QBの衰え?

 Bill BarnwellがBridgewaterの契約に絡んで面白いことを指摘している。こちら"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/26152205/"の3月14日の記事にあるのだが、Bridgewaterが先発の可能性があるDolphinsとの契約を避け、Saintsの控えとして再契約した背景について、Breesの2018年の成績に「面白いもの」があるというのだ。
 それはシーズン前半の11試合と、後半及びプレイオフを含めた6試合の成績比較だ。前半のBreesはまさにMVPクラスの活躍をしており、レーティングは127.3、QBRは88.2を記録していたのだが、後半の彼はそれぞれ88.7、55.4に数値が低下し、「まるでMcCownのようにプレイしていた」。そう、まるでいきなりタンクが空になったかのように成績が急低下したのだ。
 当然BarnwellはPeyton Manningの例を持ち出している。彼も2014シーズンの終盤から成績が落ち込み、翌シーズンが終わったところで引退した。つまり「崖」を一気に転げ落ちたのである"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56870242.html"。もちろんBarnwellはBreesが崖を落ちているとまでは言っていない。これが一時的不調なのか、それとも「終わりの始まり」なのかは19シーズンの何試合かを見る必要がある。
 とはいえ既に40歳になっているBreesが崖を転がり落ちる可能性は若いQBたちよりはずっと高い。もちろん同じことはBreesより年上のBradyにも言える。彼の2018シーズンの成績が17シーズンより低下していたのは間違いない。いったい彼らの成績はどのくらい落ちているのか、他の方法で調べることはできないだろうか。
 そこでNext Gen Stats"https://nextgenstats.nfl.com/"だ。以前にも紹介した"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56889544.html"このスタッツは、試合ごとのデータも手に入れることができる。この2人のQBについてデータが存在する2016シーズン以降の全試合(プレイオフ含む)を対象に調べ、彼らの成績がどのように変化しているかを見てみよう。
 なおBradyの2017シーズン第3週だけデータが一部欠落しているため、この試合は調査対象外とした。これを除くとBreesもBradyも3年で同じ52ゲームに出場していることになるというメリットもある。

 まずNext Gen StatsとQBレーティングとの相関係数を調べる。QBレーティングは(ANY/Aほどではないが)得点や勝敗との相関が高いため、これと相関の高い指標はQBの能力を見るうえで重要だろうからだ。調べてみるとBrady、Breesとも高いのがxCOMP%の+/-(Breesは+0.694、Bradyは+0.680)、AYD(+0.329と+0.323)、そしてTT(-0.276と-0.216)あたりだ。
 BreesだけならCAY(+0.377)やAYTS(+0.260)もそこそこ高いのだが、Bradyはそれぞれ+0.065、-0.115と低くなってしまう。逆にAGG%(-0.410)やxCOMP%(+0.294)はBradyが高いものの、Breesはそれぞれ+0.049、-0.022と低い。従ってこれらのデータを使うのは避けておく。
 1試合単位だとデータのブレが大きく傾向が読み取りづらいため、以下では5試合移動平均線を使って両者の最近3年間の動きを見る。まずxCOMP%の+/-だ。



 見ての通り基本的にこの数値はBreesが高い。xCOMP%はリーグ平均だとどのくらいのパス成功率が期待できるかを示したものであり、その+/-はリーグ平均よりどれだけコントロールがいいか悪いかを示していることになる。Breesは明らかにコントロールがよく、Bradyは平均並みだ。
 足元ではどちらの数字も右肩下がりだが、Bradyが3年間じわじわと低下を続けているのに対し、Breesはあくまでボックス圏内の下限に近い水準である。このデータを見る限り、Bradyのコントロールは40歳代に乗せるとともに明白に下がっているが、Breesはまだ底割れしたとまでは言えない。衰えが見られるのはBradyの方であってBreesではない。
 次にAYD。



 こちらも基本的にBreesの方が高い水準をキープしている。もともとBreesはあまりディープには投げず(つまりAverage Intended Air Yardsは短め)、代わりに高い成功率を達成するタイプのQBなので、パス成功時のAir Yardsとの間にあまり差が出ない。一方BradyはBreesよりはディープに投げるQBであり、だからAYDはマイナスが大きくなりやすい。
 従ってここは絶対値もさることながら時系列での変化を見た方がいい。Bradyの足元の数字はボックス圏の真ん中あたりであり、特に最近になって成績が落ち込んでいる様子はない。それに対しBreesは昨シーズン前半に過去3年間のピークを付けた後で急落し、足元はボックス圏の下限を下回っている。株価用語で言うなら「底割れ」状態で、しばらくは下値を探る展開になる恐れがある。つまりこのデータだとBreesの方が崖を転がり落ちる懸念が強いと言える。
 最後にTTだ。



 両者対照的な動きを示している。Bradyが足元ほど短時間で投げる傾向が強いのに対し、Breesは明確にパスを投じるまでの時間が右肩上がりで増えている。どちらもリーグ内では早めにボールを手放すことができるQBだと言えるが、ここでは年齢に伴う判断速度の低下が見られるのはBreesの方になる。上にも述べた通りTTとQBレーティングの相関はマイナス、つまり早く投げるQBほどレーティングが高くなる可能性が高い。これまたBradyよりBreesの方が悪いデータだと言える。
 それなりの相関があるxCOMP%ではBradyが、弱い相関しかないがAYDとTTという2つの指標ではBreesが、それぞれ悪化傾向を見せている。Bradyはコントロールに、Breesはパスの飛距離と判断速度に、それぞれ弱点が表れつつある一方、Bradyの場合は飛距離と判断速度の面で、Breesの場合はコントロールの面でいまだに明確な衰えを感じさせていないわけだ。
 この3つのデータ全てが悪化を示していれば、そのQBが崖を転がり落ちている可能性はかなり高いと言えそう。だがBreesもBradyもまだそこまではっきりとした傾向を見せてはいない。40代のQB2人が衰え始めている可能性は十分にあるが、それが間違いないかどうかを確認するには2019シーズンのプレイぶりを見る必要があるのだろう。
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