サンブル=エ=ムーズ

 今回はジュールダン率いるサンブル=エ=ムーズ軍が1796年戦役で出した様々な史料を見てみよう。まずは兵への手紙だ。

「サンブル=エ=ムーズ軍指揮官ジュールダンの、軍を構成する兵への手紙
 勇敢なる兵たちよ、
 イタリア方面軍にいる諸君の戦友たちが得た勝利の報告が届いた。この説明によって諸君の愛国心と勇気に改めて火がついたものと私は考えている。機会は我々にも彼らにもすぐに与えられ、イタリア征服のために行軍している英雄たちという諸君にふさわしいライバルが提供されるだろう。全世界は諸君が偉大な手柄をあげると期待して諸君に注目している。共和国は諸君の勇気を当てにしている。私もそれを当てにしており、諸君が既に集めた栄誉に新たな栄誉を加えるものと十分に確信している。
 (サイン)ジュールダン
 牧草月14日(6月2日)」
A Collection of State Papers Relative to the War Against France"http://books.google.com/books?id=Gwqp14DN7agC&pg=PR5&dq=circle+suabia&as_brr=1" p36

 ドイツ方面の部隊より先に攻撃を始めたイタリア方面軍に言及しているのが面白い。
 次はライン右岸の住民に対する布告。最初に進軍を始めた左翼を率いるクレベールが5月に出したものと、7月になってジュールダンが出したものがある。

「ライン右岸住民に対するサンブル=エ=ムーズ軍左翼を指揮するクレベール将軍の宣言
 諸君の君主たちの自尊心と頑固さが我々に再び彼らと戦うことを強いた。フランス軍は今まさに諸君の国を通過しようとしているところだ。その行軍は秩序維持及び住民個人とその財産の安全のため最も厳密な規律を遵守する。彼らに対して抱く信頼を否定する理由は決してないので、それぞれの家に静かにとどまり、日常的な仕事を営むように。私は戦闘状態につきものの害悪から諸君の平和な住まいを守る。代わりに求めるのは諸君がその家を離れないようにすることだけだ。この提案を拒否し、敵とともに逃げたものは敵対者として取り扱う。彼らは敵の大義に従っているか、彼らの防御に与しているものと見なす。彼らの財産は燃やし略奪することで犠牲にする。ライン右岸の住民よ、諸君の運命は諸君の手の中にある! 採用するに適当だと考える行動のやり方に全てがかかっていることを、諸君は知らされた。諸君を敵としてでなく友人として扱うこと、また不運なことに私の指揮下にある兵に対する諸君の無慈悲な敵意によって引き起こされる厳格な行為に訴えるのを強いられないことは、私に大いに満足を与えてくれる。
 1796年5月31日
 (サイン)クレベール」
A Collection of State Papers Relative to the War Against France"http://books.google.com/books?id=Gwqp14DN7agC&pg=PR5&dq=circle+suabia&as_brr=1" p23

「ライン彼岸の住民に対するジュールダン将軍の宣言
 フランス共和国の軍による相次ぐ勝利、ただ破滅と荒廃をもたらすだけの戦争に疲れきった国民の叫び、諸君の土地を浸している血の流れをいまや絶やす時であるという絶えず叫ばれる人間性の声も、まだ欧州の安定と幸福を回復するであろう平和への懇請へと諸君の君主の心を動かしていない。かくして、それ故に血はまだ流されなければならず、フランス軍は戦争をドイツの奥へ持ち込まなければならない。しかし、これら不幸な国の平穏な住民たちよ、恐れることはない。我々は諸君の敵ではない。つまり我々は偽って諸君に信じさせようと試みられているように諸君の法と信仰を破壊することはない。軍の存在は疑いなく諸君がいくらかの不都合を蒙る要因になるだろう。しかし我々はフランスが戦場になった時にフランス人民が蒙った残虐な行為に対して諸君に復讐するのではない。諸君の財産は略奪されることなく、諸君の家も灰燼に帰することはない。争いに一切参加せず、諸君の家に平穏にとどまれば、諸君と諸君の財産は共和国の将軍たちによって守られるだろう。しかし諸君が武器を取れば、諸君は最も厳しい罰を受け、恐ろしい見せしめにされると予期すべきである。
 フランス兵に対し厳密な規律を遵守するよう命じた7項目からなる規則が付け加えられた。住民の誰からであれ略奪した全ての兵は死刑とする。しかし住民はそれぞれの住居に静かにとどまり、武器を引き渡さなければならない。もし資産あるいは家畜とともに逃げるものがいれば、彼らは逮捕され、その財産は共和国が利用するため没収される。フランス軍に対して武器を取った村落の住民は、フランス軍の将軍たちの許可なく武器を持った全てのものと同様に銃殺され、彼らの家は焼かれる。
 ケルン、7月4日」
A Collection of State Papers Relative to the War Against France"http://books.google.com/books?id=Gwqp14DN7agC&pg=PR5&dq=circle+suabia&as_brr=1" p45-46

 いずれも甘言と脅迫がないまぜになっており、衣の下から鎧が露骨に見える文章である。実際、住民が大人しくしていたとしても、ドイツ諸侯に対しては様々な形で負担が課せられたことはこれまでに紹介した休戦協定などを見れば一目瞭然。諸侯の負担分は、いずれその住民に課税などの形で跳ね返ってくることも、住民にははっきり分かっていただろう。
 住民だけでなく為政者に対しても脅し含みの文言を使っていたことが、ボノー将軍がフランクフルト市に出した文章を見ると分かる。

「サンブル=エ=ムーズ軍予備のボノー将軍からフランクフルト市の執政官へ
 フランクフルトの司令部、7月9日
 紳士諸君、指揮官ジュールダンの意図により、軍の兵站長が署名した件を満たすことに対して何らかの条件を出すべきではないと助言しよう。
 また、何者も諸君に命令を受け取るよう強制することはない点も伝えておく――友好こそ我々の作戦を律しているものだ。
 (サイン)ボノー」
A Collection of State Papers Relative to the War Against France"http://books.google.com/books?id=Gwqp14DN7agC&pg=PR5&dq=circle+suabia&as_brr=1" p49

 どういい繕ってもフランス軍の侵攻が金儲けのためであったことは否定できない。結局、彼らは住民の恨みを買い、サンブル=エ=ムーズ軍が退却する時には住民から攻撃を受ける羽目に陥った。

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