新契約やら解雇やら

 NFLでは新年度入りが迫ってくるのに合わせ、いろいろキャップ調整が進んでいる。その流れはQBにも向いている。典型例がSteelersとRoethlisbergerの間で行われた新契約だ。以前こちらで書いたように彼はもう1年、Steelersでプレイすることを望んでいたが、そのためには高すぎるキャップヒットが問題となっていた。新契約によってその問題解決を図ったわけだ。
 最初の契約だと彼は2021シーズンに19ミリオンのサラリーを得ることになっていたが、今回の新契約ではそれを14ミリオンに減らした。ただ、単にそれだけならキャップヒットは41.25ミリオンが36.25ミリオンに下がるだけで、引き続きリーグでもトップ3に入る高いキャップヒットになってしまう。Steelersのキャップスペースを広げるうえではあまり役に立たないだろう。
 だが実際に減らした2021シーズンのキャップヒットは15.34ミリオンに達している。そのために使ったのはvoid yearsだ。どんなものであるかはこちらのエントリーを読んでもらえばわかるが、Steelersは4年分のvoid yearsを設定し、Roethlisbergerに支払うサイニングボーナスを2025シーズンまで分割してキャップに計上するようにした。これによってさらに10.34ミリオンのキャップヒットを浮かせたわけだ。Roethlisbergerによるサラリー返上よりも、こちらの方がキャップスペースへの効果が大きいことが分かる。
 Over The CapのFitzgeraldはこの新たな契約について簡単な解説を書いている。Steelersがvoid yearsを使うのはとても珍しいケースのようだが、さすがにこれだけでかいキャップヒットとなるとそんなことは言ってられないのだろう。ちなみにRoethlisbergerが2021シーズン後に引退すれば、Steelersは10.34ミリオンのデッドマネーを計上することになるという。
 Fitzgeraldは今回の新契約を見て、Peyton Manningがキャリア最終年に行なった4ミリオンのペイカットを思い出したという。ただし実際にはManningはこの減らした分をインセンティブで取り戻すことができるような契約を結んでいたし、結果的にも取り戻すことに成功したそうだ。もしかしたらRoethlisbergerの契約にもそんなインセンティブがついているのかもしれないが、Steelersは一般的にあまりインセンティブは使わないらしい。
 もしRoethlisbergerの2021シーズンが完全にダメだった場合、チームは改めて彼との契約を手直しし、6月以降の解雇としてキャップヒットをさらに翌年以降まで引き延ばすことをするのではないか、との予想も記している。実際にどうするかはともかく、現時点でSteelersの2021シーズンはサラリーキャップの上限以内まで収まっている計算だ。2020シーズンが終わった直後には25ミリオンもオーバーしていたそうなので、状況はかなり改善したと言える。
 2020シーズンのSteelersはオフェンスが平均以下(EPA/Pは0.032でリーグ17位)、ディフェンスがかなり優秀(-0.087で2位)という結果だった。RoethlisbergerのDAKOTAは0.087と32人中22位(320プレイ以上)、ANY/Aは6.27と36人中21位であり、もし彼がリーグ上位の成績であったならSteelersはディフェンスのみならずオフェンスも強いチームとして、Chiefsと並ぶAFC最強チームの1つになれていたかもしれない。そう考えると彼とのもう1年の契約延長はなかなか難しい決断となる。
 昔から何度か書いているが、かつて大半のQBは38歳の壁を越えることができなかった。最近になってBrady(43歳でSuper BowlのMVP獲得)という例外中の例外というべきQBも出てきたが、それ以外の選手で彼ほどの水準で活躍できているQBはなかなかいない。Breesはプレイの水準は高いものの、39歳以降はシーズン全試合に出場したことがないし、Riversは39歳で結構活躍できたが、シーズン後には引退を表明した。昔より活躍の上限年齢は上がっているものの、この年代がキャリアの最後に近い‎傾向に変わりはない。
 Roethlisbergerはシーズン終了後に39歳になっている。もちろんここから彼が復活する可能性は存在するが、その確率が高いかと言われるとそれほどでもないだろう。彼の成績がさらに崖を落ちていくとまで言うつもりはないが、上向きと下向きの確率のどちらが高いかと言われると、前者が高いと言う自信は私にはない。一方、ではRoethlisbergerより確実にいいQBが市場で手に入るかというと、それもまた不透明だ。もう1年Roethlisbergerで行くことを決めたSteelersの判断は、決して満点とは言えないがそう悪くない選択、のように思える。

 QBがらみでは他にFootball TeamがSmithをカットするという動きがあった。2020シーズンのカムバックプレイヤーであり、あれだけの大けがから復活したという点は素晴らしいものだったが、チームの構想から外れることは事前の予想通り。実際、2020シーズンの彼は8試合でプレイしてANY/Aは4.39、規定試投数に達した36人のうち33位という成績であり、とても魅力的な数字とは言えない。
 Fitzgeraldはこの解雇について「不可避」としている。彼の2021シーズンのキャップヒットは、何もしなければ23.3ミリオンに達する計算となっていたが、この金額は「最大でもスターター争いを行う選手にとってはとても高すぎる」というのが彼の見解である。ルーキー契約でプレイしている選手たちを除くと、この金額は昨シーズンほぼフルに先発したCarrやBridgewaterあたりと同水準であり、確かに高すぎる。
 逆に彼を解雇することでFootball Teamは14.7ミリオンのキャップスペースを広げることができる。彼らの2021シーズンのキャップスペースはこれによってリーグでも4番手の大きさとなり、それだけいろいろな手を打てるわけだ。一方、Smithにとっても早めに解雇される方が次のチームを探す時間の余裕が増えるわけで、解雇が不可避なら変に引き延ばされるよりすぐに実施される方がましであろう。
 と言っても彼に新たな先発フランチャイズQBとしての仕事が待っている可能性はほぼ皆無。そもそも彼は既に36歳(2021シーズン開始前に37歳)であり、現役選手として残された時間はほとんどない。過去の実績を見てもRANY/Aで-0.192と平均以下にとどまっている。Fitzgeraldの指摘する通り、stopgap(その場しのぎ)のプレイヤーとして、もしくは若いQBの教育係としての役割くらいしか期待されていないだろう。考えてみれば彼はRoethlisbergerらの翌年にドラフトされた選手なのであり、もうそれだけ年を食っているのだ。
 そもそもSmithがここまで長くNFLでプレイしたこと自体、個人的には驚異だと思っている。4年目の2008シーズンに負傷で1回もプレイできなかった時点で、彼のキャリアは事実上終了だと見ていたのだが、なぜか49ersは彼をしつこく使い続け、2011シーズンにHarbaughがHCになった後は実際に成績自体が大きく上向いた。結果、彼はその後でChiefsでの仕事を見つけることができ、しかもそこではReidというこれまたQBの使い方がうまいHCのおかげでそこそこの成績を残し続けた。
 彼の本当の実力は、おそらく49ers時代の初期やWashington移籍後の数字に近く、Harbaugh時代とReid時代はコーチングスタッフの能力によって下駄を履かされていたのではないか、というのが私の見方だ。7年にわたって下駄を履いたうえでなおリーグ平均を下回るRANY/Aしか残していないのだから、Football Teamが彼を早々にカットするのは不思議でも何でもない。彼のプロとしてのキャリアにも、ほぼ終わりが見えてきていると思う。

 もう一つ、BrownsのGMがMayfieldに関連し、Wentzのケースが自分たちの教訓になるとは見ていない、との報道があった。3年目終了時点で高額の契約延長に踏み切るかどうかについて、Eaglesの失敗例をあまり気にするつもりはない、ということだろうか。一見して契約延長に前向きともとれる発言である。
 彼については既にこちらで言及している。もしBrownsやBillsが3年目を終えたQBに対して高額長期契約を申し出るようであれば、私個人としてはその判断に疑問を提示することになると思う。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント