2019 week8

 NFLでは第8週が終わり、シーズン折り返し点にほぼ到達。予想通りMahomesと、さらにRyanまでも怪我で欠場し、これで開幕以降に先発QBが交代したチームは12に到達した。おまけに来週はFlaccoも欠場することが決まったようだ。一方、親指の怪我でしばらく休んでいたBreesが今週復帰するなど、喜ばしいニュースもある。あとSteelersのRudolphも3週ぶりにプレイしている
 一方、トレード期限を控えてこちらの動きも激しくなっている。tankモードと言われているDolphinsがDrakeをCardinalsにトレードしたほか、前々から去就が話題になっていたJetsのWilliamsがGiantsに出された。Jetsファンは「なぜ相手がGiantsなのか」「想像できる限り最もショッキングな相手」と驚愕している。
 無理もない。後者が指摘している通り、GiantsはこのオフにFAになる選手をわざわざ対価を出してトレードで手に入れることになる。FiveThirtyEightのEloでプレイオフ出場確率が既に1%未満まで低下しているGiantsの行動だけに、驚くのも当然だろう。今更チームを強化しても手遅れの可能性が高い今シーズンが終わるまで待てば、FAになったWilliamsを手に入れ、なおかつドラフト権も手元に残すことができるというのに。以前、同じように残り半シーズンでFAになるCollinsをわざわざトレードで入手し、結局うまく使いこなせなかったBrownsを思い浮かべる動きだ。
 それ以外のトレード動向はこちらにまとめられている。また、ずっと契約問題でチームともめていたRedskinsのWilliamsについて、チームがようやくトレードに応じる構えを見せたそうだ。これまたRedskinsらしい、いかにも遅すぎる動き。Williamsとの関係が完全にこじれていたのはシーズン当初から明白であり、であればこのオフのうちに彼をさっさとトレードに出すべきだった。期限が目の前に迫ったこの時期にようやくトレードを言い出しても、相手に足元を見られる可能性が高い。
 Redskinsは以前から選手の見切りの遅さが目立つチームだった。Cousinsをフランチャイズタグで引っ張り、彼のサラリーを上げるだけ上げて結局は長期契約に至らなかったのがその典型例だろう。例えばBelichickがGMだったら、Williamsはオフのうちに1番条件のいいところとトレードを終わらせていたと思われる。選手への払いすぎを警戒するのは、Falconsの現状を見ても間違っているとは言えない。だがいずれ出て行く選手であれば、対価を手に入れられるうちに早めに放出するのが正解だ。長期契約が無理と分かっている選手をいつまでも未練たらしく囲い込もうとしても、おそらくいいことはない。
 こうした動きは典型的なsunk costの誤謬であり、コンコルド効果だと言える。回収できないコストはできるだけ早く切り捨てるのが経済的には最も合理的な対応。それは選手についても同じであり、長期契約という形で回収することが無理だと分かった段階で、その選手はチームにとって回収不能な埋没費用になったと判断すべきなのだろう。そうした判断ができるチームと、同じ過ちを繰り返すチームが同じリーグに所属しているのだから、そりゃ長期にわたって成績に大きな差が出るわけだ。
 その「合理的判断ができる」GMことBelichickは、かつて興味が無いと述べていた70歳代になってからのコーチングについて、先のことは分からないといった態度に変化してきている。つまり70歳代になってからもコーチを続ける可能性を否定しなかったということだ。そして実際、67歳の現時点でリーグ最強ディフェンスを作り上げることができる人物が、70歳になったというだけの理由でコーチを辞めなければならないという理屈はあり得ないだろう。もしかしたらBradyの引退後もHCが今のまま、という体制になるかもしれない。
 第8週が終わったところでコーチを解雇したのがChargers。OCのWhisenhuntがその地位を追われ、後任はおそらくQBコーチになるらしい。確かに今シーズンのChargersは負け越しており、RiversのANY/Aもリーグ12位の6.79と、昨シーズン(4位の7.79)に比べれば悪化している。だがデータを見る限り、Chargersの不審の主因がオフェンスにあるとは思えない。ドライブの平均獲得ヤードは36.3とリーグ平均より上だし、Football OutsidersのDVOAを見るとオフェンスは2.4%でリーグ14位と真ん中より上にいる。むしろディフェンスの数字(12.1%のリーグ27位)の方が酷い。
 そもそも今シーズンのChargersの低迷は、単にツキが離れただけとも言える。彼らの1ドライブ差以内の成績、つまり得失点差8点以内の勝率を見ると、昨シーズンは6勝1敗と圧倒的に勝ち越していた。ところが今シーズンのこの成績は2勝5敗と逆に負け越し。1ドライブ差以内の勝ち負けはツキで決まる部分が大きく、この数字が極端なチームの成績は額面通りには捉えられない。運の流れが変わった責任をOCに負わせたとしても、それで状況が改善するだろうか。むしろお祓いでもしてもらった方がいいとすら言える。

 今週は1970年代のQB of the decadeだ。80年代よりは華やかな名前が並んでいるのだが、この時期はそもそも試合数が今よりも少なかったためか、Approximate Valueの絶対値は後の時代よりは低めに出ている。それでも80年代ほど微妙な名前はなく、HOFerかあるいはHOFに極めて近いという人物が並んでいる。以下が上位陣で、左から名前、AV、そしてカッコ内が全体順位だ。

Roger Staubach 126 (1)
Fran Tarkenton 115 (6)
Bob Griese 112 (7)
Terry Bradshaw 103 (12)
Ken Anderson 100 (18)

 トップのStaubachはまさに70年代の申し子的な存在だ。ベトナムで軍務に就いていたためプロ入りが遅れた彼のキャリアはたったの11年しかなく、生涯先発114試合のうち113試合が1970年代のゲームだった。しかしその限られた経歴において彼はANY/A+で121という極めて高い数字を記録。10年間に5回もNFCのchampionsになったCowboysの不動のエースQBとして君臨した。だが奇妙なことに彼は1度も1st team All-Proに選ばれていない。コンスタントに高い成績を収めたが、突出して大活躍した年がなかったという変わった経歴の持ち主でもあった。
 QB2番手のTarkentonは先発試合数ではStaubachより多いが、キャリアは1978年で終わっている。1990年代のYoungと同様、キャリアの後半がこの年代と重なったというタイプなのだが、Youngと違って彼はキャリアの前半も大活躍している。後に述べるが1960年代のAVランキングでも彼は上位に顔を出しているわけで、その息の長さには素直に感心すべきなんだろう。ちなみにトータルのパスヤードやパスTDで見ると、70年代のトップはStaubachではなくTarkentonになる。
 Grieseは70年代前半の活躍が知られている一方、後半になると少し影が薄くなってしまった選手と思われているかもしれない。だが実際には1977年に2度目の1st team All-Proにも選ばれているわけで、これまた1970年代を通して活躍したQBと言える。パス試投を含め絶対値が大きいTarkentonや、パス効率の高さが目立つStaubachほどではなかったが、それでも優れた活躍をしたことは間違いない。
 4番手のBradshawは優勝回数ではこの時代を代表する人物だが、ANY/A+だと104にとどまるといういささか地味な選手である。そもそもキャリアの前半の彼は平均以下のQBにすぎず、どちらかというとディフェンスに助けられていた選手と言える。ただし70年代後半にはかなり高い数字を出すようになったし、その水準は80年代初頭まで続いたので、トータルとしてみればやはりいい選手だったということになる。
 そして5番手が「最もHOFに近い」と常に言われ続けているAnderson。残念ながら70年代の彼は1度も1st team All-Proに選ばれていないが、80年代には選ばれたことがあるし、それを抜きにしても彼の70年代のANY/A+は112とかなり高い。彼が上位4人に比べて劣っているのは、勝率やSuper Bowlへの出場数(ゼロ)といったチーム全体成績に絡む部分であり、その意味では少し不運なQBだったと言えるかもしれない。
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