NFL第10週はアップセットがかなり多かった。13試合のうちunderdogが勝ったのが8試合を占め、中でもspreadが10点以上あった3試合のうち2試合でfavoriteが負けたのが目立つ。そう、1勝7敗のFalconsがSaintsを、同じく1勝7敗のDolphinsが5勝3敗のColtsを、それぞれアウェイで破ったゲームがそうだ。3試合目(Ravens @ Bengals)こそfavoriteの圧勝だったが、これだけ派手なアップセットが多ければ印象に残る。
そこまでspreadが大きくない試合でも6試合がアップセット、残る5試合が順当勝ちで、まあとにかく全体として波乱の週だったことは確かだろう。シーズンも半分を超えて、シーズン前の予想よりもシーズン中の実績に基づくオッズが出てくるタイミングだけに、さらに驚きは大きかった。こういう週もあるってことだろう。
チームの実績に基づく評価については、例えば
Pro-Football-ReferenceのSRS を見れば分かる。Falconsは今週の勝利を含めてもSRSは-5.9で、Saintsは+2.9だし、リーグ最下位であるDolphinsの-15.9に対してColtsは-0.7だ。ちなみにトップはbyeだったPatriotsの+13.3、2番手は49ersの+12.4で、3位にはRavensが+10.3で顔を出している。
ドライブ指数 で見てもやはりトップはPatriotsになる(+19.7)。2番手は49ers(+15.1)で、こちらで3番手に顔を出すのはSaints(+10.5)、4番手にはCowboys(+10.4)だ。他で評価の高いRavensは5位、Chiefsは6位で、Vikingsは8位となる。トップ3チームはいずれもディフェンスの数値が優れていることが大きく貢献しているのだが、オフェンスについて見るとSaintsこそ4位だが49ersは6位、Patriotsは8位とそれほど凄くはない。
少し前にFootball Perspectiveで
各チームのQBがどれだけチームの他のポジションに助けられているかを色々な角度で紹介した記事 が載っていた。プレイしている時の得失点差、ディフェンスやSTの実績などで、BradyとGaroppoloはトップ2を占めている。問題はオフェンスのトータルヤードに占めるQBのAir YardsとRushing Yardsの割合で、Patriotsは41.9%でリーグの真ん中あたりなのに対し、49ersは28.5%とリーグ最低。今週のゲームではOTのGaroppoloの成績が1/5の7ヤードにとどまり、敵陣から始めたオフェンスドライブを得点に結びつけられなかった。
つまりトップクラスのチームにも明白な弱点があるのが今シーズンの特徴なのである。Patsと49ersは明らかにオフェンスがディフェンスに比べて低調。Chiefsなどは逆にディフェンスが残念な状態だ。CowboysやSaintsは比較的バランスがいい方だが、特にCowboysは取りこぼしが多く不安定である。プレイオフ出場確率を見ると、例えばESPNのFPIだと9割以上が既に8チームを占めるなどシーズンの流れがかなり見えてきている印象があるかもしれないが、中身を見ればまだまだどう転ぶか分からない。
今週のQB of the decadeは1950年代。いよいよApproximate Valueの存在しない時代に遡ることになるので、他に何らかの指標を使う必要がある。ついでに言うならこの時期はsackのデータも整っていないため、ANY/Aも使用できない。というわけで使うのはAY/A、というよりもAdjusted Yardsの合計値とする。1プレイ当たりのデータであるAY/Aの方がチームの勝敗との関係は密接になるが、それだと少ないゲームしか出ていない選手がたまたま高い数字になる可能性があるためだ。量と質の双方を見るためにAdjusted Yardsの合計値を使う。
Adjusted Yardsの計算式はPassing Yards + Passing TD * 20 - Passes Intercepted * 45である。ランキングは以下の通りで、左から名前と、1950年代の合計Adjusted Yardsとなる。
Norm Van Brocklin 16244
Bobby Layne 15270
Y.A. Tittle 12696
Otto Graham 11029
Charlie Conerly 10612
Tobin Rote 10414
いつもなら5位までだが、今回は6位のRoteも入れた。AYで10000以上を稼いだのがちょうどこの6人だったからだ。ちなみにRoteは50年代の途中までPackersで、その後はLayneの後釜としてLionsでプレイしていたのだが、60年にLionsから放出されると今度は
CFL に移ってプレイを続けた。ここに紹介した6人の中では彼のAY/Aは最も低い。
トップのVan Brocklinは2017シーズンより前にEaglesに優勝をもたらした最後のQBだった人物だ。といっても彼のキャリアはほとんどがRamsでのもので、Eaglesにいたのは3年だけ。面白いことにRams時代も初期のころはBob Waterfieldという別のHOFerと交代で使われていたわけで、彼のプレイ回数はそれほど多くはなかった。だがそんな使われ方をした選手でも、この時代においては量においてトップクラスの選手になるあたり、当時のQBの位置づけが分かる。ちなみに彼はAY/Aも6.36とかなり高かった。
2番手のLayneはRoteにその地位を追われるまでLionsのエースを務めていた人物であり、1952年と53年にはライバルBrownsを倒しリーグで連覇を成し遂げている。ただその後の彼の行動には色々と問題もあったようで、57年には飲酒運転で逮捕され、さらには怪我もして上記のRoteに先発の座を譲った(RoteはそのままLionsを優勝へと導いた)。翌年のシーズン途中でLayneはSteelersにトレードされたが、以後Lionsは優勝できなくなり、結果として今でも
「Layneの呪い」 が語られている。
3番手のTittleは主に49ersで、5番手のConerlyはGiantsで50年代はプレイしていた。AY/Aは前者が5.33、後者が5.34とほぼ同じ(ちなみにLayneも5.54とあまり変わらない数字)。Tittleの方がパス成功率が高く、Conerlyの方がインターセプトが少ないといった差はあるが、割と似通った成績だ。だがHOFに選ばれたのはTittleのみ。Tittleの方がプロでのキャリアが長かったのが影響したのかもしれないが、Conerlyのキャリアが短くなったのは戦争に行っていたためであり、その意味では歴史に翻弄された人物とも言えそうだ。
そして4番手にいるGrahamだが、これはたまたま50年代という切り口だからこの位置になってしまった選手である。対象となる10年間を1946-55年とすれば、彼のAYは20989となりぶっちぎりのトップだった。そもそも上記のQBたちの中でもAY/Aは7.05と突出して高い。34歳で引退してしまったためにこのポジションにとどまっているが、この時代では突出したQBだったことは間違いないだろう。
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