ChiefsのOCであるBienemyがそういう話をしていたそうで、
ミシガン大がUSCを相手に圧勝したゲームで見せたプレイ がそれだ。スピンこそしていないものの、バックス4人がシフトした後にTBへのダイレクトスナップから中央へのダイブという流れは今回のSuper Bowlで見せたものとそっくりである。
だが実際にはこのプレイはおそらくもっと古くまで遡ることができる。バックス4人がスナップ前に一緒にシフトするというプレイは、かつて
Notre Dame Box という名前で呼ばれていたものだ。ツイッター上でもそう思った人が
いろいろ と
いたようで 、
掲示板 でもそうした話があった。
Notre Dame Boxは名前の通りノートルダム大のKnute Rockneが1910年代から使っていたテクニックである。wikipediaの説明にもあるが、基本的にはT-formationからBox formationと呼ばれるSingle-wingっぽいフォーメーションにシフトし、それからプレイを始める。前に
何度かSingle-wingがらみの話を書いた こともあって、私があのプレイを見た時に真っ先に思い浮かんだのもこの「Notre Dame Box」だった。
もちろん最近はこうしたプレイはほとんど使われることはない。今回も4th and 1というかなり特殊な状況下においてトリックプレイを投入しようとしたからこそこの手が使われたのであり、そうした状況でなければお披露目の機会はほとんどなかっただろう。古いプレイが完全に消え去っていないことを示す一例ではあるが、あくまで特殊な例と見た方がいい。
続いて
去年もやった のだが、カレッジQBたちの中のドラフト有力候補について、簡単にデータを見てみよう。候補は
こちらの記事 で紹介されている7人だ。左から試合数、パス試投数、そしてパス成功率。
Joe Burrow 38 945 68.8
Tua Tagovailoa 32 684 69.3
Justin Herbert 43 1293 64.0
Jake Fromm 43 983 63.3
Jacob Eason 29 782 59.8
Jordan Love 38 1125 61.2
Jalen Hurts 56 1047 65.1
成功率で見ると大きく3つのグループに分かれる。60%台後半のBurrowとTagovailoa、同半ばのHerbert、Fromm、Hurts、60%前後のEasonとLoveだ。このうち最後のグループは正直あまりお勧めできない。特にLoveは1000試投以上でこの数字ということは、成功率が実力を示している可能性がそれだけ高いと判断できる。まだ試投数が少ないEasonの方が上振れ確率は高そうだ(もちろん下振れ確率も高い)。
2番目のグループは手堅い指名だろう。3人とも1000試投近くかそれ以上のパスを記録しているのも、選ぶうえでの安心感につながる。年齢的にもこの3人はそろって21歳であり、上手く当たりを引けば長期にわたって活躍することが期待できる。敢えてこの中でランク付けするのならHerbertが最も堅実で、FrommとHurtsは少し慎重に考えた方がいいかもしれない。
トップクラスと見られるBurrowとTagovailoaは、ある意味対照的だ。前者は大学に5年いたことがあり、年齢的には23歳と有力候補の中で最年長。その割にパス試投は決してトップにはいないが、それでも高いパス成功率は魅力である。そのBurrowより高い成功率を記録しているTagovailoaだが、パス試投は有力候補の中では最も少なく、リスクもそれだけ高い。
去年に比べれば割とまとまった範囲に収まっているQBたちが多く、それだけローリスクで指名できそうな気もする。ただし去年の有力QBたちは(まだ1シーズンだけとはいえ)冴えない成績しか残しておらず、ANY/Aが最も高かったのが6巡指名のMinshewだったという残念な結果に終わっている。むしろ彼らを上回るだけの成績を残してもらわなければ、チームとしては割に合わない。
さらにESPNの記事では追加で3人の名を挙げている。
Nate Stanley 44 1155 58.3
Anthony Gordon 15 694 71.5
Steven Montez 45 1321 62.4
「その他」扱いの選手たちなので、あまり期待はできないのだろう。その中で最もまともそうに見えるのは、パス試投が多く成功率もそこそこのMontezだ。Stanleyはパス成功率が低すぎるし、Gordonはパス成功率は高いものの試合数もパス試投数も少ないためデータの信頼性に乏しい。もちろんこれらの選手たち、あるいはそれ以外の中に宝が隠れている可能性は残っているが、そこまで現時点で見抜くのは無理だ。
一方、QBを欲しがるチームとしてはどこが考えられるだろうか。Mock Draftで1巡にQBを指名するチームとして見かけるのはBengals、Dolphins、Chargers、Panthers、Raiders、Colts、Buccaneers、Patriotsといったあたり。ただしほぼ全会一致と言えるのはBengalsとDolphinsだけであり、残りは「諸説あり」状態。全体として1巡指名は3~4人といったところが想定されている。
言うまでもないことだがQBのドラフトは極めて重要だ。彼らを4年間安く利用できるだけではない。本当に超一流のQBであれば、大きな負傷をするか、引退の直前になるまでFA市場に出てくることはない。そうした選手は10年に1度出てくればいいレベルだ。超一流QBを長く使いたければ、ドラフトで指名するのがほとんど唯一の方法である。だからCardinalsのように2年連続1巡でのQB指名だって、個人的に間違いとまでは思っていない。
重要なのは、そのQBが超一流でないといつ判断し、いつ切り捨てるかだ。Super Bowl後に
Jason FitzgeraldがOver The Capで書いていたエントリー でも、NFLの問題は「平均的なQBに偉大なQBであるかのような支払いをする」点にあると書かれている。そこで挙げられているのはStafford、Carr、Goff、Garoppolo、Cousins、Brissettなど(個人的にはキャリアANY/A+が113のGaroppoloは外し、代わりに101のWentzを入れたい)。彼らを手元に残すのはキャップの無駄遣いだけにとどまらず、時間の無駄遣いにもなる。その意味ではドラフト自体もさることながら、本当はドラフト後の行動の方が大切なのかもしれない。
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コメント
ファン目線からでもハズレのQBだと苦行を強いられますから、チーム関係者だとなおさらな気が。
ハズレの可能性が高いクジを引くのが怖い。だから、平均的なQBでさえ年俸が高騰するのではないかと。
プレイしていないQBの能力がもっと顕現可できるか、そもそもクジの枚数が増えれば状況が変わるのでしょうが。。
2020/02/06 URL 編集
https://desaixjp.blog.fc2.com/blog-entry-1459.html
ハズレを恐れて今いる平均的QBに一流の金を払うというのは感覚としては分かります。でもやはりそれは無駄です。
無駄を避けたいのならルーキー契約のうちに複数のQBを1巡で指名する、くらいのことはしてもいいのではないでしょうか。
つまりクジの枚数を増やす方法です。実際にやっているチームはほとんどありませんが、Cardinalsのようにそれに近いことをやるところが出てきたことを考えれば、今後は変わってくるかもしれません。
2020/02/06 URL 編集
平均的なQBであっても、リーグ内では価値がある。故にサラリー高騰やむ無しに頷きつつ、でも、リーグ内の究極目標であるスーパーボウル制覇には、平均的QBでは足りない気がする。と、今年のMahomesの活躍で感じました。
でも、PHIファンとして、スーパー制覇したQBのFolesは、平年実績として「平均前後」だと思います。
数値化しにくいリーダーシップやモチベーター、本当にここ一番でのクラッチさ(レギュラーシーズン含めてのクラッチさの分析はここで読ませて頂いたので...)
興味深く、沼のようにもがきそうで、でも面白いです!(^^)/(^^)/
2020/02/07 URL 編集
それどころか平均以下のQB、Dilferや2015シーズンのPeytonだって優勝しています。
ですが優勝している回数が多いのは結局のところ一流QBです。MahomesだけでなくBrady(6回)、Wilson、Rodgers、Brees、Roethlisberger(2回)、そして2006シーズンのPeytonらがそれに当たります。
確率の高いQBに大金を投じるのは理屈に合いますが、決して高くないQBに大金を投じるのが合理的かというと、私はそうは思いません。
なお数値化できない価値については、個人的には考慮に入れない方がいいと思っています。少なくとも、誰にも証明できない命題に時間を割くようなGMに贔屓チームを率いてもらいたいとは思いません。
Eaglesのように「アメフトのあらゆる側面で他のNFLチームと同程度あるいはそれ以上の度合いでアナリティクスな意思決定を行っている」チームの方が、数値化できない理屈を持ち出すチームのフロントよりずっと信頼できると思います。
https://overthecap.com/examining-nfl-draft-capital-in-2019-looking-ahead-to-2020/
2020/02/08 URL 編集