レシーブとパレート

 しばらく前にFootball Perspectiveに載っていた記事がなかなか興味深い。ポジションではなくパスレシーブについてその数値を2つの視点で見ると、両者がかなりきれいな逆相関になるという話だ。
 見るべきデータはcatch rate(要はレシーブ率)とyards per catch。前者が高い選手は後者が低く、後者が高い選手は前者が低い。これはポジション別に考えれば分かりやすいだろう。セーフティーバルブで使われるRBはレシーブ率は高いがあまりヤードは稼がない。WR、特にアウトサイドの選手はレシーブ率は下がるが平均獲得ヤードは大きい。TEは両者の中間だ。
 ただし逆相関といってももちろんきれいに一直線に並ぶわけはなく、一定の幅の中に広がっている。結果、レシーブ率の割にはヤードが高い、あるいはその逆という優秀な選手たちも出てくる。彼らのことをこの記事ではパレート効率性(パレート最適)と呼んでいる。
 具体的にどの面々がこのパレート最適に当たるかは記事の冒頭に書かれている通りだ。グラフの中でも最も右上に近いところに並んでいる選手たちをパレート最適の例として取り上げている。この基準で見れば、例えばこのオフに話題になったABOBJは「最適」とまでは言えない選手となる。
 と言ってもグラフを見るだけだと大雑把な位置は分かるが、より具体的にレシーバーとしてどのくらい「いい」選手であり、「悪い」選手であるかを詳しく判断するのは難しい。もっとランキング化する方法はないのだろうか。というわけでやってみた。
 対象は記事と同じく1992シーズン以降に400回以上パスターゲットになった選手たち計314人。やはり記事と同じように散布図を作ったうえで、近似線とその数式を出してみた。結果は以下のようになった。

y=-24.936x+27.703

 この数式を以下のように変更する。

24.936x+y=27.703

 さらに右辺を100にすると概算で以下のような等式が成り立つことになる。

90x+3.6y=100

 レシーブ率を90倍し、それににY/Cの3.6倍を足し合わせる。この数字が100以上であればリーグ全体の水準よりいいレシーバーであり、下回れば悪いレシーバーと判断できるわけだ。また全然違うポジションの選手のどちらが優秀かも比較することが可能になる。この数値をレシーバーバリュー(RV)と勝手に名付けることにする。ちなみにこの散布図に基づくR自乗は0.6684(相関係数だと0.818)とかなり強い相関になっている。
 というわけでRVに基づく最も優秀なレシーバーたち(1992シーズン以降)の紹介だ。栄えある1位となったのは(ドラムロール)Devery Henderson! おめでとう!
 ……といっても誰のことかピンとこない人もいるだろう。実は私もそうだった。Hendersonは2004年の2巡でSaintsに指名されたWRで、2012年までSaints一筋でプレイしている。といってもシーズンで最多レセプションは51回。1000ヤード超えは1度もなく、All-Proはもとより、プロボウルにすら選ばれたことがない。Approximate Valueはキャリアトータルで41と、歴代のSaintsの選手たちで53番目に位置する。Saintsファンでないと名前も覚えていないような選手だろう。
 だが彼のRVは114.4ととてつもない高さに達している。少ないチャンスしか与えられなかったが、そのチャンスにおいては実はかなり素晴らしいレシーバーであることを実証した選手、だったとも考えられる。何せ名前も覚えていないのでどんな選手だったかさっぱり分からないし、wikipediaの記述も短い。まるでその実力を知られることなく舞台を去った「栄光なき天才」であるかのように見える。
 同じくプロボウルにすら選ばれなかったのが3位のMalcom Floydだ。Chargers一筋だった彼はHendersonと同じく2004年にプロ入りしたが、キャリアは彼より長かった。ただし16試合すべてに出場した年は2回しかない。RVは113.1と高いのだが、伝統的スタッツで見るなら1000ヤードシーズンも10TDもない。こちらもHendersonと同じく知られざる天才、だったかに見えなくもない。
 だがおそらくそうではない。それを証明するのが現役のKenny Stillsだ。全体12位の109.9というなかなかいい成績を残しているのだが、それを支えているのはSaints時代の2年間の好成績だ。Dolphinsに移ってからの彼のRVは103.3と、平均よりはいいがかなり地味な成績に下がっている。その差が生じた原因はもちろんQBにあると考えるべきだろう。またこの3人のターゲット数の少なさも、彼らの成績が極端になった一因だ。
 実際、RV上位にいるのは地味な選手ばかりではない、というかそうでない選手の方が多い。2番手には113.5という数字を叩きだしたRob Gronkowskiがきちんと顔を出しているし、4位には上位陣の中でもターゲット回数が1000回を越えるなど多くのQBに信頼されてきたDeSean Jackson(RVは113.0)がいる。
 Julio Jonesは112.9であり、目下売り出し中ともいえるMichael Thomasも111.9と高い数字を出している。彼らの後に続く選手も足元2年連続プロボウルのAdam Thielenの111.1、ドラフト1巡を2回動かしたBrandin Cooksの110.9と、それなりに納得感のある名前が出てくる。
 パレート最適には名前が挙がらなかったABもRVランキングでは22位の107.4、OBJは23位の107.1と、かなり上位に顔を出している。Randy Moss(107.0)よりもいいくらいだ。先日引退を発表したDoug Baldwinも15位(109.5)となかなかいいレシーバーだったことが裏付けられる。
 逆に実績に比べてRVが低い選手もいる。例えばAndre RisonのRVは96.1である。彼の場合はAll-Proになった1991シーズンがデータ範囲外になっているのが影響している可能性はある。HOFerのCris Carterも98.0と冴えない。こちらは1993シーズン以降に大活躍しているので、その意味では意外感は大きい。
 現役で最も意外なのは何といってもLarry Fitzgeraldの99.5だろう。彼ほどの選手がRVで見るとほぼ平均並みというのは予想外という人が多いのではないだろうか。もちろんこれは上位に顔を出している「地味」メンツと逆の理由、つまり「QBの差」だ。BreesやBrady、Riversのパスを受けていた選手たちが上位にいる一方、Fitzgeraldはキャリアの大半において格下のQBたちからパスを投じられていた。

 なおこのデータを見て思ったのが、直近5年間に3回優勝したPatriotsの選手が意外に上位に多いことだ。GronkとCooksは既に紹介したが、それ以外に9位にJosh Gordon(110.5)も顔を出している。歴代トップ10のうち3人が関係していたことが、足元も彼らの好成績に何らかの寄与をしている可能性はある。それにしてもGronkはやはりTEとしてはかなり規格外の選手だったのは間違いないだろう。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント