全時代オフェンス

 今回はあまり重くない話。Football Perspectiveに面白い記事があった。All-Time Offenseを選ぼう、という題名で、オフェンスの11のポジションについてそれぞれ異なる時代・リーグから選手を選んで1つのチームを作るというものだ。具体的にはこちらの表に載っている選手を選ぶのだが、特定の行からは1人を、列からは一番上に書かれている人数のみを選出することができる。
 具体的にはランアンドシュートオフェンスや、ゲーム終盤の時間つぶし向けオフェンスの例を見てもらいたい。どのように選手を選ぶべきか、直観的に理解できるだろう。ランアンドシュートなら00年代のManningをQBに、40年代のHutsonとAFLのAlworth、Flexに入っている10年代のClavin Johnsonと80年代のWinslowの4人をレシーバーに使い、ランアンドシュートのチームでワンバックをずっと続けてきた90年代のSandersも入れている。
 エントリーのコメント欄には読者による色々なチームが載っている。中にはそれを集計した人もいる。コメント欄にあった17チームのうち選ばれた回数が最も多いのはJerry Riceの14回で、以下Don Hutsonの10回、Peyton Manningの9回、Jim ParkerとRob Gronkowski、Mike Michalske、Forrest Greggの各8回、Anthony MunozとMel Heinの7回、といった感じで並んでいる。ポジション別や年代別に最もよく選ばれた選手も載っている。
 最も新しい2010年代の選手で人気なのはGronkであり、彼はまたFullback/Tight End枠でもトップだ。2000年代ではManning、1990年代ではRiceがトップとなっている。この辺りはおそらく理解しやすい選出だと思われるが、全員スキルポジションというのも面白い。逆に最も古い1920年代のMike Michalske、30年代のMel Heinの2人はどちらもOLであり、1950年代のJim Parkerも含め、ラインは古い時代の選手がよく選ばれている。
 なぜだろうか。NFL自体の変化が反映されている面はあるだろう。1970年代終盤からNFLのパスオフェンスは急速に進化をしており、特に足元では歴史的に見て極めて高水準なパスオフェンスが展開されている。逆に古い時代のNFLはパスよりランが圧倒的に多く、かつボールキャリーは多くの選手で分担されていたわけで、バックスを選ぶ場合は最近の選手に比べて魅力に乏しく見えてしまう。ラインの選手が古い時代から選ばれやすくなっているのは、消去法のせいかもしれないのだ。
 もちろん例外はいる。1940年代から最も選ばれているのはレシーバーであるHutsonだし、逆に1980年代からはTのMunozが選出されることが多い。特にHutsonの10回選出は驚異的だ。彼らが優れた選手であることに異論はないが、彼らが同年代から最もよく選ばれた理由を推測するのも面白そうではある。

 ちなみにFootball Perspectiveに載っている表と、NFLのAll-Decade Teamsがどのくらいダブっているかを調べたところ、ダブっている選手がやはり多い。直接はダブっていないとしても、表とは別のポジションで選ばれていたり(Dutch ClarkはQuarterbackで選出)、また表とは別の年代で選ばれている選手(Hutsonは1930年代のAll-Decade Teams選出)もいる。
 しかし各年代に必ず1人はダブっていない選手が入っている。例えば直近の2010年代においてはNick MangoldがAll-Decade Teamsに選ばれていない。有能な選手なのは間違いないのだが、プレイした時期が00年代に少しかかっているのが、もしかしたら選出されなかった一因かもしれない。
 00年代からはMarshall Faulkがダブっていない選手となっている。彼もまた2つのDecadeにまたがって活躍した結果、どちらの年代でも選ばれないという不運に見舞われた選手だ。また彼の場合、Flexという通常のAll-Decade Team選びでは存在しないポジションでの選出となっているところも影響している可能性はある。
 90年代では何といってもMarinoだ。彼は100周年のAll-Time Teamに選ばれているのに、なぜかAll-Decadeでは選出されたことがない選手である。QBで他に入っていない選手と言えば、QBというポジションが今とは異なる意味をもっていた1920年代のFriedmanくらいであり、Marinoの不選出がかなり異様であることが分かる。
 80年代になるとMarcus Allenが選ばれていない。こちらはFaulkと同じくFlexという当時は存在していなかったポジションに当てはめられているところから分かる通り典型的なRBタイプではなかったこと、及びキャリアは長いが目立ったピークがあまりなかったことがAll-Decade選外となった一因だろうか。
 70年代ではReceiverのHarold Jacksonがダブっていない選手だ。70年代からは同じHaroldでもCarmichaelの方がAll-Decadeに選出されているのだが、70年代に1st team All-Proに選ばれた回数を見ても、Pro Bowlへの選出数を見ても、Jacksonの方がCarmichaelより多い。JacksonではなくCarmichaelがAll-Decadeになっていること自体が謎であり、Football Perspectiveの選出はむしろ妥当に見える。
 60年代には2人、ダブっていない選手がいる。最初はRBとしてリーグ入りしたが途中でReceiverになったBobby Mitchell、そしてTEのMike Ditkaだ。前者のポジションは当時Flankerと呼ばれていたが、All-DecadeでFlankerに選ばれた2人はPro Bowl選出でも1st team All-Pro選出でもMitchellに劣っている。Ditkaに関しては同時代にJohn Mackeyという同様に優れた選手がいたのがダブらなかった理由だろう
 50年代はFrank Gatskiがダブっていない。1st team All-Proに4回選ばれた彼だが、Chuck Bednarikという超一流選手とダブっていたことが選出外となった理由だと思われる。だがその場合、Football PerspectiveがBednarikではなくGatskiを選んだ背景がよく分からない。何か事情があるのだろうか。
 40年代は最も多い3人のダブっていない選手がいる。このうちTのBruiser KinardとGのRiley Mathesonについては、1st team All-Proに何度も選出されており、むしろAll-Decadeに入っていない方が謎になっている。だがLarry Craigに関しては、Football Perspectiveが選んだ理由の方がはっきりしない。ボールキャリーがほとんどないのに3回もPro Bowlに選ばれた、つまり生粋のFBであったことあたりが評価の理由だろうか。
 30年代でダブっていないのはGのJoe Kopchaである。こちらは3年連続で1st team All-Proに選ばれているのが論拠になっているのだろう。30年代のAll-Decadeに選ばれながらFootball Perspectiveは選ばなかったGoldenbergはむしろ40年代になってからの方が活躍度が高く、もう一人のLetlowとの比較でどちらかと言えばKopchaの方がいい選手だと思われたのかもしれない。
 20年代のダブっていない選手のうち、Friedmanについてはこちらで色々と述べた。もう1人はVerne Lewellenという選手であり、20年代にローカル紙ではあるが4回1st team All-Proに選ばれている。確かに彼は20年代後半にラン、レシーブ双方で活躍したようで、そのあたりが理由でこの表に顔を出したのだろう。
 以上、Football Perspectiveの表を見ていると、意外なことにAll-Decade Teamに関する新たな疑問点が浮かび上がってくることになった。昔のAll-Decadeがどのように選ばれたのかについて詳しく知っているわけではないのだが、それが完璧な選出でなかったことは確かなんだろう。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント