それでもフィールドに出てくると大きなインパクトを与えた選手だったのは間違いない。実際、彼の登場をきっかけに12 personnelを使ったオフェンスの有効性が広く知られるようになったし、TEという低コストな選手を使ったパスオフェンスがサラリーキャップ下では大きな効果を持つことも分かった。問題はGronkレベルのTEは滅多にいないこと。有能なTEが大きな武器になるのは間違いないが、そもそも入手自体が難しい希少資源でもある。PatriotsにとってもこれだけのTEがいた時期はBen Coates時代まで遡らないと存在しないだろう。
いずれにせよGronkの引退及びGilmoreのリストラ"
https://www.patspulpit.com/2019/3/22/18277130/"によって、少し前まで10ミリオン超のキャップヒットが5人(この2人プラスBrady、McCourty、Hightower)いたPatriotsのサラリーキャップ状況はかなり変わった。このチームにしては珍しくトップヘビーなサラリー状況だったのだが、その度合いがかなり低下したことになる。もしBradyの契約延長が行われれば、さらにトップレベルのサラリー比率が低下し、例年通りの「安いベテラン中心」なサラリー状況になるかもしれない。
「自家製選手が割高だ」説の中では、高額選手(キャップヒット3.5ミリオン以上)を並べてみてもFAより自前の選手の方がVAMPが悪いと指摘していた。だがトップ19に限ってみれば自家製選手よりFA選手の方が多い。つまり単純に「自前の選手の方がFAよりも高いケースが多い」とは限らないことが窺える。一方でこの19人に限ればVAMPの平均値は自前選手の方が悪く(5人のうち4人はトップ9に含まれているため)FA選手の方がマシになる。
もちろんこれはトップ19人の数字であり、なおかつ2018シーズンの実績に基づいて19シーズンにどうなるかを予想したものである。だから前に出てきた「自前選手がFA選手より割高」という説を今回のデータで調べるのは、必ずしもいい方法ではない。今シーズンが終わってみたらこのランキングの順位が大きく入れ替わり、FA選手より自前選手が上位に並ぶ可能性もあるからだ。結局のところ、自家製選手が本当に割高なのか、どのくらい割高なのかについては、さらにデータを見た方がいいことになる。
もう一つはポジションの偏りである。19人中CBが7人と3分の1以上を占め、なぜかこのポジションに「支払い過多」選手が多くなっている。逆にディフェンスの高額サラリーポジションとして有名なEdgeでランキング入りしているのはPierre-Paulだけ。全体が高額評価だからその中でさらに割高な選手は少なくなる、ということかもしれないが、それならオフェンスの高額ポジションであるQBが3人もランク入り(それ以外のオフェンス選手は4人)しているのがおかしい。
もちろんたった19人だけの母数であまり軽々に判断すべきでないことも確かだ。今回のランキングはたまたまこのような偏りになっているが、来年同じことをすると全く違うランキングになる可能性もある。それでも新しい材料が手に入ったことは事実。今後は贔屓チームがCBと契約を結ぶ際には注意を払うようにした方がよさそうだ。
だがそうした条件を満たしたFitzpatrick以外のベテラン「受け取り過多」選手を見ると、その大半は単なる「契約上のマジック」で作り出された偽りの割安選手だと言わざるを得ない。ベテラン2位に顔を出しているGrahamは初年度のキャップヒットこそ3.5ミリオンしかないが、2年目は13ミリオンを超える契約になっており、彼が割安でいられるのはこの1年だけだ。同じEaglesのJackson(6位)もそれは同じで、今年2.8ミリオンのキャップヒットは来年には10ミリオンへと急増する。
Eaglesの選手だけではない、4位のFoles、5位のOkafor、7位のRyan、10位のSmithらは、多かれ少なかれ来年以降にキャップヒットが急増する契約を結んでいる。例外は3位のWoodsと、そしてPatriotsと契約している2人(AndrewsとEdelman)だ。Woodsのようにベテランミニマム水準で拾った選手がいきなり大活躍するパターンになるか、もしくはPatriotsのようにリングを餌に安くサラリーを抑えるか。割安にベテランを使おうとすると手段は限られてくる。
逆にルーキー契約は簡単にVAMPで多額の黒字を出せる。特にMarket Priceの高いQBはそうで、トップ5人は全てQBだ。MVPレベルのMahomesは当然としても、平均を上回る成績を収めればそれだけでトップクラスのVAMPを記録できてしまうあたり、いかにルーキーのコストが安すぎるかが分かると思う。またQBに次いでWRが多いのも目立つところ。QBの次にMarket Priceの高いEdgeやInterior DLではなくWRが出てくるのは、EdgeやDLがローテーションをするためスナップカウントが低くなるのが理由かもしれない。
コメント
No title
そのGrahamがSaintsからタグを貼られたとき、TE登録とWR登録とで、トップ5平均のサラリー算出に相当の金額差が出る。自分はWRと遜色ないヤードを稼いでるからWR登録としてくれ。と、ごねた(正当な主張と思います)事が記憶に残ります。リーグに申し立てたけど、結果TEとして申し立ては棄却されてしまったかと。
その時も、タグって選手に不利な、遺恨を残す仕組みだなぁ...と思いました。
Gronkも9年でボロボロに消耗...。
Wittenみたいなキャリアの長い鉄人系と、ひたすらハードタックルのリスクを浴びるキャッチ型と、同じTEにしてしまうのもどうなのか?という気もしました。
2019/03/27 URL 編集
No title
QBでいえば鉄人Favreと、有能だったけど怪我ばかりだったPenningtonあたりがそれぞれの例として思い浮かびます。
Gronkについては高すぎる運動能力に肉体がついていかなかったのかな、という印象もあります。彼のプレイを見ていると確かにすごいのですが、安定感は感じられませんでした。一歩間違えると怪我しそうな危なっかしい動きだったなと、今でもそう思っています。
2019/03/27 URL 編集