19スケジュール強度

 2019シーズンはNFLにとって100年目のシーズンとなる。そのため、通常の年とは違い開幕のThursday Night Gameは歴史の古いBearsとPackersの対戦に差し替えられた"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001024147/article/"。「歴史が古いというならなぜCardinalsを出さない」という意見は当然出てくると思うが、彼らは19シーズンにBearsともPackersとも対戦が予定されていない。古いチームで対戦があるところとなると、BearsとPackersになってしまうのだろう。
 Cardinalsの歴史はこちら"http://prod.static.cardinals.clubs.nfl.com/assets/clubimages/09mg/7-TeamHistory.pdf"で見ることができる。1898年に設立されたMorgan Athletic Clubは1901年からCardinalsの愛称で呼ばれるようになった。1906年には対戦相手の不足によって一度解散されるが、1913年には再結成され1917年にChicago Football Leagueで優勝を遂げた。戦争やインフルエンザの影響でまたも解散されたCardinalsは1918年にまたまた復活し、1920年にはAPFA(のちのNFL)の創設に参加することになった。
 この創設メンバーであった現存チームは彼ら以外にはBears(当時はDecatur Staleys)しかない。Packersは創設自体は1919年だがAPFAに参加したのは1921年から"https://en.wikipedia.org/wiki/1921_Green_Bay_Packers_season"。だから本気で100年目を祝うのなら真にふさわしいのはCardinalsとBearsの試合になるはず。残念ながら彼らは2018シーズンに試合を行っており"https://www.pro-football-reference.com/boxscores/201809230crd.htm"、次に彼らのdivisionが相対するのは2021シーズンになってしまう。
 100年目の記念という切り口だけでなく、チーム力という点でも足元のCardinalsはいささかプライムタイムに登場させるには力不足の感が否めないことは確かだ。開幕戦の時点でそのことを気にする人はあまり多くないと思うが、前シーズンに地区優勝を果たしたBearsとスターQBを抱えるPackersの試合に比べて全国中継をする魅力が一段落ちることは間違いない。残念ながらCardinalsがハブられるのは避けられそうにないようだ。

 ちなみに2019シーズンについては、18シーズンの成績に基づくStrength of Scheduleの記事が既に出てきている"https://www.vikings.com/news/where-vikings-rank-in-2019-strength-of-schedule"。そもそも勝率は必ずしもチームの実力を示すとは限らないし、1年たてばチームの力も変わるだけに、この手のデータは額面通りには受け取らない方がいいのは確か。それでも大雑把に楽な相手が多いのはどの地区で、逆に厳しい相手が待っているのはどの地区であるかを把握するのには役に立つ。
 実際、このスケジュールで楽な方を見ると上位10チームのうちAFC東とNFC東がそれぞれ3チームずつ含まれているのが目立つ。彼らは19シーズンのインターカンファレンスゲームで相互に対戦することになっているのが特徴だ。即ちこの2地区のうちどちらかは、特に対戦相手に楽をさせるようなチームが揃っている地区、ということになる。
 単なる勝率ではなく、もっと使えそうな指標でスケジュール強度を調べるとどうなるだろうか。既に2017年にはPro-Football-Reference"https://www.pro-football-reference.com/"のSRSを使って調べている"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56243248.html"し、2018年にはNFL FPI"http://www.espn.com/nfl/story/_/page/Football-Power-Index/espn-nfl-football-power-index"にスケジュールの強度を加えた予想を算出している"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56687715.html"。同じことをやるのはつまらないので、今年は別の方法を試してみよう。
 使うのはSRS、FPIの他にFootball Outsiders"https://www.footballoutsiders.com/"のDVOA、及びFiveThirtyEightが算出しているElo Rating"https://projects.fivethirtyeight.com/2018-nfl-predictions/"。この4種類の指標について2018シーズンの数値をz-score化し、チームごとにその平均値を出してみる。そしてスケジュールが楽な方から並べると、結果は以下のようになる。

Patriots -1.95
Giants -1.71
Jets -1.44
Bills -1.15
Eagles -1.09
Bengals -0.96
Steelers -0.79
Ravens -0.76
Redskins -0.73
Rams -0.67
Browns -0.63
Seahawks -0.35
Cowboys -0.19
Dolphins -0.07
Saints -0.01
Lions +0.12
49ers +0.19
Panthers +0.25
Chargers +0.26
Colts +0.49
Packers +0.53
Falcons +0.67
Buccaneers +0.68
Titans +0.76
Vikings +0.77
Jaguars +0.79
Broncos +0.92
Chiefs +0.93
Bears +0.98
Cardinals +1.02
Raiders +1.51
Texans +1.67

 歴史の古いチームがかなりスケジュールの厳しい方に並んでいるのが目立つが、それより重要なのは楽な方に顔を出しているAFC東の3チーム、NFC東の3チーム、そしてAFC北の3チームだ。これら3地区が共通して複数の対戦を行う相手は他ならぬAFC東。つまり2018シーズンのAFC東はそれだけ対戦相手に楽をさせるチームが多かったという結論になる。
 もちろんその原因はPatriots以外の3チームにある。彼らは4つの指標すべてでリーグワースト10に顔を出している。つまりNFC東やAFC北は彼らリーグ下位チームと3試合を行う権利を与えられていることになるし、地区内対戦があるAFC東のチームも少なくとも4試合、多ければ6試合、これら弱体チームとの試合が組まれることになるわけだ。
 Patriotsのスケジュールが最も楽な評価になっているのも、それが大きな理由だと思われる。2番目に楽なGiantsは地区最下位であり、それだけ地区外では楽な相手と対戦できる(その中にはドラフト全体1位を取ったCardinalsも含まれる)にもかかわらず、Patriotsの後塵を拝している。AFC東の弱体3チームとの試合数がPatriotsの半分である3試合しかないことが理由だろう。
 こちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56725985.html"で指摘している通り、長い目で見た場合にPatriotsのみが特に地区割で得をしているとは言えない。彼ら以外にも2002シーズン以降の地区割で得をしたチームは存在する。だが2018シーズンに限って言えば、PatriotsはAFC東にいたおかげて他の地区よりも明白に大きな利得を手に入れた。だから18シーズンの成績に基づくスケジュール強度を見るとPatriotsが最も楽できるようになってしまうのだ。
 もちろんこうした懸念は、AFC東の残る3チームが2019シーズンにチーム力を底上げすれば改善される。問題は、この地区に「リーグでも特にオフシーズンに取り組まねばならない仕事の多い5チーム」"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001017971/article/"のうち2つ(Dolphins、Bills)が集まっていること。彼らの仕事が1回のシーズンオフで終わらないほど山積みになっているとしたら、現時点でのスケジュール強度予想が現実のものになる可能性がそれだけ高まるわけだ。そしてPatsのDynastyが続く確率も。リーグがめざす勢力均衡は、いったいいつになれば達成されるのやら。
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