しばらく触れていなかったが、
NFLではCovid-19でオプトアウトする選手が固まった。希望した選手は全67人。チーム別で最も多かったのがPatriotsで8人がアウト、一方Chargers、Falcons、Steelersの3チームには1人もいない。ただしこの後も一定の基準を満たした場合にはオプトアウトが可能になるため、最終的にオプトアウトする選手が何人になるかはまだ分からない。
オプトアウトした選手のサラリーはどうなるのか。
もちろんJason Fitzgeraldがこちらについてもフォローしている。まずオプトアウトには2種類ある。ハイリスクと、一般にvoluntaryと呼ばれるものだ。前者はいわば基礎疾患持ちの選手がオプトアウトを希望した場合で、後者はそうでない選手たちが対象となる。一覧表を見れば分かるが、ハイリスクな選手たちは体重の多いOLやDLが圧倒的に多い。
ハイリスクなカテゴリーに入っている選手たちは今シーズン、35万ドルのサラリーをもらうことになり、現在の契約は2021年以降にそのままシフトする。保証など契約上の決まり事も全て1年ずつずれる。ただしオプトアウト前に払われたボーナスなどは、1年シフトされることはない。一方、その他の選手たちは今シーズンにもらえるサラリーが15万ドルに減り、なおかつその分は将来のサラリーから減らされる。それ以外はハイリスクな選手たちと同じだそうだ。
具体的にはどうなるのか。記事中では計算の一例が載っているが、3月時点でロースターボーナスをもらい、またオフシーズンのワークアウトボーナスをもらっていた選手の場合、その額のみは今年のキャップに計上するが、それ以外のベースサラリーや、均等配分されたサイニングボーナスなどは全部来年以降に1年ずつシフトすることになる。
もっと具体的に見てみよう。オプトアウトを選んだ
Hightowerのサラリーを見ると、今シーズンのキャップヒットは完全にゼロになっており、代わりに来シーズンにその分のキャップが全て乗っかることになっている。
Mosleyの場合だと、3月に支払われた10ミリオンのロースターボーナスはそのまま今シーズンのキャップヒットになるが、残りの7.5ミリオンは来シーズンに繰り延べされている。
さて問題はここから。もし今シーズンがCovid-19の影響でキャンセルされるような事態になった場合、何が起きるのだろうか。キャンセルされる時期によって違いが出てくるらしい。もしシーズン開始前にキャンセルが決まれば、支払いは停止し、それぞれの選手ごとに決められた最低限の金額が支払われる。おそらくオプトアウトしなかった選手たちの契約も1年後ずれするのだろう。
だが最終的なカットが終わっただと状況は変わる。支払い停止はなくなり、まず「最低限の金額」が増える。ただし実際に契約上の金額が支払われればその時点でこの「最低限の金額」は相殺される。あとはどのくらいの試合が行われるかだ。基本的に試合が行われた週の数に比例するだけのサラリーが支払われることになりそうで、例えば1週しか試合が行わなければ17分の1のサラリーしかもらえないという。
もしシーズンが途中でキャンセルされた場合、残りの支払われなかったサラリーはどうなるのか。実は「消え去ってしまう」。2020シーズンにどれほど巨額の契約を結んでいようと、行われなかった試合の分は支払われることはないし、後のシーズンにシフトされることもない。Fitzgeraldは、2020シーズンに高額の契約を結んでいる選手の場合、オプトアウトを選んで来シーズンに確実にサラリーを得られるようにした方がいいと書いている。
保証額はどうなるのか。こちらはもらえなかった分を来シーズンにシフトすることになる。ただしもらう金額自体が減るのは変わらないため、スター選手であればあまり意味のない仕組みだそうだ。このため2020年に多額の保証つきの契約を結んでいる選手の場合は、オプトアウトにマイナスの要素はなく単に支払い時期を遅らせるだけになるのに対し、今シーズンが途中でキャンセルされた場合には実収入が減るという実害を受けることになる。ただしルーキー契約の選手にとっては早く2度目の契約を結ぶことが大事であるため、オプトアウトのメリットは少ない。
自主的なオプトアウトの受付期間が過ぎたため、この理屈に従って今からオプトアウトを選ぶのは簡単ではなくなっている。だが他の対応策もある。
こちらのツイートにあるように、最終カットが行われるや否や、スター選手は今シーズンのサラリーを全てサイニングボーナスに変えることを要求するという手があるのだ。そうすればシーズンが途中でキャンセルされても今シーズンの収入は確保できる。もちろんチームが同意するかどうかは別問題だが。
サラリーをサイニングボーナスに変えることは、チームのキャップ対策に影響を与える。
こちらのエントリーのコメント欄に書いた通りだ。それでもチームにとって欠かせないスター選手からの依頼であれば受けざるを得ないケースもあるだろうが、来シーズンのサラリーキャップが減少する可能性まで考えると、今年中に処理できるはずのキャップヒットを来年に持ち越すことに難色を示すチームもあるだろう。特に来シーズンのキャップに余力のないチームの場合は、このあたりが問題になるリスクもある。
Patriotsなどは
今シーズンのキャップスペースがごく短期間で大量に膨らむといった事態が起きているが、もちろんBelichickの意図とは関係なく、オプトアウトの続出によって生じた結果にすぎない。同じく前にもコメント欄で触れているが、キャップを余らせすぎるのはチーム作りにとってはむしろマイナスだと思っており、その意味で今シーズンのPatriotsは上手く回っていないと見られる。
またオプトアウト以外にCovid-19の影響として見ておくべきなのが、
reserve/covid-19 listだろう。新型コロナウイルスで陽性、あるいは濃厚接触が確認された選手が入るリストで、おそらく今後もシーズン中を通じてずっと更新されることになると思う。むしろ現時点でリストに載っている選手たちは開幕前に回復すればリストから外れるわけで、今の時点でそれほど気にする必要はないと思う。
シーズンが近づいたことで、普通にゲームに関するデータなども出てきている。例えば
こちらのツイートでは各チームのpersonnelをまとめた一覧が紹介されている。自分たちのチームがどういったpersonnelに頼る割合が大きいかといったことをざっくりと見る際には役立つだろう。
各種予想もアップデートされている。
Football OutsidersのDVOA予想では、いつの間にかプレイオフ確率のトップがChiefsからSaintsに後退しており、またAFCの3番手にはSteelersが入ってきている。もしかしたらオプトアウトした選手たちの動向を見たうえで修正したのかもしれない。
とにかく予想には難しいシーズンであることは確かだろう。主力選手に追加のオプトアウトが出るかもしれない。いつreserve/covid-19リストに選手が入れられるかも分からない。そして何よりシーズンが途中でキャンセルされるかもしれない。
足元では米国の新規感染者数は減少傾向にあるものの、いつ流れが逆転するかも分からない。
いずれにせよ各スタジアムが観客を減らす動きは相次いでいるし、収入減が避けられないのは確かだ。それでもダメージを最小限に抑えるうえで、とにかくできるだけ試合をこなすことが重要になる。
カレッジでは一部でシーズンをキャンセルする動きも出てきた。とにかく無事に最後まで走り切ることが、今シーズンの最大の課題かもしれない。
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