2019 week9

 NFLは第9週が終了し、Miami TanksもといDolphinsが8試合目にしてようやくシーズン初勝利を挙げた一方、ここまで大差勝ちを繰り返してきたPatriotsが一方的に敗北した。これに伴い、無敗チームは49ers、無勝チームはBengalsとそれぞれ1チームのみにまで減少した。
 ただ日本のNFLファン的にはそれよりも大問題だったのはこちらの試合かもしれない。ファンの間では有名な某blog主が試合前にこんなことを書いていたために、この試合でBrownsが負ければ更新が止まる事態が想定されていたためだ。というわけで東洋の一角から妙な注目を浴びていた試合は、公式戦で1回たりともパスを投げたことがなかったQB率いるBroncosにBrownsが敗北したのであった。
 blog主はいさぎよく「終了」を宣言。コメント欄を見ても分かる通り、これを惜しむ声は多い。ビッグビジネスと化している米国ならともかく、日本でのNFL関連blogなんて完全な趣味の世界なので、やめるも続けるも本人の自由だということは分かっているのだが、個人的によく目を通していたblogでもあるので残念ではある。
 と同時に、昨年はあれだけ活躍していたMayfieldの今年の惨状を改めて感じた。ドラフト前時点では彼が一番活躍すると予想しており、1年目はその予想通りになっただけに、2年目の彼の凋落ぶりには正直驚いている。100試投以上のQB34人を対象に見たところ、MayfieldのANY/Aは4.36と下から数えて4番手。Patriotsの連勝を止めた同期のJackson(6.79)とはえらい差がついてしまった。
 個々の試合を見ているわけではないのではっきりしたことは言えないが、数字を見る限りMayfieldはパス成功率も低く(58.7%)、インターセプトも多い(リーグ最多の12個)。Next Gen Statsのデータを見るとComp% +/-が-5.1とこれまたリーグの下から4番手に位置しており、とにかくコントロールが悪いことが分かる。昨シーズンのMayfieldも-0.7とあまりいい数字ではなかったが、今年ほど酷くはない。
 Average Intended Air Yardsは8.0と昨シーズン(9.1)よりむしろ短くなっている。にもかかわらずxComp%は昨シーズンより低下しており、それだけオフェンスのプレイコールが悪化しているのだろう。コーチングの失敗に加えて彼自身のコントロールが悪くなっているのだから、そりゃ成績が下がるのも仕方ない。上で紹介したblogのコメント欄でも指摘されている通り、コーチングスタッフの変化がマイナスに働いている可能性がある
 Brownsを見ていて感じるのは、当然ではあるがチーム力は個々の選手の知名度を足し合わせたものではないということだ。昨年のMayfieldの活躍にOBJやHuntの加入もあって、シーズン前の彼らは地区優勝候補とまで持ち上げられていた。チームスポーツ、それも11人が同時に行動するアメフトにおいては、個人技ではなくチームのケミストリーの方が大切なのは言わずもがなだが、煌びやかな名前を見てそのことを忘れていた人が多かったのだろう。
 もう一つ気になるのは、QBのANY/Aランキング下位にMayfieldの同期が他にもいること。Rosenは2.15とどん底にとどまり、リーグ史上屈指のジャーニーマンであるFitzpatrickに完全に先発の座を奪われているし、下から2番目にいるDarnold(3.51)はそのFitzpatrick率いるTanksもといDolphinsに初白星を献上した。Josh Allenは彼らに比べれば健闘しているものの、それでもリーグ平均より下の5.38で順番はリーグで25位だ。
 ご存知の通り彼らは近年稀に見るQB豊作年にドラフト1巡で指名された面々だ。にもかかわらず1巡の最後に指名されたJacksonを除いて後は成績下位に沈んでいる。今年のルーキーたちと比べても、Minshewは6.87とJacksonの少し上だし、Murray(5.85)はAllenより良く、Jones(5.03)はMayfieldら残り3人より上の成績を残している。同期の2巡指名であるRudolph(6.20)と比べても、Jackson以外は負けている状態だ。
 豊作年と言われた年が本当に豊作になるという保証がないことは、1999年指名のドラフト選手たちを見れば分かる。長い目で見れば、あの年よりもその前後(1998年のPeyton Manningと2000年のTom Brady)の方がいいQBがいたし、本当に豊作だったドラフト年次はむしろ2004年であったことは疑いない。2018年のQBたちについてもまだ結論を出すには早いことは確かだが、今のところNFLのドラフトにおける事前評価があまり当てにならないことを示す典型例になってしまっている。やはりドラフトはcrapshootだ。

 今週はApproximate Valueのデータが取れる最も古い時期、1960年代のQB of the decadeを見てみよう。基本的にHOFerばかりが並ぶ華々しいメンツであり、その意味ではこれまで紹介してきた他のほとんどの年代と同じ(除く80年代)。いつものように左から名前、AV、そしてカッコ内が全体の順位だ。

Johnny Unitas 126 (1)
Fran Tarkenton 121 (3)
Sonny Jurgensen 109 (9)
Bart Starr 107 (11)
Len Dawson 102 (18)
George Blanda* 102 (18)

 このうち6人目のBlandaについては、正直QBとして入れていいのか悩むところだ。確かに彼のAVは100を超えているのだが、彼がQBとして主に活躍していたのは1966年までで、67年以降の彼の成績はむしろKとしての評価が中心となっている。もし66年までの合計AVで評価するのならその数値はもっと小さくなるし、この表にも出てこない。彼だけ*がついているのはそれが理由だ。
 それ以外を見るとほぼ妥当な名前が並んでいると見ていいだろう。トップのUnitasは60年代に3回、1st team All-Proに選ばれているし、獲得ヤード(2万6548ヤード)でもリーグ最多の選手だ。何よりも興味深いのがGWDで、24回という数は2番目に多いTarkenton(16回)の1.5倍に達している。1960年代を代表するCaptain Comeback、それがUnitasだったと言える。
 そのTarkentonは2番手に入った。前に紹介した1970年代のQB of the decadeでも2位に顔を出していた彼の場合は、その長いキャリアを賞賛すべきなんだろう。3位のJurgensenはトータルのパス試投数、パス成功数、パスTD数などで60年代にリーグのトップを記録した選手であり、1st team All-Proにも2回選ばれている。残念ながらこの2人はチャンピオンにはなれなかったが、それでもHOFに選ばれているのだからその実力は広く認められていたのだろう。
 だが個人的に「本当に1960年代を代表するQB」は、4番手のStarrではないかと思う。彼のAVは確かにそれほど高くないのだが、それは彼のパス試投数がUnitasのほぼ3分の2と極めて少なかったため。先発試合数ではUnitasとほとんど変わらなかった彼のパスがそれだけ少なかったのは、おそらくPackersが強すぎて簡単にリードを奪い、結果としてランプレイが増えてしまったためだろう。パス効率だけ見るのならStarrのAY/Aは7.65とUnitas(6.84)やTarkenton(6.89)を大きく上回っている。60年代において最も優秀なQBを選べと言われればStarrになるのではなかろうか。
 5番手のDawsonはStarrに次いで高いAY/A(7.26)を記録したやはり有能なQBだが、こちらもプレイ回数が少なかったのが影響した。60年代初頭のBrownsに所属していた時代、彼は控えでしかなく、ほとんどパスを投げていなかった。1962年にDallas Texans(後のChiefs)に移籍し、先発になって初めて花開いた選手だと言える。AFLの誕生のよってスターになれた選手なわけだ。
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