2019 week6

 滅多にないプレイが行われた第6週が終了。無敗チームは前週と変わらず2チームだが、無勝チームは前週から2つ減って2チームになった。うち1つは全敗同士の試合だったのでそうおかしくはないのだが、もう1つのJetsはNFC東の首位にいたCowboysを破ったので褒められるべきだろう。Darnoldが戻ってオフェンスが少しは改善した(過去4試合で39点しか取れなかったのが、今週は24点をゲット)のが初白星の理由だろう。
 Darnoldの場合はプラス要因となったが、逆にマイナス要因として試合中にベンチに引っ込められたQBもいた。1人はDolphinsのRosen。第3Q終了時点で17-3とリードされていたDolphinsだが、Rosenのパス成績は25試投15成功で85ヤード、つまりY/Cで6ヤードに届かないほど酷いdink and dunkプレイをしていた。しかもその間にサックを5回、インターセプトを2回食らっている。
 もう1人はTitansのMariotaで、こちらは第3Qの途中、13-0でリードされている段階でTannehillと交代させられた。Mariotaのその時点の成績は18試投の7成功、サック3回にインターセプトは2回、そしてQBレーティングは9.5と一桁にとどまっていた。まあ代わりに出たTannehillも144ヤード稼いだもののインターセプト1回、サック4回で同じく無得点に終わったので、あまりいい状態とは言えない。
 ただし2人のQBの今後は明暗が分かれている。少なくともRosenに対してはFloresが来週も再び先発をさせると述べている。この試合だけなら得点を挙げたFitzpatrickの方がマシだし、シーズン通してみてもFitzのANY/Aが3.51なのに対してRosenは2.15と、どちらも酷いという事実に目をつぶればFitzの方が上にいる。にもかかわらずRosenを使い続けるのは、tankingのためかもしれない。少なくともRosenの方がtankに向いているという意見はある。
 一方のMariotaだが、こちらはVrabelがQBのポジションについてスタッフやGMと議論すると述べており、試合終了時点で次の先発を約束されていないことがはっきりした。MariotaがTDパスゼロに終わったのは、これで今シーズン3試合目と出場試合数の半分に達している一方、被サック数は25と同期のWinstonと並んでリーグ最多。サック率で見るとWinstonの8.2%を大きく上回る13.6%と、昨シーズン(11.3%)よりさらに酷い状況を続けている。
 Mariotaのサックに対してはChase Stuartが手厳しい批判をしている。今週の試合でインターセプトをされるまで、Mariotaはインターセプトがゼロだった。一方で被サック率は極めて高く、オフェンスは全然進んでいたなかった。実にドライブの半数以上がパントで終わっていたそうで、オフェンスの目的はミスを避けることではなく「点を挙げることだ」と指摘されている。
 一方、彼の同期であるWinstonは、Mariotaとは逆に積極的過ぎることで知られているQBだ。その彼は今週、61回のドロップバックで19回のパスFD更新を達成した一方、インターセプトを実に5回も食らった。さすがにここまでインターセプトを乱発すれば、そりゃゲームにも負ける。こちらはMariotaと違って交代させられるには至らなかったが、かなり残念な成績だったのは間違いない。
 2015年ドラフトで全体1位と2位で指名されたこの2人だが、5年目を迎えて今のところは残念な結果に終わっている。あるTitansファンはMariotaを諦める発言をしているし、Winstonは「彼」と比較されている。彼らの翌年にドラフトされたGoffとWentzがいずれも大型の契約延長を勝ち取っているのと比べても、5年目オプションより後が決まっていない彼らがいかに追い詰められているかが分かる。
 正直なところ、確かにこの2人はチームにとって扱いにくいQBだと言える。Winstonはトータルで見れば悪いQBではない(RANY/AはFoles並み)が、試合ごとのvolatilityが大きく、結果が極端になる。Mariotaは彼よりもさらに成績が下でほぼリーグ平均並みのQBなのだが、昔から何度も書いているようにリーグ平均並みのQBというのはうっかりベンチに下げるとさらに悪いQBが出てくる可能性が高い。かといってどちらも高額契約を結びたいと思わせるだけの実績もない。
 彼らがBridgewater並みの安いサラリーで満足してくれるなら、6年目以降も使い続けることにして、他のポジションに金を使うという選択肢も生まれる。だが彼らが年平均で例えばDalton並み(16ミリオン)を要求してきたらどうか。実はDaltonもキャリアのRANY/AがWinstonとMariotaの間に位置する「平均的QB」だ。今シーズンのBengalsの残念な成績を見ても、それだけの金をQBに払うならよほど他のポジションを上手くそろえなければヤバいことになるのは分かる。それだけの決断をTitansやBucsはできるだろうか。
 もちろん今シーズンはまだ10試合かそれ以上残されている。今後の展開次第で、WinstonやMariotaに対する見方が変わる可能性はあるわけで、今の時点で結論に飛びつく必要はない。それでも、このまま行くと今シーズンは2015ドラフトQBにとってswan songの年になる可能性が高くなっている。

 さて今週は1980年代のQB of the decadeだが、正直言って80年代はQB不作の時代と言われてもしかたないほどApproximate Valueの上位陣にQBが少ない。90年代以降はかならずトップにはQBが顔を出しているのだが、80年代のトップはOLのAnthony Munoz(147)。2番手もLBのLawrence Taylor(145)であり、彼らと引き離された3番手にようやくQBが出てくる状態だ。
 以下はQBのトップ5について、左から名前、Approximate Value、カッコ内は全体順位。

Joe Montana 131 (3)
Dan Fouts 104 (9)
Dan Marino 102 (10)
Danny White 88 (27)
Phil Simms 83 (36)

 圧倒的に強かった49ersのMontanaが全体トップにならないことに驚く人もいるだろうが、例えば彼が1st-team All-Proに選ばれた回数は2回で、これはMarino(3回)より少ない。特に80年代の後半になるとシーズン通して先発できた年が少なく、そうしたこともMontanaのAVが思ったほど高くない一因だろう。Montanaに比べれば、80年代に1st-team All-Proに8回も選ばれたMunozやTaylorが上に来るのは当然と言える。
 Montanaの次にQBとして顔を出すのがFoutsというのも、80年代のQB不作ぶりを示す一例だろう。彼は1987年を最後に引退しており、80年代フルに活躍していない。彼が一流QBとしてリーグでもトップクラスの活躍を続けていたのは、あくまで80年代の前半だけだ。そして3番手のMarinoはFoutsとは逆に80年代の序盤はそもそもプロでなかった。彼が先発に定着したのはようやく1983年。80年代の先発試合数はFouts(98試合)とあまり変わらない101試合しかない。2人とも偉大なQBではあるが、80年代という区切りが適切かと言われると微妙な選手だ。
 4位以下になると、そもそもHOFerですらないQBが顔を出す。Whiteは最初はパンターとして雇われ、後にStaubachの後を継いでCowboysの先発QBになった(しばらくはパンターも兼務していた)という変わった経歴の持ち主だが、彼もまた80年代の最後まではリーグに残っていなかった。おまけに彼は1st-team All-Proどころか、Pro Bowlにすら1回しか選ばれたことのない選手。それがQBとして4番手に入ってしまうのだから、人材不足も甚だしい。
 5位のSimmsはSuper Bowlに優勝したこともあってそれなりに知られているが、QBとしてはこれまたトップクラスとは言い難い選手だ。悪いQBではないが、38歳までプレイしてPro Bowlに2回しか選出されなかった点を見ても、超一流どころと比べればずっと格落ちの選手である。つまるところ、1980年代はMontanaの時代だったというより、「Montanaしかいなかった」時代なのだ。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント