QB契約詳細

 NewtonとPatriotsの契約内容についてもう少し詳しい内容が報じられた。La Canforaによるとやはり契約はミニマムの1年1.08ミリオンであり、うち保証額は55万ドルのみ。上乗せ分の6.45ミリオンはインセンティブ及びゲームごとのロースターボーナスとなる。そして言われていたように2021年のフランチャイズタグに関する制限はない。
 さらにBreerによれば、ロースターボーナスは70万ドルだそうで、つまりシーズンずっとロースターに残ったとしても、インセンティブを達成できなければPatriotsの支払額は1.75ミリオンまでにしか到達しない。7.5ミリオンのうち大半はNewtonが実際にプレイを行い、目標となる数値を達成することによって初めてチームが支払い義務を負うタイプのものと見ていいだろう。
 これでPatriotsは異様に安いQBを3人揃えることになる(他にもQBはいるが、先発争いにかかわる可能性は低い)。Brian Hoyerの契約はNewtonと同じベテランミニマムの1.05ミリオンだが、保証額はゼロでインセンティブは2ミリオンだ。ルーキー契約のJarrett Stidhamはキャップヒットが83万4028ドルに留まる。Stidhamが先発しNewtonが控えになりHoyerがクビとなった場合、PatriotsがQBに支払うのは2.6ミリオン弱となる。BuccaneersがBradyに支払うキャップヒットの10分の1強だ。
 今回の契約に伴い、Newtonのキャップヒットは1.1ミリオン強となるらしい。オフシーズン中は上位51人分のキャップヒットのみを計算するため、この契約を加えてもPatriotsのキャップスペースはまだギリギリ空いていることになるという。この契約のために他の契約を見直したり選手をカットしたりする必要はないわけで、確かにPatriotsにとってとてもおいしい契約に見える。

 ではなぜNewtonはそんな契約に応じたのか。Jason Fitzgeraldは「Newtonの契約は最低なのか」というエントリーの中で、彼がこの契約を結んだ理由を分析している。
 そもそもNewtonがこのような立場に追い込まれたのは、彼が以前いたチーム、即ちPanthersの行動が大きな要因となっている。Panthersは当初、Newtonをトレードしようと試みたが、途中で方針を変更し3月24日に彼をカットした。問題はこの日付が、FA開始から1週間も経過した後だったことだ。これだけ時間が経ってしまうと、多くのチームは新シーズンに向けたロースターの基本を作り上げてしまっている段階であり、その後から慌ててQBという核になるポジションを入れ替える可能性は低くなる。
 トレードが可能になるのは公式には3月18日だが、最近はそれ以前に既にトレードが固まっている例が多い。例えば2019年のオフにRavensからBroncosにトレードされたFlaccoの場合は、既に2月にはその情報が報道されている。逆に言うなら3月18日になってもNewtonのトレード成立が報じられなかった時点で、トレードが困難なのは分かっていたはずだ。であればFA解禁と同時にすぐ彼をカットし、次のチャンスを与える方が望ましい。無駄に1週間もカットを引き延ばしたPanthersの行動こそが「最も失礼」な行為だったとFitzgeraldは述べている。
 とはいえベテランミニマムという金額が、リーグ平均並みの成績を残してきたまだ30代前半のQBに提示する額としてはかなり低いことも確かだ。過去にNewtonと似た事例としては、例えば昨年DolphinsからTitansにトレードされたTannehill、大怪我によって安いサラリーでの契約を強いられたBridgewater、闘犬に関与して有罪になった後でリーグに復帰したVick、同じく怪我などが原因で安い契約をしたWarnerなどがあるそうだが、それらの例から考えて歴史的に正しいNewtonの契約額は7ミリオンから8ミリオン、というのがFitzgeraldの考えである。
 にもかかわらずNewtonがミニマム契約を受け入れたのは「単純な経済」の問題。NFLでの価値を最大化するためには、成功する最良のチャンスがある場でプレイをすることが必要になる。1年間、控えとしてフィールドに出てこない状態を続けてもいいことはないし、むしろキャリアを終わらせることになりかねない。そうならない確率が最も高い舞台が存在したのがPatriotsだった。もし今年1年のサラリーを引き上げるためにもっと冴えないチームに行ったとすれば、例えばDolphins時代のCutlerのようにそれは袋小路に突き当たることを意味しかねない。
 逆にPatriotsで先発の座を奪い、チームを例えばプレイオフまで導けば、彼の前には再び高額サラリーへの道が開ける。現在NFLのベテランQBスターターは年平均30ミリオンほどの金額を手に入れることができる。来年以降、例えば4年で125ミリオンの契約を結ぶことができれば、今年を含めても年平均25.2ミリオンの5年契約を結ぶのと同じことになる。Patriotsでの1ミリオンの方が、長い目で見れば冴えないチームでの年平均8ミリオンよりずっと価値が大きい、というわけだ。
 加えて足元のリーグ全体におけるQBの需給問題も重要だ。正直言って今年のオフはQBの需給が極めて緩んでいた時期であり、だからこそ去年まで先発だったQBたちの多くが控えにしかなれない現象が生じている。だがこのオフには多くのチームでQBの席が空く、というのがFitzgeraldの見立てだ。例えば疑問の余地があるルーキー契約QBたち(Jones、Allen、Darnold、Lock、Mayfield、Haskins、Trubisky)、あるいはいつ引退してもおかしくない面々(Roethlisberger、Rivers、Brady、Brees)がおり、彼らのいるチームの全てではないとしても、いくつかは来年のNewtonに高額サラリーを払う気になる可能性がある。
 彼の見方に賛成しているのがFootball PerspectiveのChase Stuartだ。どうやらこの2人は、どちらもこの数年続いてきたNFLの「QB過剰」時代がそろそろ終わるのだと予想しているようである。

 本当にそうだろうか。個人的には確かに今までより需給はタイトになるとはいえ、いきなり10前後のチームでQBがクビになるほどのドラスチックな変化があるとまでは思えない。まずベテランたちのうち、1年契約のRivers以外は今シーズン終了後にカットすると高額のデッドマネーが発生する計算となっている。選手たちば自ら引退を決める場合を除き、そうそう簡単に切ることができる契約にはなっていない。
 ルーキー契約の選手たちの場合は、逆に安価なQBを切り捨てるというデメリットをチームにもたらすことになるわけで、そう判断したくなるほど酷い成績を残しているQBならともかく、そうでないQBをさっさと切れるかどうかは分からない。Fitzgeraldが名を挙げた若手のうち、今年いっぱいで契約が切れるTrubiskyはともかく、他の選手たちについてはもう少しきちんと調べておく必要がある。
 名前の出ている選手たちのうちLockは2巡だが残りは全員1巡指名であり、しかもHaskins以外の4人はドラフト全体トップ10以内での指名だ。ルーキー契約が安くなった2011年以降のドラフト上位指名QBたちを見ると、まずLockと同じ2巡指名のQBたちはLock以前に8人いる。うち2度目の契約で先発のチャンスを得た選手が過半数の5人。残る3人はGeno Smith、Hackernberg、そしてKizerだが、そもそもプレイの機会さえなかったHackenbergはともかく、SmithとKizerは1年目にANY/A+で67と76という残念極まりない成績だった。しかしLockのANY/A+は100とリーグ平均並み。今の時点で彼がそんなにhot seatにいるとは思えない。
 Haskinsと同じ1巡11位以下のQBも8人いるが、こちらは実は2巡QBより冴えない選手が目立つ。2度目の契約で先発にたどりつけなかったのが6人を占め、例外はまだ2度目の契約を迎えていないWatsonとJacksonだけ。加えて1年目のHaskinsのANY/A+は73と、Manziel(38)を除けば一番低い。といっても6人のうちBridgewaterとPonderの4人は2年目もまだ先発を続けられている。Haskinsが先発失格になる可能性はLockよりは高そうだが、絶対にそうなるというほどでもない。
 残る4人のうち、キャリアのANY/A+が97のMayfieldも先発失格の可能性は低いだろう。2年目までの成績が彼と同等以上だった選手10人のうち、3年目に半数以下の試合しか先発できなかったのは、怪我の影響もあったGriffinとLockerの2人だけ。問題はDarnold(89)、Allen(86)、Jones(88)の3人だが、トップ10指名で彼らと似た成績だったBortlesとTannehillの2人は3年目どころか4年目もしっかり先発を続けている。
 要するにトップ10指名のルーキー契約QBが、怪我ではなく成績を理由に先発を下ろされる可能性はほとんどないと考えていい。2011年以降にそうした憂き目にあったのはRosenと、後は3年目が終わったところでクビになったGabbertくらいだ。そしてこの両者の2年目までのANY/A+は80未満と極めて低い。Darnold、Allen、Jonesがそこまで成績を急落させるのならともかく、そうでなければチームは簡単には彼らを切らないのではなかろうか。
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