ドラフトQB

 さて、今年もまたドラフト全体1位でQBが指名された。1998年以降の10年間のドラフトで、トップ指名を受けた選手がQBだったケースは実に8回を占める。そのうち、今も指名チームに残っているのは今年指名分を含めるなら6人。歩留まりはいいように思えるが、残っている選手の中にVickやEli Manningがいるのを踏まえるとそんなにいい訳でもない。全体1位に相応しい活躍をしていると断言しても構わないのはPeyton ManningとPalmerくらいだろう。
 ドラフト上位指名がプロでどのくらい活躍できるかは、大学時代の先発試合数とパス成功率で分かる。Pro Football Prospectus 2006はそう主張している。実際、Peyton ManningやPalmerはいずれも45試合と先発試合数は多い。それに対しVickは19試合、Leafは24試合だ。ただ、いくら先発試合数が多くてもパス成功率が低いとダメ。40試合以上先発した選手たちの中でもMcNown(55.5%)、Plummer(55.4%)、Boller(47.8%)などはプロで大活躍という訳にはいかなかった。

 では今年のドラフト上位QBはどうなのだろう。今年は2巡までに計5人のQBが指名されている。この数は2006年と同じで、ここ10年の中では多い方に属する。1巡指名が2人だけだったので地味な印象もあるが、プロ先発を期待されて入ってきたQBという意味ではそこそこ多かったと見ていいだろう。以下は指名順位とチーム、選手名、大学時代の先発試合数、パス成功率だ。

1巡
1位 Oakland JaMarcus Russell 29 61.8%
22位 Cleveland Brady Quinn 45 58.0%
2巡
36位 Philadelphia Kevin Kolb 50 61.6%
40位 Miami John Beck 38 62.4%
43位 Detroit Drew Stanton 29 64.2%

 カレッジのスタッツというのはネットでもあまりいいのが見当たらない。特に問題は先発試合数。パス成功率はNCAAsports.com"http://www.ncaasports.com/football/mens"で見つかるのだが、先発試合数はまとめて掲載しているところがないのだ。各チームのサイトを見ても、載せているところと載せていないところがある。とりあえず上の5選手についてはそれらしい数値を載せているが、一部あやふやなところもある。
 一見して目立つのはRussellとStantonの先発試合数の少なさ、及びQuinnのパス成功率の低さだ。逆にかなり良さそうに見えるのはKolb。Philadelphiaの場合はMcNabbという選手がいるので2巡上位でのQB指名には疑問を呈する向きもあるようだが、単純にQBだけを比較した場合には、上位指名の中で最も期待できそうに思える。
 もう少し詳しく見てみよう。先発試合数とパス成功率について、過去のドラフト上位指名QBで最も近い数値を残している選手を並べてみる。

先発試合数
Russell-29 (Quincy Carter-29, Joey Harrington-28, Rex Grossman-31, J.P.Losman-27)
Quinn-45 (Peyton Manning-45, Carson Palmer-45, Donovan McNabb-45, Jay Cutler-45)
Kolb-50 (Chad Pennington-51, Philip Rivers-51)
Beck-38 (Ben Roethlisberger-38, Drew Brees-37, Eli Manning-37)
Stanton-29 (Quincy Carter-29, Joey Harrington-28, Rex Grossman-31, J.P.Losman-27)

パス成功率
Russell-61.8 (Vince Young-61.8, Peyton Manning-62.5, Drew Brees-61.1)
Quinn-58.0 (Charlie Batch-58.0, J.P.Losman-57.8, Donovan McNabb-58.4)
Kolb-61.6 (Vince Young-61.8, Drew Brees-61.1, Kellen Clemens-61.0, Rex Grossman-61.0)
Beck-62.4 (Peyton Manning-62.5, David Carr-62.8, Vince Young-61.8)
Stanton-64.2 (Daunte Culpepper-63.9, Jason Campbell-64.6, Aaron Rogers-63.8)

 先発試合数の方ではKolbやQuinnのところになかなかいい選手が並んでいる。Beckも悪くないが、RussellとStantonは厳しそうだ。パス成功率になると60%を越えている4人はともかく、Quinnのところに並んでいる選手が少しつらい。
 さらに、Pro Football Prospectusに載っている選手の先発試合数とパス成功率をそれぞれ偏差値化し、その合計数値と今年ドラフトされた5選手を比べてみよう。5人の合計偏差値は以下のようになる。

Russell 99.6
Quinn 108.5
Kolb 122.0
Beck 110.8
Stanton 105.0

 通常、偏差値は50が平均だ。この場合は二つの偏差値を合計しているので、100あれば過去のドラフト上位指名QBの平均に達していることになる。
 この合計偏差値でも最も優秀なのはKolbということになる。過去の例を見るならPennington(126.9)とCulpepper(120.7)の間に挟まることになるのだが、この2人はいずれも1年間だけ1部校以外のところでプレイしているので単純に比較はできない。そこで彼らを除いて見ると、KolbはRivers(127.4)とPeyton Manning(118.6)の間に顔を出すことになる。これは実にいいポジションだ。
 次に評価が高いBeckはPalmer(111.0)とMcNabb(109.4)の間。ただこの2人はいずれも試合数が45とBeckより多い。Beckと似たような試合数で、なおかつ合計偏差値の近い選手を探すとCampbell(39試合、116.8)やBrees(37試合、106.8)となる。これまたそう悪くない。
 QuinnはMcNabbとCouch(107.1)の間。ただしCouchは先発25試合とQuinnより圧倒的に試合数が少ない。試合数が近いのはCutler(45試合、106.8)になる。StantonはEli Manning(106.1)とVince Young(102.9)の間だ。試合数が近いのはYoung(32試合)の方。この辺りになるとQBとしての成功度は微妙になってくる。
 合計偏差値が最も低いのは、全体1位指名のRussell。彼のポジションはGrossman(100.0)とCarr(98.6)の間だ。試合数で見てもGrossmanが31試合、Carrが26試合と似通った数値になっている。なんでこんな選手がドラ1指名になるのかとクビをかしげる人もいるかもしれないが、過去を見てもVick(76.9)、Carrのように彼より低い合計偏差値で全体1位指名を受けている選手がいるのだから別に不思議はないだろう。
 結論を言うなら、スタッツ的に見て今年一番上手いQB指名をしたのはMiamiになる。数字だけ見ればPhiladelphiaの方がいいのだが、不動の先発QBがいる状態なのでその分を差し引く必要があるだろう。逆に一番拙いQB指名をしたのはOakland。もしこの見通しが当たるようなら、ご愁傷様。

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