開催か見送りか

 いよいよ8月も終わりNFLのシーズンが目先に迫っている、わけだが、その周辺では次々とシーズン見送りの流れが強まっている。一例がカナダで行われているほぼアメフトと相互互換のスポーツ、Canadian Football Leagueだ。彼らは2020シーズン開催を断念し、それによって1919年以来初めてグレイ・カップが授与されなくなることが決まったという。
 グレイ・カップは元々はカナダにおけるアマチュアラグビーのチャンピオンチームに与えられるものとして1909年にスタート。第一次大戦とスパニッシュ・インフルエンザの影響があった1916-1919まではゲームがなく、カップも授与されなかったが、1920年には復活。その後も基本的にアマチュアのカップとして続き、第二次大戦中も軍関係のチームのみが参加して継続された。
 ただ、ラグビーという名を冠してはいても、そのルールはラグビー・ユニオンのものとは異なっていた。グレイ・カップが始まる前の1903年からアメフトと似たBurnside rulesなるものが採用されていたし、1929年からはアメフト同様にフォワードパスが認められるようにもなった。グレイ・カップは当初からカナディアン・フットボールのトロフィーだったと考えていいだろう。
 初期のアマチュアが参加していた時には大学チームがカップを手に入れることもあったが、戦後になるとプロ化の進展でグレイ・カップを巡る状況も変わった。プロリーグであるCFLがスタートしたのは1957年からであり、以後はCFLのチャンピオンチームがこのカップを手に入れるようになる。この時期から数えてもスーパーボウルより古い歴史を持っていることが分かる。
 現時点で存在するチームのうち、最も優勝回数が多いのはEdmonton Football Teamの11回らしい。名前を見れば分かると思うが、このチームは長くEdmonton Eskimosを名乗っていた。Redskins同様、チームの愛称が論争を呼ぶようになったため、今年になってチーム名を変えることにしたという。NFLと似たようなスポーツで、似たような現象が起きているわけだ。
 だがCFLはNFLのような金持ちリーグではなく、収入の中心はスタジアムの入場料にかかっている。Covid-19によってスタジアム観戦が難しい状況では財政的に厳しかったのだそうだ。何とか短縮シーズンを開催すべく政府の融資を求めていたようだが、それができなかった時点でシーズンを諦めるほかなくなったのだろう。

 CFLだけではない。彼らよりはるかに金持ちだと思われるカレッジフットボールの世界でも、シーズン中止の流れが広まっている。というかそもそもNCAAは秋のスポーツの大半を延期することを既に決定している。対象はFBS(Football Bowl Subdivision)を除いたアメフトと、男女のサッカー、クロスカントリー、女性のホッケーとバレーボールだ。だが最も人気のあるアメフトのFBSについては必ずしも全面延期にはなっていない。
 このあたりの経緯はこちらの記事が読みやすいだろう。アメフトにおいては2部以下のリーグと、1部リーグの中でも下位チームが所属するFCS(Football Championship Subdivision)までは既にこの秋の開催を諦めているのに対し、FBSについてはカンファレンスあるいは大学ごとに対応の差が生まれている。最初にスポーツ活動を停止したのはコネチカット大で、その後にBig TenやPac-12といったカンファレンス単位で開催を断念するところも出てきた。一方で特に強豪カンファレンスでは、スケジュールを短縮し、カンファレンス内ゲームを中心として何とか開催しようとする動きが続いている。
 結果、今シーズンのカレッジフットボールの戦力図に大きな影響が出るのは間違いないようだ。こちらの記事に載っているプレシーズン時点のランキングトップ25を見ると、実に9チーム(3分の1超)が今シーズンは参加しないことになっているほど。NFLにもCovid-19の色々な影響が出ているが、カレッジではかなり大きなインパクトを与えていることは間違いない。
 それにしてもなぜFBSではNCAAの方針とは異なり、シーズンを開催するかどうかを個別校やカンファレンスが決めているのだろうか。そのあたりの由来はこちらで紹介されている。そもそもNCAA自体、カレッジフットボールを継続するために設立された組織であり、両者の力関係は実は単純に上意下達で説明できるものではないことが分かる。
 特にテレビマネーの権利がNCAAではなく各大学やカンファレンスに委ねられていることが大きい。金のあるところに権力も存在するようになるのはある意味当然で、ゲームの開催権もそちらの方に存在する。FCS以下の大学についてはNCAAの方針に従うものの、最も人気があり、最も金もあるFBSの面々は自分たちの都合を優先しているわけだ。
 といっても彼らを単なる金の亡者と決めつけるのは言い過ぎだろう。彼ら強豪チームに所属する選手たちの中には、将来のプロ入りをにらんで大学で実績を積みたいと考えている者も多い。そう考えている選手たち、特に大学最終年にかかっている選手たちにとっては、シーズンが開催されるか否かは下手したら自分の一生にかかわる大事だ。実際、直近3年間にドラフト全体1位で指名された選手たちのカレッジ最終年がなかったら「BurrowとMayfieldはおそらく3~4巡指名、Murrayは野球選手」になっていたとの指摘もある。
 若者の将来にかかわるかもしれない決断を背負わされる各大学やカンファレンス関係者も、一方で直接人命に係わる恐れがあるCovid-19の拡大には頭を抱えていることだろう。正直、延期するにせよ開催強行するにせよ、簡単にその決断を批判できるとは思えない。

 一方、そうした若者たちがプロに入る関門の1つであるドラフトについて、Football OutsidersがHistoric Draft Gradesなる記事を載せていた。ドラフトが終わると、各チームのドラフト内容に関する評価が色々と出てくるのは恒例だが、2012-17年のDraft Gradesについてまとめて分析したものだ。
 まずGradeの付け方は全体に甘いらしい。本当なら中央はC+あたりに来るはずが、実際に最も多いのはBというパターンが見られる。もちろんGradeをつける人によって多少厳しさに違いはあるようだし、またチームごとに評価が少し上振れ・下振れしている例もある。
 しかしこの記事で最も興味深いのは、Draft Gradesと実際にプロ入り後にその選手たちが積み上げた実績との関係を示した分布図だろう。見ての通り、ドラフト直後の評価と選手の成績(Approximate Valueで算出)との相関はほぼ皆無。この点は以前から言われていたが、改めて図を見るといかにDraft Gradesなるものの意味がないかがよく分かる。やはり本気でドラフトの評価をしたいのなら、少なくとも4年は待つべきなんだろう。
 ただ、ドラフト直後でもある程度は将来の予想ができそうな切り口はある。どのチームにドラフトされたかを見る方法だ。これまた図を見ると分かる通り、トップにPatriotsが来ているほか、上位は調査期間中にSuper Bowlに出たチームが数多く並んでいる。強いチームにドラフトされた選手は高いAVを記録し、結果としてリーグより「いい」ドラフト結果を残す。逆に期間中の成績が冴えなかったチームのドラフト結果は残念なことになっている。
 と言ってもこれは単に強かったチームの選手たちのAVは全体に高くなるということを示しているだけ、とも解釈できる。ドラフトがうまくいくかどうかを知るためには、どのチームがこれから強くなるかを知る必要があるわけで、まあ鶏と卵みたいな話だ。つまるところ、ドラフトから将来を予想するのはやはり簡単じゃない、というのが結論だと思う。
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