reach? steal?

 2019年のNFLドラフトが始まった"https://www.nfl.com/draft/"。既に2日目まで進んでいるが、Murrayが全体1位で指名され"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001027977/article/"、Rosenがたった1年でDolphinsへトレードされる"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001028416/article/"など、なかなか楽しい流れが生じている。
 今年はドラフトの会場になっているNashvilleに大量の見物人が集まっている"https://www.facebook.com/ESPN/videos/2243574372574212/"ようで、Goodellはさぞやホクホクだろう。これだけ客が集まっているのだから、ブーイングも彼の耳にはきっと天上の音楽のように聞こえているに違いない。興行としては大成功である。
 一方でこれだけの客を飽きさせないだけの面白い興行を打つ必要もある。その意味ではCardinalsが1年でドラ1QBを入れ替えてくれたのは大変ありがたかったのではなかろうか。残念ながら一部で期待されていた「2年連続ドラ1指名QBを競争させる」"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56902890.html"展開は成立しなかったが、確率的にはともかくやはり現実には成り立ちづらい策なのだろう。
 Rosenの行き先となったDolphinsは、引退が近いベテランの後釜を狙う以外ではここしかないと思われるチームだ。このトレードをsteal(低い指名順でいい選手を指名すること)を評価しているのがBill Barnwell"http://www.espn.com/nfl/draft2019/story/_/id/26611021/"。Rosenの酷い成績は彼だけの責任とは言えないこと、まだ母数が全然少ないこと(QBの実力を測るにはせめて1000パス試投は見たい"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/18741560/")、安いルーキー契約が一段と安くなるため控えレベルの成績しか残せなくとも採算は合うことなどが理由だ。
 そしてRosenが来たことにより、2018年ドラフト1巡QBは全員AFCに集まることになる。しかもそのうち3人はAFC東だ。Bradyは今シーズン、この5人のQBと合わせて8試合する可能性がある"https://profootballtalk.nbcsports.com/2019/04/26/patriots-now-have-three-2018-top-10-quarterbacks-in-the-division/"わけで、これまたなかなか愉快な展開と言える。彼らのうち果たして何人が、将来BradyのようなAFCを代表するエースになれるのだろうか。

 もちろん評価が定まるまでに時間がかかるのは彼ら去年の1巡指名QBだけではない。ドラフト指名が本当にreach(もっと後でも指名できる選手を高い指名順で取ること)なのか、stealなのかを判断するのは、せめてルーキー契約が終わるまで待つ必要がある。まして1度もNFLでプレイしたことのない選手ばかりである今年のドラフト結果についての評価など、本来は笑止千万だ。
 にもかかわらず今年も各所で早速ドラフトに関する評価がなされている("https://www.theringer.com/nfl/2019/4/25/18516426/"など)。一応、理屈はある。基本的にドラフトにおいては個人の判断より一般通念の方が正しい傾向が強い。だからこそドラフトがcrapshootになってしまうわけで、一般的には通念に逆らわずに指名していった方がトータルで上手くいく可能性が高い。そうした過去の傾向を踏まえ、今年の指名についても一般通念が正しいと考えれば、そこから外れた指名を厳しく評価することが可能に見える。
 だがそれはあくまで全般的な傾向についての話でしかなく、個別の指名がどれだけ正解でそれだけ不正解だったのかはやはりプレイさせてみないと分からない。実際、後から振り返ってみればドラフト前の評価にも必ず間違いは含まれている("https://www.footballoutsiders.com/nfl-draft/2019/2013-nfl-draft-six-years-later"など)。現時点で今年の個別ドラフト選手について、reachかstealかを判断するのはやはり不可能なのだ。
 それでも敢えて判断するとしたらどんな方法があるだろうか。ESPNは今年からドラフト候補について、彼らが「Pro Bowler」「Starter」「Backup」「Replacement」「Non-Factor」になる確率を算出するようになった"https://twitter.com/SethWalder/status/1121599026212814850"。あくまでグラフ表示で具体的な数字は分からないのだが、このデータを使って1巡で指名された選手を評価し、それと指名順位との差から「reach」「steal」を判断するとどうなるか、見てみよう。
 まずPro Bowlerになる確率が最も高い選手について、高い順番に並べる。似たような水準の場合はStarterの数字で順位付けをする。次にStarterの確率が最も高い選手について、やはりPro Bowler確率の高い順番に並べる。これで1巡指名選手のうち22人についてはランク付けができる。Starter確率が一番高く、次にPro BowlerとBackupがほぼ同水準で並んでいるJacobsを23位とし、Starter確率が一番高いのだが次に高いのはBackup確率という選手について、Starter確率の高い順に並べる。最後にBackup確率が最も高いJonah Williams、Replacement確率が最も高いDaniel Jonesを置き、残念ながらデータのないSimmonsは調査対象外とする。すると選手の評価は以下のような順番に並ぶ(左から名前、指名順、指名チーム)。

Devin White 5 Buccaneers
Devin Bush 10 Steelers
Chris Lindstrom 14 Falcons
Andre Dillard 22 Eagles
Dexter Lawrence 17 Giants
Noah Fant 20 Broncos
T.J. Hockenson 8 Lions
Nick Bosa 2 49ers
Rashan Gary 12 Packers
Garrett Bradbury 18 Vikings
Quinnen Williams 3 Jets
Josh Allen 7 Jaguars
Marquise Brown 25 Ravens
Ed Oliver 9 Bills
Darnell Savage 21 Packers
N'Keal Harry 32 Patriots
Brian Burns 16 Panthers
L.J. Collier 29 Seahawks
Kaleb McGary 31 Falcons
Johnathan Abram 27 Raiders
Christian Wilkins 13 Dolphins
Deandre Baker 30 Giants
Josh Jacobs 24 Raiders
Tytus Howard 23 Texans
Montez Sweat 26 Redskins
Kyler Murray 1 Cardinals
Dwayne Haskins 15 Redskins
Clelin Ferrell 4 Raiders
Jerry Tillery 28 Chargers
Jonah Williams 11 Bengals
Daniel Jones 6 Giants

 見ての通り、ESPNの評価と指名順とはあまり相関していない。下位指名のDillardやFantが高い評価を受けている一方、トップ指名のMurrayや上位のFerrell、Jonesは惨憺たる評価だ。
 単純にここからstealを探せば、まずはDillardが、続いてHarry、Fant、Brownあたりがその候補になるだろう。ただし彼らのうちDillardはトレードアップしての指名であり、そこに投じたドラフト資源は実際にはもっと多い"http://www.footballperspective.com/analyzing-the-trades-in-the-first-round-of-the-2019-draft/"。それを考えるとDillardの指名はそれほど大きなstealとも言えなくなる。
 代わりにトレードダウンのうえで有望選手をつかんだFantやBrownのケースこそが本当のstealと考えられる。つまり1巡で上手くstealをやった可能性が高いのはBroncosとRavens、そしてPatriotsあたりなのだ。さらにGiantsによるLawrence指名、FalconsによるMcGary指名もstealになる可能性が高い。
 ではreachといえるのはどれか。まずは2人のQB指名、つまりCardinalsのMurrayとGiantsのJonesはreachと見ていい。またRaidersのFerrell指名と、BengalsのWilliams指名もかなりのreachだ。後は一般的にはどちらかというとstealと見られているが、RedskinsのHaskins指名も今回の調査だと明確にreachになってしまう。あくまでも「現時点でそうなる可能性が高い」というだけだが。
 そう、結局のところ現時点でドラフトが成功しているのか失敗しているのかは誰にも完全には分からない。だから今はまず指名されて選手たちを寿ぐのが正しいのかもしれない。Mayfieldのように"https://twitter.com/bakermayfield/status/1121632860933242881"。
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コメント

No title

loc*_l*ca2*
NFLを数値的に分析する記事、いつもとても興味深く読ませていただいております。
ESPNの確率算出は面白い試みですね。ややブラックボックス的ではありますが・・・
私見ですが、この確率からReachSstealかを論ずるには、ポジションに由来するファクターをかける必要があるように思います。
昨年のQuenton Nelson(ガード)が間違いなくAll-Pro級と目されながら全体1位候補にはなりえなかったように、ポジションごとの価値がかなり影響を与えていると思います。
指標として何が適当なのかはわかりませんが、例えばフランチャイズタグの金額をかけるとどうなるのでしょうか(ILBとedgeが区別されてないからダメか)。
今後も分析的な記事を楽しみにしております。

No title

desaixjp
ご指摘の通り、ドラフトでの指名順位はポジションに影響を受けます。そのあたりは以前紹介したVAMPからも窺える通りです。
QBの評価が指名順位より低いのも、QBのコストが高いことが理由でしょう。単価の高いポジションだけに、実力以上に高い順位で指名されやすいのは間違いありません。逆にコストの安いILBは指名順が低くなりがちなんでしょう。
ただしポジションの違いを考慮に入れてreachかstealかを調べるのは、言うは易く行うは難しだと思います。何しろポジションごとのウエートの置き方も年によって違っていますし。
http://www.footballperspective.com/the-2019-nfl-draft-value-by-position-the-big-bodies-are-on-defense/
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