2019 week16

 NFLは第16週が終了。AFCはこれで全地区の優勝が決まったのだが、Patriots、Ravens、Texans、Chiefsと全ての地区で前年と同じチームが優勝した。ちなみにTexansは最近5年で4回、Chiefsは4年連続、そしてPatriotsは11年連続の地区優勝である。
 また両カンファレンスとも現地土曜日の試合が終わった時点でプレイオフの枠がそれぞれ5つまで決まり、シード順争いを除けば残るのがAFCではSteelersとTitans、Raidersのワイルドカード争い、NFCではEaglesとCowboysの東地区優勝争いだけに絞り込まれた。
 そのTexansが地区優勝を決めた反対側のサイドラインではWinstonが今シーズン6度目のPick 6を記録。過去にシーズン6つのPick 6を決めた、もとい決められた選手と言えば、2001シーズンのPeyton Manningと、1966シーズンのRudy Bukichの2人しかいないわけで、かなり珍しい記録と言える。
 2001シーズンのManningの場合、第2週のBills戦でPick 6を食らったのが始まり。翌週のPatriots戦で2つのPick 6を受けた後、byeを挟んで第5週のRaiders戦でも1つのPick 6を記録した。さらに第11週の49ers戦、12週のRavens戦でも1つずつPick 6を取られ、合計で6つのPick 6となった。ちなみにManningのインターセプト数は全体で23と、Trent Green(24)に次いで2番目に多かった。
 今シーズンのWinstonはこの時のManningより残念な状況だ。インターセプト数は全体で28に達しており、これまでEliが持っていた2010年代の最悪記録(2013シーズンの27)を1試合残してすでに上回っている。それ以前に遡れば2005シーズンにFavreが作った29インターセプトという記録があるのだが、もし最終週にこれを上回ったりすれば1988シーズンのTestaverde以来となるシーズン30以上インターセプトが見えてくる。
 Pick 6について言えば、まず開幕週の49ers戦でいきなり2つのPick 6を記録。続いて第4週のRams戦でも1つ取られた。次は第11週のSaints戦で、その次が第14週のColts戦、そして今週だ。Manningがこの記録を作った時のColtsは6勝10敗と大きく負け越したが、彼より多いインターセプトを記録しながらなお7勝を記録している今シーズンのBuccaneersは、ある意味凄いと言える。
 両チームは他にも似ている点がある。オフェンスが上位なのに対してディフェンスが残念なことになっているのだ。2001シーズンのColtsは得点・ヤードともオフェンスはリーグ2位だったが、ディフェンスはそれぞれ31位と29位だった。今シーズンのBucはオフェンスがどちらも3位、ディフェンスが30位と15位だ。しかしそう見えるのはあくまで得失点やヤードで見た場合。EPAだとColtsディフェンスがリーグ30位なのに対し、Bucsは9位とむしろリーグ上位だ。
 つまりManningがどうしようもないディフェンスを引っ張って勝とうと無理をした結果のPick 6であるのに対し、Winstonはしなくていい無茶をして失点を重ねた結果としてディフェンスの足を引っ張っている、と解釈できる。リーグ最多のパスFirst Downを記録するなど、相変わらずWinstonのFDを稼ぐ能力は高いし、見ている分には楽しいQBであることは確かなのだが、いくら何でも代わりに失うものが大きすぎるのではなかろうか。
 リスクとリターンはトレードオフの関係にあることは確かだが、その両者をいかにうまくトレードし、リスクを抑えつつ最大のリターンを得るように取り組むのが彼らの仕事だ。残念ながらBucsはそこを上手く回せていない。チームは彼との契約を延長したいと考えているようだが、問題はいくらで契約するか。かなり安いのならともかく、フランチャイズタグや同等の金額で引き留めるくらいなら次へ進んだ方がいいと個人的には思う。

 そして来週はいよいよ2019シーズンの最終週を迎えるわけだが、プレイオフへ向けた生き残り直接対決というゲームはなし。もちろんAFC、NFCとも最後に残った椅子取りゲームはあるのだが、参加者がそれぞれ別のチームと試合を組まれている状態。そのため、SNFに選ばれたのは「プレイオフ生き残り」ではなく「シード順争い」となる49ers @ Seahawksだった
 というかこのゲーム以外に選択肢はなかっただろう。49ersは勝てばシード1位が決まるし、負ければワイルドカードが決まる。他のゲームの結果が影響するのは引き分けだった場合だけだ。NFLにおいて引き分けは滅多に起きないことを踏まえるなら、リーグがこの試合をSNFにするのは当然だと思う。Seahawksが勝った場合は他のゲームの影響でシード順が変わるものの、「ワイルドカードか地区優勝か」という選択は他のゲームと無関係に決まる。
 それにしても最終週を控えた時点で、NFCのシード順争いはかなり凄いことになっている。全体1位の可能性が残っているのは49ers、Packers、Saints、Seahawksの4チーム。いずれのチームもシード3位以下に落ちる可能性があり、つまり未だにfirst-round byeのチームも決まっていない状態だ。NFCでシード順が決まったのはVikings(6位)だけである。
 最終週のゲームを見ると東海岸午後1時からのゲームでPackersとSaintsが、4時25分からEaglesとCowboysが出てくる。後者はシード4位をめぐる単純な争いのため、特に問題はない。前者のゲームでPackersが負け、Saintsが勝てば、Packersの3位が決まるが、一方でSaintsが負ければその時点でPackersのbye獲得が決まる。おもしろいことに、Saintsにとって自分たちが負けた場合はむしろPackersに勝ってもらった方が望ましい。もしPackersも負ければ、その時点でSaintsのシード3位が決まるのだが、Packersが勝ってくれればまだシード2位の可能性が残るからだ。
 いずれにせよシード順争いが最後までもつれるNFCに対し、AFCはその意味ではおもしろみに欠ける状況。既にRavensは全体1位が決まっていて主力を休ませると言われているし、またBillsもシード5位が確定している。Patriotsはシード2位のために勝つ必要があるが、最終週のゲームのオッズはかなり一方的に有利だとされている。そしてシード3位と4位にはあまり違いがないと考えるなら、Texansもあまり最終週に無理をする必要はなくなる。
 午後1時からのゲームがあるBills、Patriots、Chiefsのうち、後者2チームはまじめにやる可能性はあるが、Patriotsが一方的な展開に持ち込めばChiefsが途中から手を抜くこともあり得る。4時過ぎのゲームではRavensが既に主力を休ませる予定だし、Texansにとっても無意味なゲームになる可能性はある。そしてAFCのこれらのチームが手を抜いた場合、残る最後の椅子を巡る争いにそれが影響を及ぼす可能性が出てくる。
 現在AFCのシード6位を争っているのはTitans、Steelers、Raidersだ。彼らの生き残り条件はFooball Perspectiveが細かくまとめている。最後はStrength of Victoryにまでかかわる可能性があるという、なかなかの混戦に見えるのだが、彼らの対戦相手が手を抜くようならせっかくのおもしろみが失われてしまうかもしれない。そしてこの3チームの内Steelersの相手は主力を休ませるRavensであり、Titansの相手は同じことをする可能性があるTexansだ。
 普通に対戦した場合、プレイオフチームとアウェイで対戦するTitansとSteelersは敗北する確率が高い。またRaidersの生き残りに欠かせないColtsの勝利だが、対戦相手がJaguarsなのでこちらも可能性は十分。RaidersがアウェイでBroncosを破れば、彼らがプレイオフに滑り込む可能性が出てきてもおかしくはないのだ。対戦相手が主力を休ませるような事態が生じなければ。
 NFLは比較的「消化試合問題」が出にくいリーグだと思う。試合数の少なさや複雑なシードルールなどがそれに寄与している。だがそれでも消化試合問題を完全に消すことはできないし、時にはそれがプレイオフ出場決定に影を落とすこともある。今年の場合、NFLのルールはNFCにおいては面白い方向に、AFCにおいてはむしろつまらなくなる方向に働いたということだろう。
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