2020 week8

 NFLは第8週が終了。今週もまた試合前にいくつかのCovid-19陽性が出ていたが、スケジュールに影響を及ぼさない範囲で乗り切ることができたようだ。毎度のことながら際どいところ。米国全体では足元でついに1日あたりの新規感染者数が10万人に達するという酷い状況になっており、いつまでNFLがスケジュール通りに進められるか、先行きは引き続き不透明だ。
 そしてもう1つ、米大統領選の投票も始まった。これまでも述べてきたように、今回の選挙は単なる選挙ではなく、南北戦争直前に行なわれた1860年の選挙と並んで語られるような選挙である。普通の年なら投票日の翌日未明には結果の方向性が見えるだろうが、今回はもっと長引く可能性があるし、どのような不安定化イベントが起きるかも読み切れない
 FiveThirtyEightの出している予想によると、ほぼすべてを夜の間に開票できる州はむしろ少数派であり、大半はもう少し時間がかかりそうだ。特に両候補の競争が激しいと言われるペンシルベニアでは、夜間に開票できるのは一部だと思われる。一方でトランプが投票結果に介入しようとすればすぐ抗議行動を始めようと手ぐすね引いているグループが多々存在しており、路上で騒ぎが起きる確率は高い。こうした事態がスケジュールにどんな影響を与えるか、今はまだ不透明だ。来週以降もスケジュールについては何が起きるか分からないと考えていた方がいいだろう。
 今週はAFC北で地区優勝争いが行われ、アウェイのSteelersが勝利を収めた。かなりグダグダ感の強い試合だったようで、ファンブル数はSteelersが3つ、Ravensが4つ。それでもEPA/Pで見ればSteelersはどうにかプラスをキープしたが、Ravensは-0.10とオフェンスがむしろ得点を減らすかのようなプレイをしていたことになる。その割にゲームがもつれたのは、Late downsの数字が真逆(Steelersは-0.08、Ravensは+0.25)だったのが原因だろう。全体としてプレイの質はSteelersの方が上だったが、幸運はRavens寄りだった、と考えればよさそうだ。
 同じく地区首位争いとなったのがSNFのCowboys @ Eagles、なのだが、こちらは双方負け越しチーム同士の残念な争いだった。こちらも第4Qの途中までは1ドライブ差以内のゲームだったが、先発も控えも負傷して3番手のQBを出す羽目になったCowboysが最期は力尽きた格好。といってもEaglesもとても褒められたものではなく、EPA/Pは-0.23とかなり酷い状態だ。それでもCowboysの-0.33よりはましなところが凄い。WentzのEPA/Pは-0.26で、要するに引き続き酷い成績である。
 Over The CapによるとCowboysは怪我人によるマイナスの影響が最も大きいチームだ。キャップヒットで見るとIRに入っている選手が実に30%を占めている。もちろん最大の損失はPrescottであり、ダメな地区の中でさらにダメな成績になっているのもそれが一因だろう。ちなみにEaglesも負傷の影響はかなり受けているし、Football Teamも含めるとNFC東地区は4チーム中3チームが負傷者による影響がトップ10に入るレベルとなっている。
 逆にものすごく健康なのがFalcons、Bills、Lions、Ramsあたり。といっても地区トップを走っているBillsを除けば、正直今のところは褒められるほどの成績は残していない。地区のレベルが高いせいで苦労しているRamsはともかく、FalconsとLionsは他の問題があると考えるべきだろう。あと怪我が少ないのはChiefs、Saintsといったもともと優勝候補に挙がっていたチームたち。彼らはチーム力のみならずツキにも恵まれていると言える。
 あと今週で目立っていたのは、ドラフト1巡のTagovailoaが初先発を経験したことだろうか。これで今年のドラフトでトップ10以内に指名されたQBは全員プレイをしたことになるが、Chase Stuartが算出している今週のQB成績を見る限り、Tagovailoaの成績は寧ろ残念な部類に入る(Cowboysの3番手であるDiNucciと似た数字)。
 実のところ、EPAを見てもこのゲームでDolphinsが勝った理由はおそらくよく分からないだろう。全体のEPA/Pも、Late downsで見ても、Ramsの方がまだDolphinsよりはマシ。Dolphinsが第2Qにファンブルリターン、パントリターンと立て続けにTDを決めたからこその結果であり、つまり個々のゲームで見ればEPAでも把握しきれない展開になることを示した事例なのである。少なくとも勝ったからTagovailoaを評価する、という結論に至るのは間違いだ。というか今回の試合を見ても、なぜここまで絶好調だったFitzpatrickを外したのか、いささか理解に苦しむところ。
 それ以外だと、第7週までの数字だがBen Baldwinが作っているこのグラフに出てくる下位チームが興味深い。Newtonを使っているPatriots、Lockが途中で負傷したBroncosが期待値より低いパスしか投げていないのは理解できるのだが、Vikingsの-7%は驚き。Cousinsはそこまで信用されていないのか。確かに彼がVikingsに来て以来のDAKOTAは0.098で、700プレイ以上しているQBたち34人の中では19位とあまり冴えない数字だ。だがリーグでどん底というのはいくら何でも低すぎるように思う。
 Brownsの-6%も、Mayfieldへの不信感を表しているのかもしれない。一方、Titansの-6%、Saintsの-4%はかなり予想外。このあたりはたまたま低くなっているだけ、という可能性もある。逆に上位チームで意外感があるのはBengalsか。普通新人QBをプレイさせる場合、負担を減らすことを中心に考えるものだが、+5%という数字を見る限りそういう発想はないようだ。むしろ新人の実力を早く見定めるためにも、どんどんパスを投げさせたほうがいい、という考えかもしれない。

 先週は2017年のドラフトクラスを取り上げたが、FiveThirtyEightの記事では2018年ドラフト組についてまとめている。この年は5人のQBが1巡指名されたが、うち1人(Rosen)は既に先発失格となっている。残る4人は今でもドラフトされたチームで先発を勤めているが、1年目はMayfield、2年目はJackson、3年目の今年はAllenと順番に活躍している状態。残念ながら今のところDarnoldはずっと冴えないままにとどまっている。
 ただし1シーズンは活躍した選手たちについても、その年を除くと決して素晴らしい成績とは言いがたい。Mayfieldは1年目のANY/Aが6.77に達した一方、2~3年目の合計は5.54と大きく低下している。Jacksonは2年目の8.19に対して1年目と3年目の合計が6.10になっているし、Allenは3年目こそ現時点で7.19に達しているが、1~2年目は5.16だった。いずれも3年合計で5.00にとどまっているDarnoldよりはマシだが、突出している1年を除くと実は平均レベルかそれ以下のQBになる。記事中ではチームの善しあしがQB成績に影響すると指摘しており、確かにそういう面もあると思うが、チームが支援しても1シーズンしか「いい成績」を引き出すことができていない、と解釈することもできる。
 キャリアの短い彼らについて、「よかった1年」が本物なのか、それとも「冴えない2年」こそその実力を示しているかを判断するのは難しい。Wentzのように5年目のQBになれば「2年目(ANY/Aが7.43)はフロックで、それ以外(合計ANY/Aが5.67)が実力に近い」と判断することも可能だが、2018年ドラフトQBたちにはまだそれだけの時間が与えられていないのだ。にもかかわらず、彼らの5年目オプションを使うかどうかについては、このオフに判断しなければならない。
 Rosenについては当然、Darnoldに関してもオプション拒否でいいだろう。しかし残り3人は悩む。個人的にはオプション行使は仕方ないとしても、MahomesやWatsonでやった「3年目終了時点で大型契約締結」というコースについては慎重になった方がいいように思う。QBの重要性はBuccaneersとPatriotsの現状を見ても明らかだが、それだけに本当は平凡なQBと長期にわたる大型契約を焦って結んでしまうと後々の影響が大きいのではなかろうか。最初の3年のうち2年で素晴らしい成績を残したQBなら文句なしだが、1年だけの場合はもう少し腰を引いた対応がよさそうに思う。
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