NFLはいよいよ2019シーズンの開幕戦が近づいてきた。各スタッツ系のサイトでもロースターカットを踏まえた今シーズンの予想が出てきている。いくつか紹介しておこう。
まずはFootball Outsiders だ。毎年7月に出版しているFootball Outsiders Almanacでも予想は出しているが、シーズン直前になると新しい情報を反映したデータを出すのが彼らの特徴。今年も開幕直前になったが、きちんと記事が掲載された。
Super Bowl優勝確率の高い順に並んでいるデータを見ると、トップにいるのがSaintsで、2番手がPatriotsだ。もしこの予想が当たるのなら、今年のSuper Bowlは40歳以上のQB同士の対決というおそらく史上初の事態が待っている。予想DVOAではSaintsの方が大きいが、予想の勝ち星数がどちらも10.2になっているのはスケジュール強度の差が原因だろう。実際、プレイオフ出場確率だけならスケジュールの楽なPatriotsがトップになる。
Patriotsのスケジュールが楽なのは、
同地区の残り3チームが去年に続き今年も残念だと見られている ため。最も予想DVOAの高いJetsが-5.1%(リーグ22位)、Billsは-10.6%(25位)、そしてDolphinsは当然ながら最下位の-30.6%だ。予想勝ち星数が5を下回るケースは滅多にないらしい。
プレイオフ出場を見るとAFCの地区優勝がPatriots、Chargers、Steelers、Texansで、ワイルドカードがChiefsとRavens、NFCは地区優勝がSaints、Rams、Eagles、LionsでワイルドカードがSeahawks、Cowboysだ。実に12チーム中10チームが昨年と同じ顔ぶれ予想となっており、戦力の固定化がAFCだけでなくNFCでも進んでいるように見える。トップ5チームは昨シーズンのベスト4に残ったチーム&12勝を挙げたチームであり、プレイオフチームの中でも順番が固定化している。
地区別の状況 を見ると非常に競り合っているのがNFC北だ。4チームとも22%以上の地区優勝確率を誇っており、かっこよく言えばデッドヒート、悪く言えばドングリの背比べとなっている。次に均衡度が高いのはAFCの南で、Luck引退により確率が急低下したColtsでも15%ほどの数字を確保している。逆にSuper Bowl有力候補がいるAFC東とNFC南はトップチームが5割以上の優勝確率を誇っている。
逆にドラフト全体1位の確率を見るとこちらはDolphinsが22.1%と圧倒的だ。
Tunsilらのトレード に続いて
Alonsoも放出 しており、どう見てもタンクモードに入っているのが理由だろう。ただし昨シーズンも圧倒的な最下位候補と言われていたJetsがそれなりに踏ん張ったことを思い起こすなら、絶対ドラフト全体1位になるとは限らないだろう。
次は
ESPNのFPI だ。こちらでSuper Bowl優勝確率が全体1位に入っているのはChiefsで、Patriotsは2番手、Saintsは3番手だ。DVOA予想に比べて上位陣ではEaglesの評価が高いのが目立っている。
プレイオフチームはAFCの地区優勝がChiefs、Patriots、Texans、SteelersでワイルドカードがChiefsとBrowns。DVOA予想に比べて違うのはBrownsがRavensの代わりに入っているだけで、後は西地区の優勝とワイルドカードが入れ替わっている程度。一方NFCは地区優勝がSaints、Rams、Eagles、Vikings、ワイルドカードがBearsとCowboysとなっており、こちらはVikingsとBearsが違っている。昨シーズンと比べるなら3チームが入れ替わる予想であり、やはり戦力の固定化が進んでいるように思える。
こちらの予想でも目立つのはDolphinsの数字だ。オフェンスのFPIが-5.6、ディフェンスが-1.6、STが+0.3となり、合計は-6.8に達している。彼らと彼らの次に悪いGiants(-5.5)との差は1以上空いているが、何より恐ろしいのは上位陣でも+6以上の数字を出しているチームが存在しないこと(Chiefsの+5.9が最多)。平均からの乖離で見ればトップチームよりさらに遠く離れているわけで、どれだけ評価が低いのかと感心させられるレベルだ。
それから
FiveThirtyEightのElo だ。こちらは昨年までと異なり、quarterback-adjusted Eloなるチェックボックスが新たに登場している。どうやら試合に先発するであろうQBによって予想を変えるシステムのようで、それを外した予想を見たければtraditional Elo forecastの方をチェックすればいい。予想を入れ替えると各チームのEloが微妙に変化することが分かる。
QBについて見たければ上の方にあるタブのうち
Quarterbacksをクリックすればいい 。各チームのロースターに入っているQBと、彼らのレーティングが図で示されている。例えばAFCだとRoethlisbergerの評価が非常に高い一方、JetsのDarnoldはColtsの控えであるHoyerとあまり変わらない水準だ。NFCでは何といってもRyanが突出している。
こちらのツイート によるとQBのデータは彼のスキルと、チームが彼をどのくらい使うかとの足し合わせによって決まるそうだ。RoethlisbergerやRyanが高い理由の一つには、彼らのパスが多いこともあるのだろう。もしLuckが引退していなければ、彼も高めの数字が出ていたと思われる。もちろんこの予想のキモは現時点での戦力への影響よりも、シーズン中にQBが交代した場合の影響をリアルタイムで見ることができる点にあるはずだ。実際にシーズンに入ってからが面白いのではないかと思われる。
話を戻してこちらのSuper Bowl優勝確率はトップがPatriots、次に少し離れてChiefs、以下Saints、Ramsと続くわけで、昨シーズンのベスト4チームがそのまま上位を占めている。一方、最下位はこれまたDolphinsだが、実はQBを抜いた予想だとCardinalsの方が数字が悪くなる。上で紹介した2種類の予想よりはDolphinsの評価が高いと見ていいだろう。
プレイオフチームはAFCの地区優勝がPatriots、Chiefs、Steelers、Texansで、ワイルドカードがChargers、そしてRavensかBrownsとなっている。NFCは地区優勝がSaints、Rams、Eagles、Bearsで、ワイルドカードはCowboys、Seahawksだ。Eloはどうやら昨シーズンの影響を引きずりやすい指標のようで、NFCのプレイオフチームは全く入れ替わらない予想になっている。QBを入れない予想にするとさらに昨シーズン以降の変化が反映されづらくなり、Coltsが地区優勝筆頭候補に入ってしまう。
チームの成績に与えるQBの影響が大きいことは間違いないし、予想をするうえでQBの入れ替わりを反映させる方がよりリアリティが出てくるのは確かだろう。だが他のポジションだって選手の入れ替わりはある。それをどこまで予想に組み込むべきかは予想を出す側の割り切りなのだろう。少なくともFiveThirtyEightの担当者はQBが入ればそれなりに納得感のある数字になると判断したのだと思う。
他には
Pro-Football-Focus のSRSなどがチーム力ランキングでよく見るものだが、こちらはシーズンが始まらないと数字が出てこないため、現時点でどのような予想かを述べることはできない。ただそれを除いて、全体としては昨シーズンと似たようなメンツがコンテンダーになるとの予想が多いのは事実だ。データを使うのではなくアナリストの主観などで語られるランキングではそうした「過去に引きずられがち」な傾向はよく見られるものの、データを使ったランキングでそれと似たようなものが増えてきたのは気になるところだ。
たまたま今がそういう時期、ということはあり得る。あと数年、いや来年にもまたデータ予想が大幅なランキングの入れ替わりを予想する時が来るかもしれない。だがそうではなく、例えばアナリティクスへの適応力の差がチーム力の差に直結するような流れが生まれているのだとすると、各種予想に出てくる「力関係の固定化」はさらに進むかもしれない。果たしてどちらに転ぶのか、いよいよシーズンが始まる。
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