もっともこの試合だけに限って言えばTitansの方が効率的なパスオフェンスを展開していた。前の試合で大幅に低下したTannehillのANY/Aは、この試合では8.00と急回復。HenryのTDパスも含めたTitans全体のANY/Aは8.94ととんでもない数字に達している。数字的にはパスを抑え込んだPatriotsディフェンスに比べ、Ravensディフェンスは全く対処できていなかったことになる。そしてそのRavensオフェンスを担うJacksonのANY/Aは4.37と、
レギュラーシーズンのHaskins(4.25) 並みのパス効率にとどまった。
EPAでも如実に差が出ている。
EPA box scores によるとTitansのパスEPAは1プレイ当たり+0.22に対し、Ravensは-0.08と明白に差がついた。特にRavensの1st & 2nd downのパスは-0.17とかなり残念な状況であり、これまでチームを大いに助けてきたJacksonのパスがむしろ足を引っ張っていたことが分かる。
一方、残る3試合はいずれもホームチームが勝利。
Pythagenpat勝率 で見ても高い方が勝っているわけで、さすがにそう何度もアップセットが繰り返されることはなかった。ただし、今シーズンのうちに優勝した方がいいと言及した4チームのうち生き残っているのはPackersのみ。ツキは永遠に続くわけではないのだが、さて残る2試合もなお幸運の女神は彼らに微笑んでくれるだろうか。
面白かったのは、Judgeを選んだ際に行なわれた会見の中で
GiantsのGM、Gettlemanがまたいらん発言をした こと。曰く「みんな[NFLを]パッシングリーグだという。それは知っているが、[パスオフェンスで]トップ4のチームはプレイオフに進んでいないし、トップ4のラッシングチームはプレイオフにいる」。そりゃ当然だ。強いチームは勝ちそうになればランを増やすし、逆に弱いチームは負けそうになればパスを増やす。相関は因果に非ず、という当たり前の話である。
あと、これは完全に場外乱闘だが、ワイルドカードラウンドの結果を見てAntonio Brownが
「これこそAntonio Brown Curseだ」 と煽っていた。確かに
こちらで指摘されている 通り、彼がいたことのあるSteelers、Raiders、Patriots、そして彼のワークアウトを行ったSaintsはまあ関与していたと認めてもいいが、さすがにbillsはとばっちりな気が。
最後に、そういえばまだ今シーズンはまとめていなかった
ドライブ指数 を載せておこう。左からオフェンス、ディフェンス、両者の差となる。
Patriots 63.1 48.8 +14.3
Ravens 69.5 57.5 +12.0
49ers 65.6 54.6 +11.0
Saints 66.3 58.1 +8.2
Cowboys 66.7 61.1 +5.6
Chiefs 66.8 62.0 +4.8
Bills 58.7 55.6 +3.1
Raiders 63.3 60.9 +2.4
Chargers 63.9 61.6 +2.3
Rams 61.6 59.5 +2.1
Vikings 61.8 60.1 +1.7
Eagles 60.0 58.4 +1.6
Seahawks 62.7 61.2 +1.5
Buccaneers 61.2 60.2 +1.0
Falcons 64.6 63.9 +0.7
Packers 61.0 60.7 +0.3
Texans 63.8 63.7 +0.1
Titans 59.7 59.7 0
Browns 59.9 60.7 -0.8
Colts 60.2 62.7 -2.5
Lions 59.9 62.5 -2.6
Panthers 58.5 61.4 -2.9
Steelers 54.0 57.1 -3.1
Bears 56.7 60.0 -3.3
Broncos 56.2 61.2 -5.0
Bengals 57.5 63.2 -5.7
Giants 57.1 63.2 -6.1
Jaguars 57.8 64.0 -6.2
Cardinals 59.3 65.9 -6.6
Jets 50.9 59.1 -8.2
Dolphins 55.8 65.7 -9.9
Redskins 54.2 65.7 -11.5
トップ7チームのうち6チームはプレイオフにたどり着いているのだが、唯一Cowboysだけは届いていない。彼らがいかに不幸だったかを示す一例だろう。一方、届いたチームの中でも冴えない数字なのがTexans、Titans、Packersあたり(リーグのほぼ真ん中)。驚いたことに彼らのうちまだ2チームがプレイオフで生き残っている。今年はもしかしたら波乱の展開なのかもしれない。
逆に下位を見るとドラフト全体1位を手に入れたBengalsは、実はそこまで酷い成績ではなかったことが分かる。むしろヤバいのはRedskins、Dolphins、そしてJetsあたり。Redskinsはオフェンス、ディフェンスとも下から3番手と全体に悪く、Dolphinsもそれぞれ4番手、2番手と、いずれもバランスよくダメな成績を残している。そしてJetsだが、ディフェンスは上から8番手とむしろ優れた結果だったのに、オフェンスがぶっちぎりの最下位と悲惨なことになっているのが低迷の原因。逆に言えば問題が分かっているので課題解決しやすいとも言えるのだが、さてその問題がDarnoldである場合、そんなにうまく解決へと向かうことができるだろうか。
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コメント
突っかかります(>_<)
Titansの勝利はラン獲得ヤードがパス獲得ヤードの約2.5倍のスタッツでしたし「パス効率が...」と言われるのは「えー?」と思うのですがどうなのでしょう?
レーティングとか分析基準って全ての状況を網羅した完璧なものではなく、一般的な(パスなら120~350ydsくらい?感覚論ですが(^-^;)範囲のモデル化だと思うので、パス100yds未満、ラン180yds以上とかだと分析の役にならなさそうに思うのですが、どうなのでしょう?
逆に言えば、たまたまをもってラン優位と言うのも浅はかで早計と思いますが、TitansとHenry、試合も面白いですしどこまで行けるか注目します(^-^)
2020/01/15 URL 編集
この試合だけに限ればTitansのパスEPAが3.94、ランEPAが7.50とランの方が得点期待値への貢献が大きかったと主張できるのは確かですし、それも一理あるでしょう。
https://www.pro-football-reference.com/boxscores/202001110rav.htm
ただ個人的にはTitansが先行してリードを奪った前半の成績が重要だと思っています。
Henryの前半成績は11キャリーの56ヤード、0TD。
それに対してTannehillのパスは11回のドロップバックで71ヤードゲイン、2TDでした。
EPAにすると前者は+0.8、後者は+2.6となり、つまりTannehillの方がHenryの3倍以上の得点貢献度があったことになります。
チームがリードを奪い、戦いを優位に進めるうえで役立ったのは、ランではなくパスでした。
Henryが馬車馬のように働かされたのはゲームの後半、リードを維持しながら逃げ切る局面です。
もちろん彼の仕事も大切ですが、Tannehillの貢献は決して無視できるようなものではないでしょう。
2020/01/15 URL 編集
ただ、統計分析ではイレギュラーにはミスリードのリスクが高い、統計分析のモデル化ではイレギュラーを削って実施するのがセオリーと言われるのを鵜呑みにしていて、先のTitansオフェンスのランとパスの獲得ヤードをテレコにしたような結果は、統計分析のサンプルからは弾くべきに思いますし、分析結果(レーティング)を信用するのも危険に思うのですが、どうなのでしょう?
2020/01/17 URL 編集
終わった試合を分析するうえでは、例えば母数の小さいターンオーバーが試合結果に大きな影響を及ぼすこともあります。母数が少ないからといってターンオーバーが敗因ではない、とするのはむしろおかしな話でしょう。
試合の結果にはTannehillの貢献がありました。それは事実であり、むしろ否定する方が変です。彼は、少なくとも「この試合だけに限って言えば」高いパス効率を記録したのです。
要するに1試合とか1シーズン単位なら、母数の少ない現象(偶然)が勝負を決めることもあるってことです。
逆に言うなら、私はTannehillが有能であるとか一流になったとか言うつもりは全くありません。
そもそも彼が「覚醒」したとも思っていません。単に幸運だったか、OCをはじめとしたコーチングスタッフとの食い合わせがいいだけだと思います。
長い目で見れば彼の今シーズンの成績はおそらくシグナルではなくノイズでしょう。
それでも特定の試合の中で効率的なパスを投げれば勝利の確率は高まる。それを示す一例がこのプレイオフでも見られた、というだけのことにすぎません。
2020/01/18 URL 編集