ここで問題になるのは2点ある。いやそもそも現職大統領が民主的手続きを無視し続け、
支持者を扇動して暴徒化させていること自体が大問題だと言われればその通りなのだが、そこまでは正直想定内。対抗エリートと不満分子が暴れるのは当然の前提としたうえで、問題にすべきなのはそれがどこまで広がるかだ。問われるのは共和党政治家たちの行動と、治安当局の対応である。
だが、ワシントン騒乱の前日に投票が行われたジョージア州の上院議員決選投票は、事前の世論調査で言われていた通りに
民主党候補が2連勝。これで民主党は上院でも半数(議長となる副大統領票を合わせれば過半数)を確保したことになり、大統領選、下院選に続き3連勝を達成した。そしてこのジョージアにおける共和党敗因の1つがトランプではないかとの話が出ているのだ。
彼によればトランプ時代の世論調査は実はかなり的中率が高く、特に
彼自身が出馬していない選挙はかなりいい結果が出たそうだ(今回の決選投票もしかり)。トランプ自身が出た選挙はそれほどでもなかったわけだが、これはつまりトランプ自身が出馬しなければ共和党にとっての「ファクターX」が働かない、という意味とも取れる。2年後の中間選挙をにらんでトランプ支持をしていていも、実際にはあまり助けが得られないかもしれないのだ。
もう1つの問題は治安当局だ。以前
こちらでも書いた通り、内戦や反乱が起きるかどうかは人々の「不平」より政府側の治安維持能力の方が重要との説がある。既存の秩序を覆そうとする不満分子はいつの時代も存在しており、それを鎮圧できる能力さえあれば反乱や内戦のリスクは低いという主張だ。もちろん米国のような金持ち国の政府はそうしたリスクを抑え込めるだけの能力を十分に持っているから、Turchinが言うような内戦の可能性はほとんどない、という結論になる。
個人的にはこの指摘にも一理あると思っている。例えばトランプが、
全国に散らばっている自称ミリシャたちを組織化し、自分の意のままに動かせる準軍事的組織に作り替えていたのなら、それを核に内戦や反乱を起こすこともできたかもしれない。でもホワイトハウス内ですらろくに統率できていなかった彼に、そんな組織作りの能力があったようには見えない。だからこそ共和党という全国組織の動向が重要なのだが、それでも政府当局の治安維持能力そのものが失われていない限り、やはり内戦や反乱はないだろう……と思っていた。
だが今回、その治安組織は、よりによって議会の合同会議という国民の代表が集まる場に暴徒を簡単に入れてしまった。外で暴徒が暴れる程度なら正直あっても不思議はないと思っていたのだが、さすがに
議員が避難するような事態が起きたのは拙い。何が原因でそういうことになったのかは分からないが、例えば治安当局の能力が下がっているとか、鎮圧したくないと思っている関係者がいて暴徒の侵入を見逃したといった状況があったのだとしたら、これはヤバい。あり得ないと思っていた反乱・内戦の方へと針が振れることになってしまう。
つまり、目先の騒乱は収まったが、今後の懸念まで解消されてはいない、どころかむしろ懸念が強く残る状態が続いている可能性がある。共和党内のトランプ派議員たちはまだ勢力を残しているし、トランプへの支持が一掃されたわけでもない。むしろこのままだと
「右翼の暴力と低いレベルの蜂起が長期にわたって続く」リスクを心配すべきとの声もある。下手をすると
戦前の日本のようになりかねないとの懸念も出ている。予断を許さない状況というわけだ。
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コメント
彼らを突き動かしているものは何なのでしょう?
2021/01/08 URL 編集
https://twitter.com/RASENJIN/status/1347027746929606662
地元の成人式で暴れるマイルドヤンキーのグレードアップ版、みたいなイメージでしょうか。
ただ、そういう面があるからこそ、むしろ警戒すべきだという指摘もあります。
https://twitter.com/kemohure/status/1347054986719498246
https://twitter.com/naoya_fujita/status/1347033636948774913
見た目の緩さで判断するのではなく、彼らのやっていることが民主主義の否定であるという原則をきちんと確認し、それに合わせた罰を適用すべき、ということでしょうか。
2021/01/08 URL 編集