Ben Baldwinが面白い指摘 をしていた。Wentzがいい成績を残した2017シーズンに関する分析だ。実は彼のこのシーズンの成績は3rd & 4th downsが突出してよく、だが母数の大きい1st & 2nd downsは大したことはなかったのである。前者のDAKOTAは0.306と2番目によかったMcCown(0.162)を大きく引き離した1位だった(100プレイ以上)。一方、後者の数字は0.054。200プレイ以上やったことがあるQBたち32人のうち24位にとどまっている。
母数の少ない3rd downの成績に再現性が薄いことは、ずっと昔から指摘されていた。Wentzの2017シーズンはまさにその典型だろう。ちなみに2020シーズンの彼の成績を同じように分割すると、1st & 2nd downsは0.023、3rd & 4th downsは0.012となっており、要するにどちらも冴えなかったことが分かる。少なくともダウン数で見る限り、昨シーズンのWentzは特に不運だったとは言えないわけで、だとすると彼のリバウンドが期待できるかどうかは怪しくなる。
実のところ2017シーズンのWentzほど極端な例はそう多くない。2015シーズンのMcCown(1&2が0.023、3&4が0.249)、2010シーズンのKitna(1&2が0.034で、3&4が0.272)など、数年に1回はそういうQBが登場してくるものの、大半の年は普通に優秀なQBが3&4でもいい成績を残している。2020シーズンについて言えば最も大きな差がついているのはTrubisky(1&2が0.160、3&4が-0.003)で、このシーズンに限れば彼は不運につきまとわれていたようだ。
成績が急上昇したQBを見た時には、もしかしたら2017Wentzのようなツキがあったのかもしれない、と疑う必要もあるだろう。例えば2020シーズンならAllenだ。実際問題、Billsの2020シーズンの3rd down conversionは49.7%とリーグでもトップであり、もしかしたら、Allenもそうしたツキのおかげで成績が上がったのでは、と疑いたくもなる。
だがDAKOTAで見る限り、彼の数値は1&2が0.168、3&4が0.191とそれほど極端な差がついているわけではない。確かにFirst Down Percentageは1&2の時の36.8%に比べ、3&4だと51.7%と大きく上昇しているように見えるが、そもそもリーグ全体で1&2にパスでFDを取る率は35.5%であり、Allenはこの数字を少しだが上回っている。2020シーズンの彼の成績が単なるツキによるものかどうかを、このデータから分析することはできない。
もう1つ、ツキの要素が大きいと言われているのはレッドゾーンでのプレイだ。Football Outsidersもレッドゾーンでのプレイが
「年ごとに安定していない」 と指摘している。レッドゾーンからのTD率では昨シーズンはPackers、Titans、Brownsあたりが非常に高く、Billsは全体13位と平凡な数字だった。ただしパスプレイだけに絞れば、レッドゾーンでのTD%はリーグ8位(28.9%)と少し向上する。レッドゾーン以外でのパスでのFD%を見ると、Billsは38.7%でリーグ3位の好成績を収めている。
要するに2020シーズンのAllenの数字は、多少のツキがあったことは確かだが、それを除いてもなかなかいい成績だったと言える。もちろん1シーズンの数字はキャリア全体の数字に比べれば小さく、つまりツキに振り回される可能性がそれだけ高いわけで、2020シーズンのAllenだけを見て安心するのは気が早い。それでもWentzの2017シーズンを見て彼が一流だと思い込んでしまうよりは、まだAllenの方が説得力のある成績を残しているとは言えるだろう。
ちなみにFootball PerspectiveのChaseは、
WentzとWinstonを同じレベルのQBだと指摘している 。RANY/Aで見ればWinstonが+0.12と、むしろWentz(-0.33)より上だし、DAKOTAでもキャリアトータルの数字はWinston(0.105)がWentz(0.076)より優れた数字を残している。というかこのオフにFAになるQBの中でおそらく最もDAKOTAが高いのはWinston。QB不足に悩んでいる各チームは今すぐ彼の下に殺到すべきではなかろうか。
もう一つ、
Over The Capがサイトのリニューアルをしていた 。見た目が多少すっきりした感じはあるが、相変わらず情報過多なサイトである点は同じ。スマホ全盛期の今はむしろ初見の情報量を抑制するようなサイト作りが主流になっているような気もするが、そんなの知ったことかと言わんばかりのスタンスは見事。
で、リニューアルに合わせて色々なページを見ていたのだが、中に面白いものがあった。
Rookie Class Evaluation というページがそれで、ドラフトされた選手が最初の4年間にどのくらいのスナップに参加したかを指数化したものだそうだ。各チームごとに各年次別の数字が見られるため、どのチームがいつのドラフトで成功、あるいは失敗したかが分かる。
例えばPatriotsを見ると、2013年と2015年のドラフトで大成功していることが分かる。前者はJamie CollinsやLogan Ryan、Duron Harmonを指名した年であり、後者はMalcom Brown、Trey Flowers、Shaq Masonらの名前が挙がる。個別の名前だけ見れば、例えばChandler JonesやDont'a Hightowerを選んだ2012年なども候補に挙がりそうな気がするが、やはり2人がスターターとして定着するくらいだと当たり年とは言えないのだろう。
実際、この評価方法だと、Patriotsがリーグ平均以上の数字を出したのはこの2年と、あとはまだ4年が経過していない2019年及び2020年のドラフトだけだ。最後にSuper Bowlを制したのが当たり年のルーキーが4年目を迎えた2018年だったあたり、実はドラフトの良しあしが地味にチーム力に影響を及ぼしていた可能性を感じさせるデータでもある。まあ2015年より後に一度もリーグ平均を上回っていないChiefsが昨シーズンに優勝しているから、これだけですべてが決まるわけでもないのだが。
実際、2017-20シーズンの評価値合計が高かったチームを見ると、49ers(35.05)、Chargers(34.18)、Colts(32.59)、Bills(31.31)、Broncos(30.00)という並びになっており、5チーム中過半数が負け越している。逆にSuper Bowlまで進んだChiefsはリーグで最も低い数値(16.54)だし、他にボトム4位のSteelers(21.04)もプレイオフにはたどりついている。評価値と2020シーズンの成績との相関係数は-0.016とほぼ無相関だ。
理由は当然、色々と考えられる。
この指数の計算法 でも指摘されているが、この評価法はあくまでスナップを使ったものだ。だから二流選手でも替えがいないため多数のプレイに参加するケースと、一流だがDLのようにローテーションをするためスナップカウントが少ないケースを比べれば、前者の方が高い評価値になってしまう。
そしてもちろん、ルーキー以外の選手の評価が入っていないのも理由だ。2011年の労使協定以降、各チームが
以前よりもルーキー契約の選手に頼るようになった のは事実。それでもベテランとしてプレイしている選手は大勢いるし、彼らの中にはゲーム結果に大きなインパクトを及ぼす選手も多い。そうした選手たちを無視し、4年目以内の選手たちの評価だけを見ても、勝率との相関が薄くなるのは仕方ないだろう。
もちろんこのデータは勝率との比較を目的に作られたものではない。どのチームのどの年次にいい選手がいたかを示す一つの方法としてまとめられたものだろう。例えばColtsのドラフトが大成功だったと言われる2018年の彼らの数値は、リーグの平均や中央値をかなり大きく上回っている。同じくSaintsがドラフトで大成功したと言われる2017年の数値もでかい。我々の感覚をそれなりに反映したデータであることは確かだろう。
でも2011年以降の累計で最も評価が高いのがJaguarsだと言われると、それはそれで頭が痛い。いや確かに彼らはこの10年間に勝率0.275と散々な成績を残しており、結果としてドラフト上位での指名が多く、スナップカウントにつながる選手をそれだけ引き当てていたと解釈もできる。だが一方、これだけドラフトで人材を補填していたにもかかわらずそれが勝利につながらなかったと解釈することもできるわけで、何とも酷い数字なのは確かだ。
逆にこの評価が最も低いSteelersはこの10年で6回プレイオフに到達しており、負け越した年は1度もない。当たり前ではあるが、チーム作りはルーキーだけで完了するものではないことが分かるデータだ。
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