2020 week16

 NFLはラス前第16週。今週は現地金曜日の夕方にVikings @ Saintsの試合が行われた。金曜日のゲームはクリスマス当日になるのだが、NFLの歴史を見ると12月25日のゲームより金曜日のゲームの方が珍しいそうだ。もっとも今週のFriday Gameはクリスマスイブを避けるという狙いで当初から予定されていたものであり、Covid-19のせいではない。
 それにしてもこれで今年は全曜日でNFLのゲームが行われた珍しいシーズンとなってしまった。通常の年であれば木曜、日曜、月曜に、またシーズン終盤(カレッジのレギュラーシーズン終了後)には土曜にもゲームが行われるのだが、今年はそれに加えて金曜ゲームが当初から組まれ、さらに疫病のために第5週第13週は火曜、第12週は水曜にゲームが行われた。改めて今年が例外的なシーズンであることが分かる。
 その金曜日ゲームではSaintsがVikings相手に勝利。ただBreesは引き続き調子がおかしかったようで、成功率は回復したもののインターセプトを2回も食らった。この試合はとにかくKamaraにつきる展開で、ランで6TDというのはNFL記録タイだそうだ。驚くべきことに最初にこの記録を打ち立てたのは1929年のErnie Nevers。なかなかに凄い話ではあるが、Saintsファン的には祝福しつつもBreesの動向への不安が先立つかもしれない。
 プレイオフではChiefsがシード1位を確保。ここまで1敗しかしていないから強いのは間違いないのだが、あまり圧倒的な印象がないのは14勝のうち半分の7勝が1ドライブ以内の点差だったあたりが理由だろうか。しかもその7試合がすべてシーズン後半に集中しているのも、ある意味すごい。この7試合のPythagenpat勝率を計算すると0.597となり、つまり普通なら4勝強くらいになっていたとも考えられるわけだ。
 実際、第9週以降のChiefsの成績をEPA/Pで見ると、実はBrowns、Dolphins、Football Teamといったあたりとあまり差がない計算になる。オフェンスはリーグ上位に位置しているのは確かなのだが、ディフェンスだとリーグのボトム5とどまっている。ディフェンスが不安定なのに対してオフェンスは安定しているため、オフェンスの強いChiefsが有利なのは間違いないものの、プレイオフについてはディフェンスの影響が大きいとの指摘もある。シード権を確保したのは何より大きいが、弱点がないわけでもなさそうだ。
 ディフェンスと言えばFiveThirtyEightでHermsmeyerが面白い分析をしていた。アナリティクスの世界ではNFLのディフェンスは非常に不安定で予測しづらいことが指摘されているが、その中で相対的に安定したデータを見つけた、というものだ。個々の選手のプレイではなく、DCのプレイコール、特にシチュエーションに応じてボックス内に何人の選手を入れるかという部分がそれで、2008-2020シーズンのn年とn+1年との相関係数は0.55になるという。
 ディフェンスが予測しづらいのは、それが「高度に相互接続したウイークリンクシステム」であるため。誰か1人がミスをすればディフェンスの網はそこから破れていくのだが、その破綻はディフェンス全体の破綻として認識される。NFLのディフェンスは同じミスを繰り返さない程度のレベルの高さを保っているため、破綻を計測することができても、では次に誰がどのように失敗するかを予測するのは困難になる。「彼らはただ、新しくエキサイティングな失敗のやり方を見つけ出すだけ」なのだ。
 しかし11人いる選手の失敗を予測することは無理でも、1人しかいないDCのプレイコールの傾向を見つけ出すことはできる。その一例がDBOE(Defenders in the Box Over Expected)で、シチュエーションに応じてボックス内に配置するディフェンス選手の数について、リーグ平均に対して個々のDCがどのような傾向を見せるかを調べたものだ。今シーズンについて言えばRamsはボックス内の選手数が少ない傾向が強く、逆にJaguarsはその数が多い。リーグ全体で見ると2018シーズンまでDBOEは下がる傾向があったが、今シーズンはむしろ上昇傾向にある。
 問題は、DBOEとチームのディフェンス力とがあまり相関しているように見えないこと。Ramsのディフェンスはリーグ内でもかなりレベルが高い(EPA/Pトップ)が、彼らの次にDBOEが低いBroncosはリーグの真ん中付近だ。DBOEの高い方を見ても、Jaguarsはリーグでもどん底クラスの酷いディフェンスだが、2番目にDBOEの高いFootball Teamはトップ5のディフェンスを展開している。ディフェンスの場合、プレイコールよりもどれだけいい選手をフィールドに送り込めるかが重要なのではないか、と思える数字だ。
 また今週はBuccaneersもプレイオフに到達決定。何でも2007シーズン以来だそうで、Patriotsが前にプレイオフに出られなかったシーズン(2008)より前に遡るほど長いこと遠ざかっていたわけだ。一方のBradyはこれで12シーズン連続のプレイオフ出場を確保。今シーズンの彼はかなり波のある成績だったが、現時点ではDAKOTAでWilson並み、ANY/AではWilsonより上の数字を出している。どうやら彼は崖から滑り落ちるのではなく、もっと緩やかな下り坂を通っているらしい。
 もう1つの注目点はNFC東だ。この期に及んでもなおEagles以外の3チームいずれにもプレイオフのチャンスが残っている。といってもFootball TeamとCowboysは6勝9敗、Giantsは5勝10敗と、全チーム負け越しは既に決定。過去に負け越しからプレイオフに出た事例としては2014シーズンのPanthers(7勝8敗1分)と2010シーズンのSeahawks(7勝9敗)があるのだが、それらに続く負け越しプレイオフは既に確定したわけだ。後は夢の「2桁敗戦プレイオフチーム」が生まれるかどうかだが、さて。

 前週の続きで2012年ドラフトQBの4年目終了時の成績を見てみよう。数字は左からANY/A、EPA/P、CPOE、DAKOTAだ。

Wilson 7.15 0.201 5.4 0.149
Cousins 6.52 0.111 0.7 0.089
Griffin 6.14 0.088 1.4 0.084
Luck 6.15 0.119 -2.1 0.076
Tannehill 5.50 0.046 0.1 0.062
Foles 6.28 0.056 -0.8 0.060
Weeden 5.12 -0.005 -3.2 0.026

 Wilsonの成績はさらに上昇し、なかなかのレベルに到達している。勝ち星は過去3年のいずれの年も下回ったものの、引き続きプレイオフ出場を記録しており、彼自身の成績に対する不満はチームもファンも持っていないだろう。その後も彼はリーグを代表するQBとして活躍を続けているのだが、1つ問題があるとしたらいまだにAPの1st-Team All-Proに選ばれていないことか。正直、やっかいなQBたちの成績が落ちてきたと思ったら若いMahomesが現れるといった具合に、ライバルがきつすぎる点はある。それでもどこかで1回はAll-ProなりMVPなりを取っておいてもいいQBだとは思う。
 2番手はGriffinを負傷させないためにプレイ時間が増えたCousinsだ。皮肉なことに彼の成績はそのGriffinを少し上回る水準で決着。ただし文句なしで長期契約と言えるだけのレベルではない。当時RedskinsがCousinsと長期契約を結ばずにタグに頼ったことは批判された面もあるが、ではCousinsは大型契約にふさわしいQBだったのかというと微妙に困る数字であることも確かだ。彼のVikings移籍後の数字もそれほど突出しているわけではなく、長期契約を避けたのが失敗だったと言い切るのは難しい。
 Griffinについては前回書いたので省略。Luckの4年目はさらに成績が下がり、Griffinより下になった。だがチームは結局この4年目が終わったところで契約を延長。BreesやWilsonより多い金額を彼に提供した形になっている。結局、彼がこの新しい契約後にプレイしたのはたったの2年(2016&2018シーズン)。大枚はたいた結果がこうだったのを見ると、Cousinsの契約の方がよりマシだったようにすら見えてくる。実際、リーグ平均並みの選手と長期契約を結ぶのは、一般に思われているよりもリスクの高い行為ではなかろうか。
 残る3人はいずれも契約延長がなくなったか既に終わった選手ばかりだが、Folesの数字については興味深いので少し触れておきたい。前回も触れたように3年目終了時のFolesの成績はWilsonの次に高かった。ところが4年目終了時点の彼は、特にDAKOTAを見るとTannehill以下まで急低下に見舞われている。ANY/Aは引き続きそれなりの水準を維持しており、そのあたりはGoffと似ているのだが、それでも3年目までに比べればかなり低い。たった1年でここまで数字が下がったQBもなかなかないと思う。
 2012年ドラフト組は、これまでも見た通り結構多くのQBがそれなりに数字を残してきた。だが超一流の域にあるのはWilsonのみであり、その点だけに注目するのならMahomesとWatsonの2人を生んだ2017年組の方が豊作。それも含め、本当に有能なQBがいかに手に入りにくいかが、改めてよく分かるデータだ。
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