ドラフト後

 ドラフトが終わり、次に注目すべき日付は5月7日と言われている。FA選手が補償ドラフトの対象から外れるのがこの日を過ぎてからであり、補償ドラフト権を失いたくないチームはこの日を過ぎるまで次の動きを見せられないという理屈だ"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56919585.html"。AnsahやSuhといった、高い評価にもかかわらず未だに行き先が決まっていない選手たちが、このタイミングで動き出すと見られている"https://ftw.usatoday.com/2019/04/nfl-free-agents-compensaotyr-picks-may-7-ndamukong-suh"。
 実際、ドラフト後にAnsahがSeahawksを訪問しており"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001029048/article/"、期限後を睨んだ就職活動が始まっている。過去であればほとんど気に掛けられることがなかった日付が浮上してくるあたりは、チーム作りの時点で少しでも相手を出し抜こうとする取り組みがもたらす副次効果だろう。ただし、既に来年の指名権を14個も抱えているPatriotsの徹底ぶり"https://sports.yahoo.com/patriots-collection-2020-nfl-draft-172344944.html"に比べれば、まだまだ不十分に見えてしまうところもあるが。
 補償ドラフト権の効果は知られすぎており、おそらく今後は以前ほどの効果をもたないのではないかと思う。もちろん過去にはそれがチームにプラス効果をもたらしていたことは事実"http://www.sharpfootballanalysis.com/blog/2019/when-the-nfl-gives-away-draft-picks-you-better-take-them"だが、補償ドラフト狙いのチームが過半数を超えた時点で補償優先のチーム作りはむしろ過当競争が心配される方法になっている。
 次の注目日に動きだすチームはおそらく例年より多いだろう。しかしここで焦って余り物FAに高額投資をするようなチームは、きちんと哲学を持ってチーム作りに取り組んでいるというより、単に流行に乗って動いているだけの可能性がある。応援するチームの先行きとかGMの能力を見るうえで、補償後FAに対する彼らの姿勢は大きな判断材料になるのではないか。
 もう一つ、注目が集まるのはドラフト後に各チームでカットもしくはトレード対象になりそうな選手の行方だ。Bill Barnwellは既に32チーム全てについて、カット候補の名を挙げている"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/26632732/"。基本的にドラフトでニーズが埋まったポジションの選手が候補になっているが、あくまで外部から見た予想でしかないわけで、基本的にはオフシーズンの暇つぶしコンテンツと考えるべきだろう。
 同じことをOver The Capもやっている"https://overthecap.com/contracts-in-question-after-the-2019-nfl-draft/"。こちらは別に32チーム全てを対象にしているわけではないが、真っ先に出てくるのはEliだ。全体6位でQBを指名するということは、普通に考えてそういうことなのだが、EliがFAでチームを去るとしても「2021年の5巡補償ピック以上のものをGiantsに生み出すことはない」という指摘はなかなか冷徹ではある。
 続いてJaguarsの選手が3人並ぶという面白い事態に。別に3人がそろってクビになると予想している訳ではなく、Josh Allen指名によって余ったEdgeの誰かが放出されるか、あるいはEdgeからDTへのシフトが起きてDTのDareusが放出される可能性があるという理屈だ。キャップのきついJaguarsならではの指摘だろう。
 Over The Capは去年も同じ予想をしている"https://overthecap.com/contracts-question-2018-nfl-drafts-1st-round/"のだが、2年連続で名前が挙がっているのがFlaccoだ。去年はRavensによるJacksonの1巡指名があったので当然だが、今年もBroncosが2巡でDrew Lockを指名したため、back-to-backで尻に火が付くことになった。去年と違って今年のFlaccoはデッドマネーが発生する余地が全くないため、BroncosがLockで行けると判断すればあっさり切られる可能性は十分にある。
 なお1番最後に出てくる名前は、正直言ってドラフト以前の問題ではあろう。確かにChiefsはドラフトでいの一番にWRを指名したが、それはむしろHillをチーム活動から外す決断をせざるを得なかった"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001028165/article/"ことを受けての対応だ。Huntに2度目のチャンスを与える"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001017583/article/"くらいだからリーグ関係者の中にDVを何とも思っていない者が一定数いることは間違いないのだが、それでもHillが何の咎めも受けずに済むと考えるのは無理があるだろう。

 各チームの首脳部は、FAやドラフトを通じた選手編成を進める一方、秋に向けてどのようなゲームを展開すべきかも考えているところだろう。昨シーズンはリーグが一段とパスハッピーな方向へ向けて動いたシーズンだったが、「まだだ、まだ足りない、もっともっと」と主張しているのがこちらの記事"http://www.sharpfootballanalysis.com/blog/2019/nfl-offenses-turned-to-the-pass-in-2019-and-turned-the-corner"。
 Warren Sharpについては以前にも紹介している"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56885122.html"が、彼によると2018シーズンは「前半の1st downにおけるパスの比率が最も高かった」ところに特徴があるのだという。確かに最初に出てくる表を見ると2016シーズンを除いて5割を超えることがなかったパス比率が、昨シーズンは51.5%にまで高まっている。もちろんSeahawksのようにやたらとランヘビーなチームもあった"https://fivethirtyeight.com/features/you-called-a-run-on-first-down-youre-already-screwed/"が、全体として見れば「ランの確立」よりパス優先へと考えを改めるチームが増えている様子が窺える。
 それよりも重要なのはパス効率と一緒にランの効率も上がっていること。パスのY/Aは驚愕の8.2ヤードに達しており、そしてランのY/Cも4.79とこれまたかなり高い水準に上がっている。そしてその理由としてSharpはpersonnel、つまりオフェンスのメンツに関する話を紹介している。
 今や事実上のデフォルトとなっている11 personnelだが、実はこのメンツを揃えた時のランプレイはかなり効果的だそうだ。ランプレイのうち成功扱いとなる比率は52%あり、Y/Cも4.8となかなかに高い。Patriotsや49ersなど特定のチームが多用し、ランで大きな効果を上げている21 personnel(2RB、1TE)と比べてもあまり遜色のない効果的なランを展開できている。11を見たディフェンスは5DBで対処しようとし、結果的にboxの数が減ることがランにとってプラスになっているようだ。11からランを展開する比率も増えている。
 さらに興味深いのはパスとpersonnelとの関係だ。WRを3人配置する11の時は7.5Y/Aしかないのに、12や21だと8.5ヤード前後までパスの効率が向上し、WRを1人しか置かない13や22ではさらにこの数字が高くなる。1st downのパスのうち11から投じられたものが62%を占めていたのに対し、12からは21%、21からはたった9%だったそうで、相手が予想しないメンツからのパスほど効果的であることが数字に表れているという。
 Sharpはここにまだ改善の余地があると見ている。各チームとも、もっとWRの少ない状況からパスを、多い状況からランを繰り出すべきである。12からパスを出したチームは一部を除いて高いsuccessとY/Aを記録している。TEを2人配置し、いかにもランを重視していますというメンツからパスを出せば、それだけ相手の裏をかいていいパスを出せる。Sharpはそう主張している。
 1st downからパスを投じ、それが大きな効果を上げていたチームとしては、ChiefsやVikings、Buccaneers、Saintsなどがある。必ずしも有能なQBがいるわけではないチームでも、それなりにいい成績を残していた例はあるのだ。一方でSteelers、Coltsのようにパス比率が高くてもリーグ平均並みかそれ以下のチームもいるので、1st downのパスが常に成功するとは限らないが、トータルとして見れば効果は期待できるということだろう。
 彼のサイトは細かいデータを見ることができる点ではありがたいのだが、細かく分類しすぎていて母数が小さくなる傾向がある。その意味でも個別チームの傾向を探ろうとするより、リーグ全体の動向を見る方に向いているデータだと思われる。
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