覇権の歴史

 NFLの歴史ネタ続き。Football OutsidersがDynasty Rankingsなるものを連載していた。一定のルールに基づいてDynasty Pointsなるものを算出し、このポイントが10点以上になっている全Dynastyのランキングをやろうという試みだ。そもそもDynastyという概念なんていい加減なものであることは前にも指摘している通り。ポイントを定め、定量的にDynastyを決められるようにすることで、少しは客観的に見られるものになるかどうかがまずは注目点だろう。
 実際、この計算には結構苦労したようだ。最初はBill Jamesが2012年に算出した野球のDynasty算出方式を活用したそうだが、結果はゴミ。何しろ1980年代のRamsですらこの基準だとDynastyに選ばれてしまうという。確かに彼らはよくプレイオフには出ていたが、優勝どころかSuper Bowlに出たことすらなかったわけで、要するにMLBのDynastyとNFLのDynastyを同じような計算で導き出すのは無理があるようだ。
 結果、この記事ではNFL独自の算出法を使っている。勝率0.8125以上で優勝すれば6ポイント、それより低い勝率での優勝なら5ポイントなどと点数をつけ、さらにDynastyがいつ終わったかについての計算法もMLBとは変更している。結果、このDynasty Pointsが10点以上あった過去のチームは延べ56に到達。各Dynastyの平均持続期間は6.9シーズンとなっており、単純に言うなら1シーズンあたり3.87チームのDynastyが存在したことになる。
 いくら何でもDynastyと呼ばれるチームが毎年4つ近くもあるのは多すぎないか、という意見はあるだろうし、記事中でもそれは認めている。こちらのツイートでは時代別にどのチームがDynastyだったかを図示しているのだが、1チームしかDynastyがなかったシーズンは1955年まで遡らないと存在しないし、例えば1970シーズンや1985シーズンなどは実に7つものチームがDynastyであった計算になる。存在するチームの4分の1がDynasty相当だと言われたら、さすがにDynastyの大安売りに見えてしまわないだろうか。
 解決策として当該記事の中では10ポイントではなく25ポイント以上のDynasty Pointsで足切りをする方法を提案している。この場合、100年の歴史上に存在するDynastyはたったの8つのみ。問題はそれでも1970年代に4チームが紛れ込んでしまう(Cowboys、Steelers、Vikings、Raiders)点にあるが、1970年代はチーム間の格差が激しかった時代なのでこうした傾向がどうしても出てしまうそうだ。逆に2000シーズンのようにDynastyが存在しない年もあったりするが、延べ56チームよりはDynastyらしいかもしれない。

 ポイント上位ではとにかく突出しているのがPatriotsの59点。さすが、19年間にプレイオフ17回、Super Bowl出場9回ととんでもない数字を積み上げただけはある。2番手に控えている1980-90年代の49ersが47点にとどまっているのを見ても、一種異様な数字なのは間違いない。何度も述べているが、戦力均衡のためのサラリーキャップ時代にこれだけの記録を積み上げられてしまったのは、リーグ全体としては屈辱と言ってもいいかもしれない。Dynasty Points以外に期間の長さ、優勝回数、DVOAなどのZ-Scoreを基に算出したランキングでも、Patriotsは20.45でトップだ。
 Dynasty Pointsで3番手(Z-Scoreだと4番手)のCowboysが一般に言われている90年代ではなく1966-1985となっているのも興味深い。要するにTom Landryの時代こそが彼らのDynastyだったという理屈だ。90年代も21ポイントと悪い数字ではないのだが、長く続いたLandryの時代の方が積み上げ型であるポイント上では大きかったのだろう。20シーズンにわたるDynastyは、ランキングの中では最長である。
 4~6位が比較的短いシーズンに優勝を複数回積み上げてポイントを稼いでいるのに対し、7~8位は割と長期にわたっているが優勝回数は少ないチームが顔を出している。Vikingsに至っては優勝ゼロだ。つまりDynastyと言ってもこうした2つのタイプがあると解釈することが可能。比較的いい成績を長く続けることでポイントを稼ぐか、短期に一気に優勝を積み上げてDynastyになるかであり、確かにそうしたタイプのチームはどちらも存在する。一般的なDynastyは優勝してナンボという評価が中心だが、前者のようなチーム(例えば1988-1995のBills)だって強いチームであったことは間違いない。
 逆にポイント下位にはどんなチームがいるのか。例えば10ポイントだった2008-2012のRavens。期間は5年で地区優勝はたった2回、Super BowlのチャンピオンはWildcardから勝ち上がった1回だ。エリートQBことJoe FlaccoがこのDynastyの一員という扱いになるわけだが、これをDynastyと呼ぶことには抵抗感がある人も多かろう。同じく1回優勝している2001-2005のSteelers。なぜこのタイミングでDynastyが切られてしまうのか不思議に思う人もいるだろうが、一応Cowher時代と位置付けることはできる。
 最もDynastyらしくないチームとしてすぐに理解できるのは2003-2007のSeahawksだ。全56Dynastyの56番目であるこのチームは優勝ゼロ、Super Bowlへの出場1、QBはHasselbeckと、普通に考えればDynastyだと思っている人などいそうにないチームである。Carrol & Wilsonが揃った2012-2016のSeahawks(13ポイント)の方がまだDynastyらしい。
 Dynastyポイントが少ないチームの中には、もはや現存していないところもいくつか混ざっている。1つは1924-1928のFrankford Yellow Jackets(10ポイント)。まだプレイオフルールも整備されず、試合数もチームごとにまちまちだった1920年代にフィラデルフィアにあったチームで、1回だけ優勝を成し遂げている。彼らは大恐慌のために運営が厳しくなって消滅。その資産は後にEaglesを創設する人物に売り払われたという。
 もう1つはCanton Bulldogsだ。NFLの創設以前からオハイオ州リーグの強豪として知られていた彼らは、1922-23シーズンにNFLで初の連覇を成し遂げる。だが財政難に陥ったためにチームはクリーブランドのプロモーターに売却され、1924年にはCleveland Bulldogsとしてまたも優勝を達成した。ただしこれはあくまで別チームであり、Dynastyの計算には入っていないようだ。
 この2チームを除いた延べ54のDynastyは全て既存チームが成し遂げている。つまり1つのチームが複数回にわたってDynastyを作り上げている事例が存在するわけだ。具体的には最も多いBearsとPackersが各5回、Giantsが4回、Rams、Colts、Chiefs、Steelers、Broncosが各3回のDynastyを経験している。一方、Texans、Panthers、Jaguars、Buccaneers、Bengals、Falcons、Jets、Cardinalsの8チームは10点以上のDynasty Pointsを積み上げたことがない。新しいチームの場合は仕方ない面もあるが、CardinalsのようにNFL最古のチームでそうなっているのは何とも物悲しい。
 重要なのはDynastyの回数ではなく、その期間かもしれない。少なくともその期間はリーグでもかなりの強豪として位置づけられていたわけだから、ファンとしては幸せな時期だっただろう。期間が最も長いのはTitle TownのPackersで、トータル38年に到達する。次がBears、Giants、Cowboysの26年。歴史の長い3チームに負けず期間の長いCowboysも大したものだ。
 その次にはBrowns、Chiefs、Steelers、Broncos、Patriotsの19年、Colts、49ersの18年、RamsとRaidersが各17年となっている。NFLの歴史のうち5分の1近くで強いチームでいられたのだから、彼らのファンもそれほど悪い思いはしていないはずだ。ただし、中にはDynastyだった時期が古いチーム(BearsやBrowns、Raiders)もある。今のファンにとってはあまり記憶はないかもしれない。
 それに、上に述べたDynastyのない8チーム、あるいはDynastyの期間が短いTitansやLions(3年)、Saints(5年)といったあたりのファンは、そもそも限られた期間しかいい思いをしていない。Dynastyが5年しかなくてもチームの歴史自体が短いRavensのファンならまだしも、長い歴史を経てもなかなかDynasty Pointsが積みあがらないチームが存在することは間違いない。
 たとえ完全な戦力均衡を成し遂げたとしても、ツキの偏りがある以上、成績のいいチームと冴えないチームが生まれることは仕方ない。ましてNFLの歴史において4分の3を占めるサラリーキャップ以前の時代は戦力均衡策もとても十分とは言えなかった。この手のデータは、そういう現実をある意味容赦なく浮かび上がらせているとも考えられる。
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