NFLは第15週が終了。プレイオフ出場を決めたチームが増え、AFC、NFCそれぞれ4つの枠が埋まった。AFCはRavens、Patriots、Chiefs、Bills、NFCではSeahawks、Packers、Saints、49ersが出場することとなったが、AFCではBills、NFCではPackersと49ersが昨シーズンはプレイオフに到達しなかったチームだ。
数字の上での可能性ではなく、より現実的に見た場合、AFCのBrownsとRaiders、NFCのRamsのプレイオフはかなり厳しいだろう。AFCの場合、SteelersとTitansが残り試合で1つでも勝ってしまえば彼ら2チームのプレイオフの希望は潰える。NFCではVikingsの2連敗が必須だが、こちらは残り2試合どちらもホームだ。そう考えると、実態としてはAFCはTexans、Steelers、Titansが残り2席を、NFCではCowboysとEaglesが東地区の優勝を争うのがプレイオフ争いのメーンとなる。
最後の2週でプレイオフを争っているチーム同士の試合としては、第16週のCowboys @ Eagles、第17週のTitans @ Texansしかない。残っている地区優勝がらみで言えば第16週のBills @ Patriots、Packers @ Vikings、第17週の49ers @ Seahawksなども対象となる。このあたりが残る試合の中でも注目点だろう。
FiveThirtyEightのNFL Predictions によるとそれぞれの試合でfavoriteになっているのはEagles、Texans、Patriots、Vikings、Seahawksと、全部ホームチームだ。
といってもPatriotsとVikingsを除けばホームの優位は1~2点と、微妙な差でしかない。3試合あれば1~2試合がひっくり返ってもおかしくないレベルの均衡ぶりであり、その意味ではゲームとして期待できるところがあるのは確かだろう。逆にどちらもプレイオフに絡まず、なおかつ展開予想が一方的な試合(例えば第16週のLions @ Broncos)などは視聴率的には厳しいかもしれない。
この写真は1964年に撮影された ものだそうだ。同年9月に行われたSteelersとの試合でTittleの投げたパスはインターセプトされ、そのままリターンTDにつながった。どのような経緯でヘルメットが脱げたのかは分からないが、おそらくリターンTDを防ごうとプレイしていてブロックでも受けたのだろう。この時の彼は37歳で、翌月には38歳になる時期だった。
当時、30代のこれだけ押し詰まった時期にプレイできたQBはほとんどいなかった。彼の前にGiantsでスターターを務めていたConerlyが40歳になるまでプレイしていた例はあるが、その彼も39歳以降はチーム内で2番手のQBにとどまっていた。Tittleはキャリア最後となったこの年も14ゲームのうち11ゲームに先発し、チームで最も多い281のパスを投げている。
だが成績は惨憺たるものだった。AY/Aは3.6と彼のキャリアで最低の数字を記録。先発11試合の成績は1勝8敗2分と目も当てられないものだった。写真に残されているSteelersとの試合ではこのリターンTDが最初の失点であり、最終的には3点差で敗北している。リターンTDがなければ勝てていたかもしれない試合だった。
Tittleは1948年にAAFCのBaltimore Coltsでプロとしてのキャリアをスタート。Coltsがなくなった後は49ersに移り、そこで1960年までQBを務めた。その時点で34歳になっていた彼はGiantsに移籍し、そこで1961年から3年連続でChampionshipへチームを導くことに成功する。彼の前任のConerlyも1956年から59年までの4年間に3回、チームをChampionshipへと導いており、ある意味この時期はGiantsの黄金時代とも言える時期だった。
ただし、この6回のChampionship出場のうち、実際に勝てたのは1回だけ。特にTittleの時代は3年連続で敗退という残念な結果に終わっている。HOFに入るほどのQBであり、1950年より前にドラフトされたQBたちの中ではキャリア最多の獲得ヤードを記録しているだけの実力を持つ選手であるにもかかわらず、Tittleの名が広く語られない一因はその辺にあるんだろう。
40歳以上になって10試合以上に先発したHOF入りQBは、これまでFavreとMoonしかいない。前者は40歳と41歳、後者は41歳と42歳の時にその記録を作っている。だがBradyは40歳から42歳までの3年間、ずっと10試合以上先発しており、なおかつそのうち2年はANY/A+で100以上を記録している(FavreとMoonは1回しか記録していない)。他に10試合以上出たことがあるのは41歳のTestaverde(ANY/A+は99)、及び今年のBrees(最終週まで先発した場合)くらいだ。
多くのHOFerは38~40歳がキャリアの最後となっている。例えばWarnerやTarkenton、Montana、Marino、Elway、Young、Baughらは38歳がキャリア最後の年だし、Stablerは39歳で引退だ。Peyton ManningはまだHOFには入っていないが、39歳でキャリアを終えた。40歳になるまで踏ん張った選手としてはJurgensen、Dawson、Unitasらの名が挙げられるが、彼らの晩年は限られた試合数しか先発していない。
もちろん、これからその流れが変わる可能性はある。Bradyが先行して切り開いた道は、すぐ後からBreesがついてきているし、その下には38歳のRivers、37歳のRoethlisberger、36際のRodgersといった面々がいる。全員がBrady並みに長くプレイできる保証はないが、その一部だけでも継続してプレイできれば大きな変化と言えるだろう。何しろBrady以前はMoonとFavreくらいしかたどり着けなかったエリアなのだ。
とはいえBrady自身の役目はそろそろ終幕が近づいているように見える。もちろん足元の不調は怪我が原因であり、それが治ればまだやれる可能性はある。本人はそう思っているかもしれないし、チームがそう判断すればシーズン終了後に契約を延長する可能性もあるだろう。しかしそうした夢を抱くのはそろそろ厳しい年齢であることも事実だ。何しろもう不惑越えの年齢。怪我の治りも遅くなるし、治っても元のパフォーマンスを維持できない可能性もある。
以前、
こちらのエントリー で、
Next Gen Stats を使ってBradyとBreesの成績を分析した。BradyはxComp%の+/-が低下しており、BreesはAYDとTTが悪化しているという結果だったが、今シーズンの状況を見る限りQBの将来を予測するうえで重要なのは前者の数値だった模様。足元でBradyの今シーズン+/-は-3.8と、下から数えて5番手に位置している。明らかにパスの正確さが失われ続けており、それが全体のパフォーマンス悪化につながっている。
一方BreesのTTはリーグで2番目の早さに達しており、またAYDも2番目に低い位置をキープしている。昨シーズン時点で懸念されていた課題が解決されたわけで、TTやAYDは選手の衰えを示す指標としてはあまり向いていない可能性がある。そしてBreesの+/-は+7.4とこれまたリーグで2番目に高い位置にあり、彼のパスが引き続き正確さを維持していることが分かる。Bradyに次いで40代での活躍を積み重ねることが、現時点で最も期待できるQBだろう。
Tittleの時代からは大きく変わり、選手のキャリアは伸び、細かいデータの分析ができるようになった。それによってTittleはなしえなかった「40代に入ってからの活躍」を達成できるQBも増えている。それでも人が生物である以上、永遠に加齢に対して抵抗し続けることはできない。かつてTittleが奏でたように、BradyもSwan Songを歌う時が来たのだろう。彼に続くQBたちも、おそらくいつかは。
追記
Tittleの写真についてだが、彼のヘルメットが取れたのはラッシュしてきたDLのヒットを受けたためらしい。スクリーンプレイでOLがいないところに、SteelersのDLであるJohn Bakerが襲い掛かった。Tittleはヒットを受けるとほぼ同時にパスを投じたが、
Steelersの別のDLがそのボールをインターセプトしたようだ 。
Tittleがヒットを受けた瞬間、及び例の写真の前後のフィルムは
こちら で見ることができる。直前に撮影されたものを見ると、ヘルメットが脱げ、おそらく脳震盪でへたり込んでいるTittleの肩に手を置いているSteelersの選手の姿が写っている。また後に撮影されたものには、Tittleを取り囲むGiantsの選手やスタッフたちによって彼の姿が隠れている。
そしてこの有名な写真が、フィルムの半分のみを切り取ったものであることも分かる。一般に知られているのはエンドゾーンで一人座り込むTittleの姿のみだが、フィルム全体を見ればすぐ近くに大勢の選手がおり、老いたQBの孤独感など感じる余地はない。写真にウソは載っていない。だがそこには隠されていた情報が存在したわけだ。色々な意味でリテラシーが問われそうな写真である。
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