ホーエンリンデン史料 3

 承前。

 ホーエンリンデン会戦前にグルニエが指揮下の各師団長に出した命令
「[雪月]11日[12月2日]の日中に左翼のいろいろな地点で行われた敵の偵察は、敵側の翌12日に向けた攻勢配置を告げるものであり、従って各師団長は、移動を妨げ通行を乱し得る装備やあらゆるものを片付けておくための必要なあらゆる用心をすべし。
 司令官が敵の移動を利用し、自ら攻勢に出ようとしていることを各師団長に伝える。この目的のために彼は以下の配置を命じた。
 ネイ将軍の師団はホーエンリンデンの背後にとどまり、その右翼に配置されているグランジャン将軍が指揮する師団と協力して、ホーエンリンデンから彼らに向けて出撃してくる敵の攻撃を受け止め、積極的に支えるようにする。
 ルグラン将軍の師団は、フルターンに派出した前哨線、及び既に命令を受けているようにアーディンクのエスパーニュ将軍の指揮下に残すことになる歩兵3個中隊を除き、全部隊を夜明けにハートホーフェンに集結せよ。
 バストゥール将軍指揮下の師団は、ルグラン将軍到着後にパシュテッテンの背後及び近くにある森の端の第2線に布陣し、この陣地からアーディンクへの主要街道を調べ、正面にハートホーフェンを置くようにせよ。ただしバストゥール将軍は、次の命令があるまで前哨線をイセンに残しておくように。
 各師団長には、ドープール将軍指揮下の騎兵予備1個旅団がハートホーフェンの背後に来ることを伝えておく。
 ルグラン将軍は可能な限り長くアーディンクとの連絡を維持せよ。この目的のため彼はフルターンの前哨線が攻撃された場合には彼らを受け入れ、しばしばメーンバッハ及びヴァルパーツキルヒェンに偵察を押し出すのと同時に、ヘールコーフェン付近に騎兵2個大隊を残しておくこと。もしこの2個大隊が優勢な戦力に攻撃されたなら、彼らはこの師団へと後退する。
 もし哨戒線が攻撃され、それが本格的だった場合、彼らは危険に晒されることがないよう、また敵が出撃し隘路を通り抜けてきた際に攻勢を容易に再開できるよう、抵抗しすぎることなく各師団へと後退する。
 敵がその攻撃全てを左翼に集中するつもりだと確信した時点で、司令官がリシュパンス師団とデカーン師団をクリストフ経由でマイテンベートへと行動させるであろうことを、各師団長に伝える。
 各師団長は夜明け前に兵たちを武装させておくこと。攻勢を再開する際に示されたそれぞれの地点に集中できるよう、十分な数の案内人を連れてきておくほうがいいだろう。
 グルニエ将軍は明日早くにホーエンリンデンにいる予定だ。
 師団救急車両は怪我人を最初に受け取ったところで、左翼の救護所が設置されるアンツィンクへと向かうように。各師団は負傷者の搬送に必要な車両を提供する。各師団長は負傷者を解放し、半旅団内で武器を持っていない兵に救急車両まで運ばせることができる。
 左翼の砲兵装備は、次の命令あるまではパースドルフ(ミュンヘン街道上の村)にとどまる」
Hohenlinden, p172-174

 ラオリー准将からリシュパンス将軍への命令
「あなたの師団が午前8時に[ザンクト=]クリストフに到着しそこで布陣できるように出発するのが司令官の意図だ。エバースベルクの陣地にはデカーン将軍の兵が交代で入るし、デカーン自身もあなたの移動に追随する準備をする。その際にはルクルブ将軍が彼と交代する。
 これらの配置の狙いは、ハークからホーエンリンデンへの街道と、イセンからホーエンリンデンへの街道上で攻撃してくると想定される敵を迎撃できるようにすることにある。あなたの目的は、敵がこの移動を実行してホーエンリンデンへと決定的に出撃してきた後に彼らと戦うことだ。攻撃が行われる場合、司令官はホーエンリンデンに向かい、そこからさらなる指示をあなたに伝えるだろう」
p175-176

 ラオリー准将からデカーン将軍へ
 アンツィンク、共和国暦9年雪月11日(1800年12月2日)
「親愛なるデカーン、敵の配置から彼らが翌日に攻撃する意図を持つと推測できる。攻撃はおそらくイセンと、ハークからホーエンリンデンへの街道上で行われるだろう。リシュパンス将軍が[エバースベルクの]陣地を発し、午前8時にはザンクト=クリストフに到着し、ハークからホーエンリンデンへと向かってくる敵を受け止めるか彼らと戦うよう命じられたことをあなたに伝えるよう、司令官が私に指示した。戦友よ、ヴァッサーブルクの出口をカバーするため、朝早い時間にエバースベルクへ分遣隊を送り出すよう試みてほしい。
 そして師団の残りとともに、リシュパンス将軍の移動に追随してほしい。ルクルブ将軍は、エバースベルクをカバーするため明日兵を送るよう命じられており、それによってあなたはハークへの街道を移動するうえで全師団が使えるようになるだろう。
 攻撃が行われる場合、モロー将軍は明朝ホーエンリンデンへ向かうので、あなたの配置について彼に知らせるように」

 ラオリー准将からデカーン将軍へ
 アンツィンク、共和国暦9年雪月12日(1800年12月3日)朝
「敵は昨日夕方、かなり多くの歩兵、騎兵及び砲兵部隊で、実際にホーエンリンデンに向かった。
 グランジャン将軍は街道をカバーするため、ホーエンリンデンの背後で最後まで立ちはだかるよう命じられた。同時にホーエンリンデンからツォルネディンクへの街道、さらに可能ならエバースベルクへの街道までカバーするよう、右翼側を偵察する。ただしこれらの出口を少しばかりカバーするのがふさわしくないかどうかの判断について、司令官はあなたに委ねることとする。またリシュパンス将軍は、ザンクト=クリストフを経てマテンペート[マイテンベート]へと素早く積極的に攻撃を行い、ハークからホーエンリンデンまでの連絡路を支配するべくあらゆる努力を払うよう命じられている。
 戦友よ、移動を急がせ大いに積極的にリシュパンス将軍に追随するよう、あなたに促す必要はないだろう。日中の短さゆえに早く戦わなければならない。
 もしあなたの連携した移動が成功すれば、敵はホーエンリンデン街道上での試みに対して多くの犠牲を払うことになるだろう。
 ホーエンリンデンにいることになるであろう司令官に、可能な限り頻繁に情報を伝えるように。敬具。
 追伸。リシュパンス将軍がクリストフからマイテンベートへと向かえないことがあり得るため、もしそうなったら後者の地点より左側、ホーエンリンデンにより近い出口へ向かうよう命じられている。彼がそう伝えてくるだろうから、その時は彼の移動に追随するように。だがまずはマテンペートへたどり着くためあらゆる努力を払うよう、彼は命じられている」
p412

 ネイ将軍からグルニエ将軍への手紙、12月2日午後11時から真夜中の間、フォアスターン
「親愛なる将軍、敵が突然グルーシー将軍の師団(前グランジャン)を夜10時前後に攻撃し始めたことをあなたに伝えるべく、私の士官の1人がフォアスティニンク(左翼司令部)に駆け付けましたが、上手くいきませんでした。
 射撃と砲撃はクロナッカー方面で11時まで続きました。
 もし敵が敢えてホーエンリンデンまで進むのであれば、それを迎え撃つべく我が兵たちは準備をしました。何人かの敵散兵がこの村の付近まで前進してきたため、我々の哨戒線が敵に急いで逃亡するよう強いました。
 3000人の部隊がホーエンリンデンまで突入するよう命じられたこと、そして帝国全軍が[雪月]12日(12月3日)にマテンポット[マイテンベート]の隘路を経てそこまで来ることを、バニョフスキー連隊の捕虜1人が証言しました。(中略)
 敵はホーエンリンデンの出口、シュヴィンツィンケル付近に夜の間に哨戒線を築き、森の続く範囲全てに哨兵を配置しました。
 明日の早い時間に敵の移動についてお知らせします」
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