NFLのプレイオフ、ワイルドカードラウンドは
ワイルドカードらしくアップセットが続出 した。ホームで勝ったのはTexansのみ、それもOTでかろうじて。もちろん全試合1ドライブ差以内ではあったのでunderdog側も簡単に勝ったとは言えないが、なかなか面白い展開であったのは確かだ。
個人的に1番驚いたのはSaintsの敗北。いやもちろん
Pythagenpat勝率について触れた際に指摘している 通り、彼らが実力以上に勝率に恵まれていたのは間違いない。Pythagenpat勝率で見た場合、Saintsの期待勝率(0.687)はVikings(0.682)とほとんど変わらない。それでも僅かとはいえ期待勝率はSaintsの方が上だったし、このゲームは彼らのホームで行われた。シーズンANY/AでもBrees(8.33)の方がCousins(7.73)より高いし、ディフェンスではVikingsの方が上とはいえ、この状況があればSaintsに勝つチャンスは十分あっただろう。
だが実際の試合においてはBreesよりCousinsの方が効率のいいパスオフェンスを展開していた。前者のANY/Aが7.64に達していたのに対し、後者は4.22。Taysom Hillの50ヤードパスを含めてもSaintsのANY/Aは5.46にとどまっており、このデータを見る限りVikingsの勝利は不思議でも何でもない。実のところ、ワイルドカードの4試合のうち、ANY/Aで負けていたチームが勝利したのは1試合しかなかった。
その1試合とはTannehillが72ヤードしか稼げなかったTitansとPatriotsのゲーム。パスの冴えない数字にもかかわらずTitansが勝てたのは、ランオフェンスがトータル201ヤードと爆発したことが理由だ。何しろ1プレイ平均獲得ヤードでラン(5.0)がパス(4.8)を上回ったくらいで、TannehillではなくHenryこそが勝利をもたらしたのは間違いない……と言い切るのはちょっと待っておこう。
一方でBills、Saints、Eaglesという負けた3チームはいずれもパスオフェンスのEPAがマイナス(Pro-Football-Reference)になっており、パスでの敗北がチームの敗北と直結している。さらにEPA box scoreではPatriotsもパスEPAがマイナスとなっており、つまりワイルドカードはパスで得点期待値を下げてしまったチームが全敗したことになる。改めて言うまでもないが、やはり今のNFLはパッシングリーグであり、QBの出来が勝負を決めることが多い。
そしてQBの出来は1試合程度の母数だとかなりぶれる。Breesの低い数字もそうだが、Tannehillもレギュラーシーズンではリーグ最高のANY/A(8.52)を記録していたのに、この試合では2.63という、レギュラーシーズンでリーグ最低だったHaskins(4.25)を遥かに下回る数字を残した。もちろんTannehillの今シーズンはできすぎだと思うし、長続きはしないと考えられるが、それにしても極端な違いではある。
この結果、ディヴィジョナルの組み合わせはVikings @ 49ers、Titans @ Ravens、Texans @ Chiefs、そしてSeahawks @ Packersとなった。最後の試合はPythagenpatで見て幸運に恵まれまくったチーム同士の組み合わせであり、つまりこの2チームのうちどちらかはNFCのチャンピオンシップまで出られるわけだ。彼らとTexans、Saintsの4チームについては
「このポストシーズンで何としてでもリングを手に入れた方がいい」 と指摘しておいたが、まだ3チームがその可能性を残しているのは立派と言えよう。
ちなみに
シーズン前の予想 と比較すると、Football Outsidersが優勝確率のトップと2位に置いていたSaints、Patriotsは既に消えた。彼らはESPNのFPIによる予想でも2位と3位に、FiveThirtyEightの予想でも1位と3位に並んでおり、今シーズンのfavoriteたちだったわけだが、割と早く消え去ったことになる。あと残っているのはFPIの1位予想であり、FiveThirtyEightの2位予想に入っていたChiefs。しかし彼らは現時点での1番人気ではない。
現時点でSuper Bowl優勝の最右翼に上がっているのは、いずれのサイトでもRavensだ。そして
Pro-Football-ReferenceのSRS でもトップにいるのは彼らであり、Pythagenpat勝率が最も高いのも彼ら。というわけで現時点ではJackson率いる彼らが優勝に最も近いと思われている。もし彼らが勝ったとしたら、1994シーズンのSteve Young以来となる「QBのラッシングリーダーが優勝」という展開が期待できる。と言っても当時のYoungのラン記録はたったの293ヤード。今シーズンのJacksonは桁違いだ。
さてPatriotsファンとしてはシーズンが終わったところで次のシーズンを考えたい。特に問題はBradyの処遇。
Belichick自身はまだ考えていないと韜晦している が、まあこれはいつものこと。それに彼がどう行動するかを事前に予測するのは難しい。だから実際にチームがどう考えているかとは関係なく、勝手に思うことを並べておくとしよう。
今シーズンのBradyはANY/Aでかろうじてリーグ平均を上回ったレベル。逆にいればリーグ平均並みのQBという成績は残したわけで、
このレベルのQBを手に入れるのは実は簡単ではない 。もし今でも彼がリーグ平均並みの成績を残せる力を持っているのなら、そして来シーズンもその水準を維持できるのなら、安易に彼を手放すのがいい方法だとは言えなくなる。
だが彼に対して今シーズンと同じ23ミリオンを払うのはやり過ぎだろう。以前
Over The Capがまとめていた が、ベテラン先発QBの下限に近いところ(去年のオフで言うならFolesあたりの契約額)のQBたちは、基本的にルーキー契約上位たちと比べて低い成績しか残せていない。ルーキー契約の面々との戦いを考えるならもっと安い値段、少なくとも10ミリオン台半ば以下に抑制した契約でないと、採算に合わなくなる。
Bradyがその契約に応じるならその水準で実質1年契約(void yearの活用もあり)を結び、そのうえで彼に先発を任せつつ、Stidhamあるいは新たに指名したQBの成長を待つという選択が出てくるだろう。もしStidhamや新たなQBが十分使えると考えているのなら、いつでもそちらに切り替える方針で臨むのがいい。もし彼らが使えないと判断したのなら、仕方ないが43歳のBradyにもう1年頑張ってもらうしかなくなる。
もし
今シーズンのBradyの成績は怪我のせい であり、治ればもっとやれると見ているのなら、もう少し高い金額を提示することもできる。それこそFoles並みの実質1年契約を結び、そのうえで今シーズンのGaroppoloやRodgersあたりの成績を期待するという方法だ。昨シーズンまでに比べるとコストパフォーマンスは下がってしまうが、今シーズンよりは上向く計算になるし、ディフェンスを含めた他のポジションをうまく強化できればプレイオフ争いに参加することもできるだろう。
だとするとここは無理をせずにFAとして出て行ってもらい、代わりに補償ドラフト権をもらうのがいい。BradyがベテランQBとしてありがちな契約額(20ミリオン強)でどこかに行けば、3巡の補償ドラフトは確実だろう。
Brady自身は引退する気はなさそう であり、Patriotsとの再契約が上手くいかなければどこか別のチームに先発の機会を求めに行く可能性は十分ある。きちんと補償ピックを手に入れ、来年のドラフトを充実させるべきだろう。
最悪なのはBradyの今シーズンの成績が実は
「魔法の杖」 によって過大に膨らんでいたというケースだ。このチームはかつて
並以下のCasselに並以上の成績を上げさせたことがある 。もしかしたら既にBradyは平均並みではなく平均以下のQBになっているかもしれないのだ。だとしたら彼については放出以外の選択肢はなくなる。この状況においてStidhamが使い物にならないと判明したりすれば、事態は最悪になる。
リーグイヤーが終わる3月18日までにチームがどんな動きを見せるかで、彼らのBrady及びStidhamに対する考えが見えてくるだろう。何らかの形でBradyと再契約した場合、チームはまだ彼に利用価値があると見ていることになる(本当にそうであることを祈る)。彼がFAで出て行くのを黙って見送る場合、Bradyがもはや採算の合わない選手になったことが判明する。さてどちらになるのか、ここは興味を持って見守りたい。
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