新年度迫る

 新年度が近づき、NFLでは大きな動きが次々と出てきている。まずは2021シーズンのサラリーキャップが正式に固まった。180ミリオンから185ミリオンの間ではないかとの報道があったが、結果は両者の中間にあたる182.5ミリオン。これによって各チームの正確なキャップスペースも固まり、まずは新年度が始まる現地3月17日に向け、キャップの調整が進んでいる。
 前に述べた通り、例えばSteelersはRoethlisbergerとの再契約などでキャップオーバーの状態は解消済み。Ramsと大型トレードを行ったLionsも、いろいろな対応を通じて既にキャップは開けているようだ。彼らのトレード相手だったRamsや、ColtsにWentzを送り出して多額のデッドマネーを計上するEaglesなども、着実に赤字を減らしている。
 もちろん、キャップスペースの調整は無傷で進むわけはない。ChiefsはFisherとSchwartzという両Tを同時に解雇した。Super Bowlにおける敗因の1つがOLの問題だったにもかかわらず、そこをさらに弱体化させかねない決断をしたわけで、そうしなければキャップに違反してしまうからこその決断と一般的には思われている。個人的にはSuper BowlのOLはそこまで酷くなかった可能性もあると思っているのだが、それでもOLのスターターを2人まとめてカットするのが大変なのは事実だろう。
 キャップの影響というものは「行われなかった動き」を通じて間接的にチームに及んでくる。Chiefsが他の優秀なOLを簡単に取りに行けないのも、かつてPatriotsがBradyのための武器となる選手をなかなか取れなかったのも、サラリーキャップが影響していたため。FitzgeraldがQBへの支払いと他の選手への支払いとの関係を調べているが、当然のようにQBへの支払いが多ければ他の選手に使う金額は減る。十分に手当てできないポジションがそれだけ増えかねないわけだ。
 まして2021シーズンはキャップ自体が減る。単純に金額だけ見ると182.5ミリオンという数字は2018-19シーズンの数字に近いのだが、当時に比べてミニマムサラリーはずっと高くなっているし、ルーキー向けの金額も増えている。実質的なサラリーキャップは170~172ミリオン程度で、時期としては2016-17シーズンと同じではないか、との見方もある。Covid-19の影響でこれだけ厳しくなる年については、間接的な影響のみならず、直接的な影響(選手のカットや契約リストラ)も増えるだろう。

 キャップと同時期に発表されたのが今年の補償ドラフト。この結果を踏まえ、さっそくOvet The CapのKorteがエントリーを上げていた。予想の大半は的中したのだが、いくつか大外れがあり、中でも最も大きかったのがPatriotsが得ると思っていた3つ目の指名権が消えてなくなったことだそうだ。
 彼にとってまず予想外だったのが、Patriotsが手に入れたByrdが補償対象の選手になったこと。契約額の低い選手は普通は対象にならないのだが、インセンティブ契約の分と高いスナップカウントの両方が相まってByrdは対象と見なされた。さらに不運だったのが、Byrdと相殺できるようにPatriotsから送り出した2人の選手、Elandon RobertsとNate Ebnerが、高くないスナップカウントのせいで補償対象から外れてしまったのだ。結果、Byrdと相殺すべき選手は4巡指名権に相当するCollinsになってしまい、Patriotsはこの指名権を失った。
 送り出した選手をどのくらい使うかは、相手チーム次第である。RobertsはDolphins、EbnerはGiantsが雇っているものの、例えばRobertsのディフェンスでのスナップカウントは38.9%とかなり低い水準にとどまった。彼が負傷によって出場できなかった2試合がもしなかったとしたら、彼のスナップカウントはもう少し増え、最終的に補償対象に滑り込んでByrdの分を相殺できたかもしれない。計算ずくで補償ドラフトを手に入れようと思っても、偶然が入る要素を完全に消すことはできないわけだ。
 でもそんな補償ドラフトマニア向けな話よりも、一般には「32個ではなく36個の指名権が与えられた」ことの方が注目点かもしれない。これは2020 Resolution JC-2Aという新たに追加されたルールによるもので、マイノリティのチームスタッフやコーチが、他チームのGMあるいはHCに選ばれれば、彼らを失ったチームに3巡最後の補償ドラフトを2年分(2人選ばれれば3年分)与えることになっている。
 昨年はCovid-19のトラブル以外にも、米国ではBLMが大きな騒動となった旧Redskinsがチーム名変更を強いられたのもそれが理由だし、NFLにおいても選手はまだしもコーチやスタッフ、オーナーといった面々にマイノリティの数が少なすぎるという批判があったのかもしれない。以前からHC候補のインタビューにはマイノリティを入れるというルールは存在していたが、より実効性を高めるための取り組みなのだろう。ライバルにドラフト権をやるくらいならマイノリティを雇うのはやめる、というチームが出てこないかが心配だが、まずは効果のほどを見たいところだ。

 一方でQBたちの契約も相次いでいる。まずはPrescottがDallasとの4年契約を結んだ。昨シーズンはフランチャイズタグでプレイした彼だが、怪我のため出場できたのは5試合のみ。そのうえで年平均で見るとMahomesに次いで高い40ミリオンの契約を結んだわけだから、Cowboys側から見ると正直払い過ぎに思える数字となっている。
 CowboysはPrescottよりも先にElliottとの大型契約(6年90ミリオン)を締結しており、当時からQBよりRBを優先したことに対する疑問の声は出ていた。もし彼らが2019年の時点でPrescottと契約を結んでいたのなら、同期のWentz(年平均32ミリオン)やGoff(同33.5ミリオン)程度の契約を結べていただろう。Prescottの成績は3年目終了時でANY/AではGoffの次、DAKOTAでは同期でトップだったわけであり、横との比較で見れば彼が長期契約を結んでいてもおかしくなかったはずだ。Over The Capでも、後知恵で見れば少なくとも昨年のうちに契約を結んだ方がよかったと指摘している。
 大盤振る舞いのCowboysとは逆に非常に地味な契約となったのはNewtonだ。こちらの記事では13.6ミリオンという数字が出ているが、実態はこちらにあるように1年5ミリオン程度の契約だと見た方がいい。記事に出てくる13.6ミリオンのうち8.5ミリオンはあくまでインセンティブであり、目標を達成しなければサラリーに上乗せされることはない。具体的にはプレイオフ到達やPro Bowl、All-Proへの選出、リーグMVPあるいはSuper BowlのMVPになることなどであり、それだけ活躍したQBであれば13.6ミリオンはものすごく安い。
 はっきり言ってPatriots側からすればこれは控えQBに対する契約だ。ベテランでいえばKeenum、Taylor、Fitzpatrick、Chase Danielといった面々がもらっている金額と同じ水準であり、おそらくここに込められた意味は「最低でも先発争いは必要」であろう。もちろんライバルになり得る新たなQBが入ってこなければNewtonが先発になる可能性は十分にあるものの、そういう選手が来ればNewtonが控えに回る可能性だってある。
 むしろ個人的にはNewtonがこの契約に合意した動機の方に興味がある。昨年のオフにいつまでたっても行き先が決まらず、最終的に年1ミリオンの契約しか得られなかったこと、また昨シーズンの成績がリーグ平均以下であり、FAになっても自分をあまり高く売り込めそうにないこと、そしてどうやら本人がこのチームを気に入っているらしいことなどが、この控えレベル契約に同意した背景にあるのだろう。キャップが余っている一方で次のフランチャイズQBが決まっていないチーム側にとっても悪くない。個人的にQBと契約する際に重要なのは、一流QBを探すこと、それが無理なら下手な高額契約を結ばないことだと思っているので、Patriotsにとっては容認できる契約だろう。
 一方、想定されていた事態ではあるが、Breesが引退を表明した。レギュラーシーズンのキャリアヤードで8万ヤードを超えて歴代1位、TD数はBradyに次ぐ2位の記録を残しての引退となる。最近は怪我が多く、また2020シーズンはトータルのDAKOTAは0.114とリーグの真ん中辺りにいたが、第10週以降は0.050と控えのHill(0.099)より低い状態だった。
 以前にも指摘したが、彼とManning、Brady、Rodgersがそろった時代はHOFが並び立っていた時代であり、他のQBにとっては非常にやっかいな時代でもあった。なにしろ2003シーズンから2014シーズンまで、この4人の誰かが必ず1st Team All-Proに選ばれていたわけで、ほかのQBに割って入る余地はなかった。直近の2020シーズンもRodgersが選ばれており、この面々がいかに異常であるかが分かる。
 そのBradyはBuccaneersとの契約1年延長に合意した。これで45歳までプレイする契約を確保したわけで、1つの時代が終わったというには、まだ少しばかり気が早いのかもしれない。
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