今シーズン先発QBが交代したのは、怪我が原因だったJaguars、Panthers、Saints、Bears、Steelersと、病気が原因だったJets、そしてそれ以外の要因(主に先発の不振)だったRedskins、Giants、Dolphins、Titansが挙げられる。シーズン直前に引退したLuckを加えるならColtsが入るほか、来週からはMahomesがしばらく出場できないChiefsもこのリストに加わることになる。
つまり全体の3分の1以上のチームで先発交代が起きている計算だ。この数字は一見してかなり多いようにも見えるが、そもそもNFLではシーズン通して1人のQBが先発を続けられるケースは決して多くはない。昨シーズンは16試合先発できたQBは全体の半数の16人だったし、2017シーズンはたったの12人、16シーズンは14人だった。今年が極端に多くなるかどうかは、現時点でははっきりとは分からない。
それでも先発継続したチームの方が成績で有利になる傾向はある。2018シーズンでは16試合を1人の先発QBで乗り切ったチームの累計成績は140勝113敗3分、17シーズンは114勝78敗、そして16シーズンは117勝104敗3分だった。負けているチームはQB交代に踏み切りやすい傾向を考えるなら当然の結果ともいえるが、それだけでなくQBの怪我がなかったチームがいい成績を収めやすいということも言えそうだ。今シーズンも現時点でJaguars、Steelers、Jets、Redskins、Giants、Dolphins、Titansは負け越し中。おそらく今年も先発継続QBのいるチームの方が成績はよい傾向が見られるだろう。なお今週、
ちょうど先発が変わったTitansはTannehillが(珍しくいいパス成績を残して)勝った 。
一方、Over The CapではZack Mooreが
面白い記事 を書いていた。Falconsを来シーズンに襲うことになるSalary Cap Hellについての話だ。読めば分かる通り、来年のキャップヒットを見ると彼らはトップ5人だけで総額の5割超を、10人で4分の3近くを使ってしまう計算になっている。22人目まで数えるとその時点でキャップ総額と想定される200ミリオンのうち残っているのはたったの1.95ミリオン。残る31人分をこの金額で賄わなければならないのだ。
足元でFalconsが残念な状態に陥っているのは、既にこうしたキャップマネジメント上の問題が表に出てきたためとみられる。高額選手は
OTC Valuation に比べると割高になってしまい、採算が合わない。そして彼ら以外の多くの選手はもともと低コストでレベルの高くない選手である。特にディフェンスはその影響をもろに受け、EPAではリーグ最下位に沈んでいる。GMの責任はかなり重そうだ。
2020年になると状況はさらに悪化する。
Jason Fitzgeraldがツイートしている ように、Falconsはキャップスペースが少なく(というか赤字)なうえに、サンクコストがリーグ最多となっている。選手のカットなどを通じてキャップスペースを作り出すのがそれだけ難しいわけで、チーム再建には相当に苦労するだろう。かつてはRaidersなどがSalary Cap Hellにはまり込んでいたが、Super Bowlから3年でFalconsもその状態に突入する可能性が高い。
それにしても彼らの没落ぶりと、3年前にもSuper Bowlで優勝しているPatriotsの現状とは実に対照的だ。
こちらのツイートが指摘 している通り、かつてPatriotsとSuper Bowlで対戦したチームはいずれも5年後にはほぼ勝率5割レベルまで成績を落としている、というか平均へと回帰している。Falconsの下落ペースは中でも酷い方だが、それよりも目立つのはPatriotsだけがなぜか平均へ回帰せず高い勝率を維持し続けていること。改めてこのチームがかなり特殊な存在であることが分かる。
Patriotsのキャップに詳しい人物 はこのニュースが流れた直後の時点でPatsのキャップスペースが2.9ミリオン弱しかないと伝えていた。一方
Sanuの契約 を見ると今シーズンのBase Salaryは6ミリオンに達している。Patriotsが負担するのが第8週以降の分だけだとしても3.5ミリオンには到達するはず。何か裏技でもあるのだろうか。
キャップ関係者が推測しているのは、
Falconsがトレード前にSanuのサラリーを支払ったのではないか というものだ。
こちらのツイート では、もしFalconsが可能な限りの範囲でサラリーをsigning bonusに変更していたとしたら、Patriotsのキャップヒットは55万ドル弱にとどまるという。これなら確かにPatsの厳しいキャップヒット内にも収まるし、一方で3巡指名でありキャリアで1度も1000ヤードに達したことのないSanuに2巡という高いドラフト権を差し出す理由にもなる。
それにしても改めてABとの契約が尾を引いていることが分かる。あれがなければ普通にSanuを3巡あたりとトレードしていた可能性が高く、
最も資金効率がいいと言われる2巡 を失うこともなかっただろう。そもそもABとの契約がsigning bonus多めになったのもキャップスペースにあまり余裕がなかったからであり、キャップスペースは余らせすぎてもいけないが、少なすぎるのも色々と困ることが分かる。
一方のFalconsはこれで再建モードなのかもしれない。だがSanuは上記のMooreの記事でも指摘されている通り、キャップヒットのトップ10で唯一黒字を出している選手だ。その彼に、もし本当にサラリーのおまけをつけて送り出したのであれば、来シーズンそれだけFalconsのデッドマネーが増える。ドラフト2巡はありがたいが、キャップ地獄は一段と厳しくなりかねない。
というわけで今週はQB of the decadeの紹介はなし。
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