Chase Stuartが指摘しているように、finalistに選ばれたメンツを見るとNFLはAll-Time Team選出にあたってリーグ発足から15年間を完全に、そして第2次大戦以前をほとんど無視している。第2次大戦以前の25年間にプレイした選手でfinalistに入っているのはBaughとLuckmanだけ。もちろん当時は圧倒的にパスよりランが中心だった時代であり、そもそもQBというポジション自体ほとんど確立していなかった(当時のQBはほとんどブロック専門家)。QBがパッサーとしての役目を中心に担うようになったのが1940年からだと考えれば、それ以前の選手が無視されるのは仕方ないのかもしれない。それにBaugh以前のパッサーで本当に無視できないのはFriedmanくらいだと個人的には思う。
一方、マニア代表とも言えるFootball Perspectiveでは、MontanaとBrady以外の
有力候補を4人もしくは5人掲げているのだが、そのうち2人は1960年より前に引退した選手だ。根拠は、まず1969年に選ばれた50周年のAll-Time TeamでUnitasとBaughが、1994年選出の75周年All-Time Teamで彼らの他にGraham、Montanaが選出されたことにある。彼らに加えて誰が見ても文句なしであるPeyton Manningを含めると4人。そこに後はMarinoを加えるかどうか、というのがFootball Perspectiveの見解だ。
既に決まった選手と有力候補のキャリアAY/A+を調べると以下のようになる。Montana(118)、Brady(115)、Baugh(118)、Graham(129)、Unitas(111)、Manning(116)、そしてMarino(112)。もちろんAY/Aを基準に選んだわけではないだろうが、パス効率という切り口だとこのメンツの中ではUnitasとMarinoが少し微妙な成績、ということになる。ただしMarinoはANY/A+だと119というすさまじい数字をたたき出すことも事実。一方、UnitasのANY/Aは分からないのだが、以前も書いたが彼と同時代のQBならStarrやDawsonの方がパス効率は上、キャリアの長さではTarkentonの方が上になる。
他にもBaughを入れるべきかLuckmanにすべきか問題(前者の方がキャリアは長いが後者の方がパス効率は随分高く、優勝回数も多い)、GrahamのAAFC時代の成績はどう評価すべきか問題(NFL時代に絞っても彼のパス効率の高さは突出しているが、ボリュームがかなり減ってしまう)、Montanaの時代はぶっちゃけライバルがいなさすぎたのでは問題(彼だけ選出ハードルが低すぎる可能性がある)、21世紀にはPeytom Branning以外にもいいQBが大勢いるじゃないか問題(BreesとRodgersはfinalistに滑り込んだがそれだけでいいのか)など、けちをつけ始めればいくらでもできてしまう。
だからこそファンがああでもないこうでもないと話をするテーマとしてふさわしいのだろう。もちろん最終的にはNFLが公式に選んだロースターとしてQBが10人、名前を連ねることになるのだが、それとは別に個々人が「自分の選ぶNFL100のQBロースター」を考える余地はいくらでもあるわけだ。Football Perspectiveでも、コメント欄やツイッターで議論をするためのネタとしてこの話を集中的に取り上げていると思われる。
以上を踏まえ、以下はあくまで私個人の選ぶNFL100のQBロースターとなる。まずファン投票のトップ3であるMontana(1980年代)、Manning、Brady(どちらも21世紀枠)は当然入るだろう。後は時代ごとのバランスを考えてYoung(1990年代)、Staubach(1970年代)、Graham(1946-55年)までは入れておきたい。そしてfinalist入りしていない選手の中で絶対に投入したいのがFriedman(1927-34年)。これで7人だ。残るは1940年代から60年代までのGraham以外の選手をどう選ぶか、そして時代のバランスとは関係なく投入すべきQBが誰になるかが問われる。
後者の枠としてMarinoは入れておきたい。Montana、Youngに匹敵するパス効率を誇った彼を、単に優勝経験がないという理由だけで外すのはさすがにもったいないだろう。また1940年代を代表するBaughとLuckmanのどちらも入っていないトップ10には意味がないと思う。Baughのパス効率が下がったのは30代後半に入ってからの成績低下の影響であり、Luckmanの引退と同じ34歳までの成績で見るのならLuckmanより高いAY/A+を記録しているので、そう考えればやはりここはBaughを入れるのが正しいのだろう。
残るは1人で、できれば1950年代から1960年代あたりを中心に活躍した選手を入れたいところ。finalistの中から候補者を選ぶのならLayne、Van Brocklin、Unitas、Starr、Tarkenton、Namathあたりが入る。プレイのボリュームで言えばTarkenton、Unitasが、パス効率ならStarr、Van Brocklinなどが上位に来るのだが、実のところTarkentonもUnitasもAY/A+で見る限りパス効率はそんなに悪くない。Namathの評価は難しいところだが、
彼の全盛期と言える1965-74年におけるANY/A(推測含む)はTarkenton、Jurgensenに次ぐ3番手となっている。100年間のトップ10に置くうえで十分な評価とまでは思えない。
そう考えるとリーグ50周年及び75周年の双方でAll-Time Teamに入っているUnitasを選ぶのはおかしくないように思える。というわけで私が選ぶAll-Time TeamのQBたちはBenny Friedman、Sammy Baugh、Otto Graham、Johnny Unitas、Roger Staubach、Joe Montana、Dan Marino、Steve Young、Peyton Manning、Tom Bradyという並びになる。finalistに入っていないFriedmanを外さなければならないのであれば、その場合はBrady同様にキャリア末期に入ってほとんど評価が固まりつつあるBreesを選ぶか、あるいはStarrとVan Brocklinのどちらかで迷うところだろう。
もちろんこれはあくまで個人的な選択にすぎない。私のように時代ごとのバランス重視で選ぶこと自体が間違いという判断もあるだろうし、パスのデータよりも勝ち負けや優勝を重視すべきという人がいてもいい。できればランの能力も含めて考えたいという意見があったって構わないし、実際に見たことのある選手以外は評価しないという判断にも一理ある。
QB以外も議論のテーマになり得る。例えばOLBとILBが同数の選出でいいのかとか、GとTが7人ずつなのに、Cが4人というのは不公平ではないかなど、選出数そのものについて問題を指摘することだってできる。もちろんあの選手がいないとか、この選手を入れるべきといった話もOK。個人的には、なぜこの時期にほとんどの選出を終えてしまったのかという点に疑問を呈したい。どうせならシーズンが終わった後にfinalistの中から最終ロースターを選ぶようにした方が、話題提供になったのではなかろうか。
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