2019 week7

 NFLは第7週が終了。Nashvilleが古くギリシャ神話の時代からの呪いに見舞われていたことが明らかになった一方、ニューヨークではまだハロウィーンには早いのに幽霊が目撃された。2つの全勝チームと2つの全敗チームはどちらも連勝/連敗記録を伸ばしたが、全敗チームはどちらも10点差の負け、全勝チームはどちらも完封勝利と似たような結果だった。
 今週も引き続きQBの負傷が発生している。TNFではMahomesがQB sneakの際に膝蓋骨を脱臼し、少なくとも3週間の離脱となる。Chiefsの今後のスケジュールを見るとホームでのPackers、Vikings、アウェイでのTitans、Chargersと続いており、その後でByeが来る。ESPNのFPIを見るとPackersとVikingsは実力上位10チームの中に入っており、決して楽な相手とは言えない。来週からしばらくはMahomesに代わってMooreが先発することになるわけで、Reidの「魔法の杖」力が試されるところだ。
 今シーズン先発QBが交代したのは、怪我が原因だったJaguars、Panthers、Saints、Bears、Steelersと、病気が原因だったJets、そしてそれ以外の要因(主に先発の不振)だったRedskins、Giants、Dolphins、Titansが挙げられる。シーズン直前に引退したLuckを加えるならColtsが入るほか、来週からはMahomesがしばらく出場できないChiefsもこのリストに加わることになる。
 つまり全体の3分の1以上のチームで先発交代が起きている計算だ。この数字は一見してかなり多いようにも見えるが、そもそもNFLではシーズン通して1人のQBが先発を続けられるケースは決して多くはない。昨シーズンは16試合先発できたQBは全体の半数の16人だったし、2017シーズンはたったの12人、16シーズンは14人だった。今年が極端に多くなるかどうかは、現時点でははっきりとは分からない。
 それでも先発継続したチームの方が成績で有利になる傾向はある。2018シーズンでは16試合を1人の先発QBで乗り切ったチームの累計成績は140勝113敗3分、17シーズンは114勝78敗、そして16シーズンは117勝104敗3分だった。負けているチームはQB交代に踏み切りやすい傾向を考えるなら当然の結果ともいえるが、それだけでなくQBの怪我がなかったチームがいい成績を収めやすいということも言えそうだ。今シーズンも現時点でJaguars、Steelers、Jets、Redskins、Giants、Dolphins、Titansは負け越し中。おそらく今年も先発継続QBのいるチームの方が成績はよい傾向が見られるだろう。なお今週、ちょうど先発が変わったTitansはTannehillが(珍しくいいパス成績を残して)勝った
 その他としてはとにかく絶好調なPatriotsが、NFL100年目にふさわしく「1920年以来の記録」を打ち立てた模様。Buffalo All-Americansの1920年の成績なんてものを見直す機会があろうとはお釈迦様でも分からなかっただろう。他にも1942年以来の記録などもあった。

 一方、Over The CapではZack Mooreが面白い記事を書いていた。Falconsを来シーズンに襲うことになるSalary Cap Hellについての話だ。読めば分かる通り、来年のキャップヒットを見ると彼らはトップ5人だけで総額の5割超を、10人で4分の3近くを使ってしまう計算になっている。22人目まで数えるとその時点でキャップ総額と想定される200ミリオンのうち残っているのはたったの1.95ミリオン。残る31人分をこの金額で賄わなければならないのだ。
 足元でFalconsが残念な状態に陥っているのは、既にこうしたキャップマネジメント上の問題が表に出てきたためとみられる。高額選手はOTC Valuationに比べると割高になってしまい、採算が合わない。そして彼ら以外の多くの選手はもともと低コストでレベルの高くない選手である。特にディフェンスはその影響をもろに受け、EPAではリーグ最下位に沈んでいる。GMの責任はかなり重そうだ。
 2020年になると状況はさらに悪化する。Jason Fitzgeraldがツイートしているように、Falconsはキャップスペースが少なく(というか赤字)なうえに、サンクコストがリーグ最多となっている。選手のカットなどを通じてキャップスペースを作り出すのがそれだけ難しいわけで、チーム再建には相当に苦労するだろう。かつてはRaidersなどがSalary Cap Hellにはまり込んでいたが、Super Bowlから3年でFalconsもその状態に突入する可能性が高い。
 それにしても彼らの没落ぶりと、3年前にもSuper Bowlで優勝しているPatriotsの現状とは実に対照的だ。こちらのツイートが指摘している通り、かつてPatriotsとSuper Bowlで対戦したチームはいずれも5年後にはほぼ勝率5割レベルまで成績を落としている、というか平均へと回帰している。Falconsの下落ペースは中でも酷い方だが、それよりも目立つのはPatriotsだけがなぜか平均へ回帰せず高い勝率を維持し続けていること。改めてこのチームがかなり特殊な存在であることが分かる。

 ……とここまで書いたところでニュースが入ってきた。今年、WR collecterと化しているPatriotsが、今度はSanuをトレードで手に入れたという。対価として提出するのは2巡指名権だそうだ。トレード期限の接近に合わせて、例えばRaidersが3巡と引き換えにTexansにCBのConleyをトレードしたというニュースも流れていたが、このSanuのトレードは驚愕だった。「Patsはどうやってキャップを空けたのか」が分からなかったからだ。
 Patriotsのキャップに詳しい人物はこのニュースが流れた直後の時点でPatsのキャップスペースが2.9ミリオン弱しかないと伝えていた。一方Sanuの契約を見ると今シーズンのBase Salaryは6ミリオンに達している。Patriotsが負担するのが第8週以降の分だけだとしても3.5ミリオンには到達するはず。何か裏技でもあるのだろうか。
 キャップ関係者が推測しているのは、Falconsがトレード前にSanuのサラリーを支払ったのではないかというものだ。こちらのツイートでは、もしFalconsが可能な限りの範囲でサラリーをsigning bonusに変更していたとしたら、Patriotsのキャップヒットは55万ドル弱にとどまるという。これなら確かにPatsの厳しいキャップヒット内にも収まるし、一方で3巡指名でありキャリアで1度も1000ヤードに達したことのないSanuに2巡という高いドラフト権を差し出す理由にもなる。
 以前こちらで紹介した計算式に当てはめるなら、過去5年のApproximate Valueが34に達しているSanuと釣り合う指名権は全体107位になる。ちょうど3巡の補償ピックから4巡の上位にかかるあたりで、そのSanuに2巡を差し出すのはそれだけ見れば割高だ。いくらサラリーを支払ってもらったうえでのトレードとはいえ、そこまでしてSanuを手に入れなければならないのは何らかの酷い怪我でも起きているのでは、との推測もある。実際、今週の試合ではレシーバー陣に怪我が集中していた
 それにしても改めてABとの契約が尾を引いていることが分かる。あれがなければ普通にSanuを3巡あたりとトレードしていた可能性が高く、最も資金効率がいいと言われる2巡を失うこともなかっただろう。そもそもABとの契約がsigning bonus多めになったのもキャップスペースにあまり余裕がなかったからであり、キャップスペースは余らせすぎてもいけないが、少なすぎるのも色々と困ることが分かる。
 一方のFalconsはこれで再建モードなのかもしれない。だがSanuは上記のMooreの記事でも指摘されている通り、キャップヒットのトップ10で唯一黒字を出している選手だ。その彼に、もし本当にサラリーのおまけをつけて送り出したのであれば、来シーズンそれだけFalconsのデッドマネーが増える。ドラフト2巡はありがたいが、キャップ地獄は一段と厳しくなりかねない。
 それ以外にもBroncosがSandersを49ersに送り出すなど、トレード期限を控えて成績下位チームから上位チームへの選手の流れが生じている。NFLもMLBみたいになってきているのかもしれない。
 というわけで今週はQB of the decadeの紹介はなし。
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