2019 week3

 NFL第3週が終了。現時点では両カンファレンスの成績にかなり大きな差がついている。全勝チームはAFCの3チームに対してNFCが4チーム、逆に全敗はAFCが5チームもあるのにNFCは1つしかない。上位陣はどちらのカンファレンスもそう違いはないが、下位の方の実力差が大きくなっている。SteelersやJetsのように先発QBの欠場という不運に見舞われた面もあるが、そういう事情なしで負けているところもあり、今の時点ではAFC側が実力で劣っていると見られても仕方ないだろう。
 特にDolphinsは3試合の得失点差が-117に達した。これはPro-Football-Referenceで遡ることができる1940年以降、開幕3試合でついたマイナスの得失点差としては最大だ。これまでは1961年のRaidersが-106点という記録を持っていたが、それを抜いてしまったあたり、今年のDolphinsの凄さが分かる。
 それも含めてAFCの方にプレイオフ出場確率の低いチームが多い。Football OutsidersのPlayoff Oddsを見ても、確率が10%を割っているチームはAFCに5チーム(Jets、Dolphins、Bengals、Raiders、Broncos)あるのに対し、NFCは3チーム(Redskins、Giants、Cardinals)にとどまっている。FiveThirtyEightが出しているEloレーティングでも、AFC6チームに対しNFCは4チームだ。
 逆に得失点差のプラスが大きいのはPatriots(+89)、Cowboys(+53)、Ravens(+50)、49ers(+42)など。Patsは得点力もあるがディフェンスが3試合で3失点しか許していないのは驚異的だ。今週の14失点はSTとオフェンスの失点であり、つまりこのディフェンスはSuper Bowl以来4試合連続してTDを1つも赦していないことになる。もちろんどう見てもできすぎで、どこかで崩れる場面があると思う。
 個別のゲームで興味深かったのは、RavensのHarbaughがanalyticsを活用したアプローチを取ったと明言したことだろう。3回にわたる2pt-conversionへの挑戦と、4th downでの4回のgo for itがそれで、前者はともかく後者についてはこれまでNFLのコーチたちが消極的すぎると批判されていた部分だ。結果的に負けてはいるのだが、こうした積極策をanalyticsに基づくとはっきり述べるHCが登場したのは、それだけ時代が変わったということなんだろう。

 Over The Capが今年の各チームのサラリー状況についてまとめた記事を載せていた。年平均サラリーの高い順に各チームの上位15人を抜き出し、彼らのサラリーと年齢を散布図にプロットしたものだ。それによると図の右上、つまりトップクラスのサラリーも年齢も高いチームはそのシーズンに賭けている状態であり、逆に左下にいるチームは今年はろくに戦えない可能性があるちおう。
 最もサラリーが高いのはVikingsだ。彼らは右上の位置におり、つまり平均より高い年齢の選手に高額投資をしていることになる。今年うまく回らなければ、高齢化の進む選手の能力が低下し、優勝への「窓」が小さくなっているリスクがある。同様に右上にいるチームの中にはRamsやEaglesがあり、彼らも勝負できる残り期間は短くなりつつあると思われる。
 平均年齢が最も高いPatsは、逆にコストは安い。同じエリアにはChargersやRavensといったそれなりの強豪に加え、ちょっと意外だったがCardinalsとBillsも顔を出している。どちらも去年くらいから再建モードに入り、若返りを図っているのではと思っていたのだが、必ずしもそうでもないようだ。ベテランを安く雇って勝てるチームを作るのはPatriotsの十八番だが、それのまねをしようとしているのかもしれない。
 左上のチームはこれから収穫期を目指すチームと言える。Falconsがここに入っているのは驚きだったが、それ以外で言えば確かに再建期を経てそろそろ勝ち進もうとしているところが目に留まる。特に今年は49ersが久しぶりに上向きの成績を残しているし、Chiefsも引き続き強い。JaguarsやJetsは目指すべきところは同じでも、怪我だの何だので想定外に陥っている印象か。
 最後に左下だが、ぶっちぎりで安いチーム作りをしているのがDolphinsだ。また使えるベテランを次々と切り捨てたRaidersはリーグで最も若いチームになっている。基本的に再建モードのチームが多いように思うが、例外はTexans。来年以降のドラフトを捨てて今年に賭けているようだが、さてこのようなチーム構成できちんと勝ち残れるであろうか。

 さて今シーズンは簡単コンテンツとしてQB of decade、つまり「〇〇年代のQB」をやってみたい。特定の年代で最も活躍したQBを選ぶと誰になるかについてまとめてみる方法だ。QBをどうやって選ぶかという問題があるのだが、最もシンプルな方法としてPro-Football-Referenceが算出しているApproximate Valueを使いたい。他のポジションとの比較もできるのが理由で、QBの重要性が時代によってどう変わってきたかを見ることもできるのが特徴だ。
 問題はAVを算出しているのが1960シーズン以降にとどまっていること。つまり1920年代から50年代までの4つのdecadeについてはこれを使ったランキングができないのである。仕方ないのでその時代については他の指標もしくは主観で決めることにする。
 まずは足元の2010年代だ。といってもこちらはまだ後1シーズン残っているので、暫定順位ということになる。2010-18シーズンまでの累計AVを見ると、上位には以下のような面々が顔を出す。

Tom Brady 149
Drew Brees 145
Matt Ryan 142
Aaron Rodgers 136
Philip Rivers 124
Cam Newton 122
Ben Roethlisberger 114
Russell Wilson 114
J.J. Watt 108
Calais Campbell 107
Matthew Stafford 107

 見ての通り、上位は圧倒的にQBによって占められている。かろうじてWattとCampbellというDL選手が顔を出しているが、それ以外のトップ10は全てQB。NFLのパッシングリーグ化と、ディフェンスよりオフェンスが主導権を握るというゲームの特徴を突き詰めていくと、このような結果になってしまうのかもしれない。
 今のところ「2010年代のQB」はTom Bradyになりそうだが、トップと2位の差はたったの4ポイントなので、最終的に順位が入れ替わる可能性はまだある。Breesに続いてBradyまで怪我するような事態になれば、その下にいるRyanやRodgersあたりにもチャンスが出てくるかもしれない(多い選手になると1シーズンに20AVくらいたたき出すため)。ただし、誰がトップを取るにせよその選手がQBであることは間違いないだろう。足元はQBの時代と言ってもいいのかもしれない。
 ANY/A+で見れば上位にふさわしいのはBrady(120)、Rodgers(119)、Brees(118)といったところになるのだが、Rodgersは怪我によってフルシーズン出場できなかった時があり、結果としてほとんど休まず出てきたBrady、Brees、そしてRyanの後塵を拝することになった。休まず出てきたという点ではEli Manningも同じだが、こちらは逆にANY/A+が低すぎ(102)のため、上位には入っていない。つまりQB of decadeになるには成績&出場頻度の両方を満たす必要がある。
 興味深いのはトップ2人がいずれも「30代以上の年齢」でこの位置にたどり着いたこと。この2人が例外なのか、それともQBはむしろ30代の方がベテランとしていい成績を残せるのか、そうではなくスポーツ医学などの進展でキャリアが長くなった結果なのか、そのあたりは何とも言えない。
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