前にラアルプ将軍が味方の誤射で死んだという話がどこから出てきたのか分からないと書いたが、ようやく判明した。この説の大元は他でもないナポレオンである。彼がセント=ヘレナでモントロン相手に話した中に、誤射について触れた部分があったのだ。
「ラアルプ将軍は何人かの幕僚士官と伴に幕営地を離れ、最も近い農家でちょうど現れたばかりの[敵]部隊の戦力に関する情報を集めた。真夜中の1時間後、出発時とは異なる道を通って司令部へ戻る際に、彼は歩哨に撃たれ、いつも彼に愛着を持っていた彼自身の兵たちの銃弾によってその場で殺された。兵たちはこの致命的な失敗に驚愕した」
Memoirs of the History of France During the Reign of Napoleon, Historical Miscellanies. Vol.I"http://books.google.com/books?id=fGguAAAAMAAJ&printsec=frontcover&dq=editions:0wBDpzpsnMM-mNPwVFv" p6
ただ、これはあくまでラアルプが死んでから20年ほど後になされた証言でしかない。戦闘直後に出した総裁政府への報告書にはラアルプが誤射で死んだと書かれていない点については、以前にも指摘した(Correspondance de Napoleon Ier, Tome Premier"http://books.google.com/books?id=CRUgu6Jko2kC&printsec=frontcover&dq=editions:05jFK2FN_8eB6Kgd" p250)。
また、戦闘当日にラアルプが戦死したとの情報をダルマーニュ、ムナールがボナパルトに伝えているが、そこにも味方の誤射で死んだとは一言も書いていない(Correspondance inedite officielle et confidentielle de Napoleon Bonaparte, Tome Premier"http://books.google.com/books?id=UlwuAAAAMAAJ&printsec=frontcover&dq=editions:0heAS__6mZ0FUksPhMU" p140-141)。
ナポレオンがなぜモントロン相手に誤射説を言い出したのか、その理由は不明だ。ただ、現時点ではラアルプが誤射によって死んだと判断するには根拠が乏しすぎると思われる。さすがに20年後に出てきた証言だけでは無理があるだろう。
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