。
トレードに対してFalconsは1巡を対価に求めているらしいが、今年はFAでWRの出物が多かったこともあり、需給は緩んだ状態になっている。記事中ではJonesの活躍に応じてトレードする順位を変えればいいのではないかと提案しているが、確かにそうした条件ならどちらも飲みやすいかもしれない。JonesがSanuと同じ2巡相当となると、Falcons側としては納得いかない面も確かにあるだろう。
一方、サラリーについては、とりあえず単純に15.3ミリオンを出せる9チームの名が紹介されている。一方、
こちら で名前の挙がっている有力トレード先チームの中には、それだけの金額を備えていないチームも結構多い。上位陣でキャップに余裕があるのは49ersとChargersくらいであり、RaidersとTitansの残りは4ミリオン程度、Patriotsもほぼ15ミリオンしかない状態だ。
ただし、この障害を乗り越える手段はある。サラリーキャップについては個別の契約なら割と何とでもなる面があり、今回も一例として2019年のKiko Alonsoのトレードと同じ方法が使えるとしている。Jonesの今シーズンのサラリーのうち、例えば5.3ミリオンを2022年のロースターボーナスに変え、それをトレードの数日後に全額保証してしまう、という方法だ。これならJonesの今シーズンのキャップヒットは10ミリオンにとどまり、有力候補とされているPatriotsでも契約ができる。
もちろん、Falconsがトレードをしない方法も残されてはいる。対価としていい指名権がもらえないならトレードは諦め、代わりに別の選手の契約をリストラしてキャップスペースを作ればいい。この記事ではJarrettのベースサラリーをサイニングボーナスに変え、それをvoid yearも含めて将来に均等配分すれば、そこそこの金額を浮かせることができると指摘している。
一部の噂によれば、
JonesはNewtonとのプレイを望んでいるという 。とはいえビジネスの世界でそう簡単に本人の意向が通るとは思えない(契約にトレード条項がない限り)。各チームが今現在のJonesをどう評価し、どのくらいの対価を出すかによって行き先が決まるのだろう。
Fitzgeraldは全体としてこの対応を評価しているが、一部のチームにとっては来シーズンのキャップが苦しくなることが早々に決定してしまったとも言える。具体的にはPackers、Cowboys、Rams、Saints、Texansあたりがその対象だそうで、今でさえチーム事情が苦しいTexansにとってはかなりつらい情報かもしれない。一方、以前から2022シーズン前にRodgersと別れると言われていたPackersなどは想定範囲ともとれる。
同じOver The Capには
FAとドラフトに関する新しい分析記事 も載っていた。要点は最初に出てくる分布図に表れている。X軸はドラフトで指名した時のサラリーキャップ上の利益、そしてY軸はトップ20のベテラン選手のうちドラフトではなくFAで手に入れた選手の割合だ。例えばCousinsのように、足元ではVikingsとの契約延長になっているが、元はといえばFAで手に入れた選手はFA扱いとなる。
分布図で右下にいるポジションはドラフトで指名したほうがいい選手、というかドラフトでないとなかなか手に入れにくい選手と言えるだろう。QBはもちろんその代表例だが、他にもEdgeやLTなど、ドラフトで優先的に指名されるポジションが顔を出している。DTもそれに近い。WRについてはドラフト上位指名に外れの多い印象があるのだが、全体としてはやはりドラフトで優先的に手に入れる方がよさそうだ。
CBはドラフト指名のメリットが大きいが、一方FAで手に入ることが多いポジションでもあるという、かなり特殊なポジションだ。元からコストが安くドラフト資源を投入することに対する異論も多いRBとGは、どちらの視点で見てもあまり評価されていない。残るC、RT、TE、LB、Sといったポジションは、ドラフトで慌てて指名するよりFAで強化しても構わないポジションとなる。全体としてパスプレイにおける重要度が高いと見られるポジションほど、ドラフトで指名するメリットが大きいように見える。
記事ではこうしたポジションごとの特性を見たうえで、チームはドラフト指名時のビッグボードを考え直した方がいいとしている。要するにドラフトのメリットが少なく、FAで有力選手を入手しやすいポジションを、敢えて上位で指名するのは避けた方がいい、という主張だ。具体的にはQB、LT、WR、Edge、IDLといったあたりはドラフトで優先して取りに行くべきだし、逆にTE、RB、RTなどはその必要性は薄い。一般的に言われている話とあまり変わらないが、こうした視点でドラフトを見るのも一興だろう。
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