Gronk引退

 Gronkowskiが引退を表明した"https://www.instagram.com/p/BvaCbK6BCvd/"。その第一報"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001024012/article/"を見て最初に思い浮かんだのが、彼のプレイの数々ではなく、キャップスペースがどうなるかだったのは、我ながらいかがなものか。ちなみにこちら"https://www.patspulpit.com/2019/3/24/18280007/"によると9.2ミリオンのスペースが空くそうだ。
 彼のキャリアは非常にハイレベルなものであった"https://twitter.com/PFF/status/1109943539717361667"が、同時にかなり短くもあった。何しろ彼はまだ30歳にもなっていない。9年間のキャリアのうち大半の年は怪我のために全試合出場できておらず"https://www.pro-football-reference.com/players/G/GronRo00.htm"、2013シーズンと16シーズンにはプレイオフにも出ていない。確かに彼はゲームを変えたプレイヤーだった"https://twitter.com/danorlovsky7/status/1109940181438746625"が、怪我の問題がずっとつきまとっていた。
 それでもフィールドに出てくると大きなインパクトを与えた選手だったのは間違いない。実際、彼の登場をきっかけに12 personnelを使ったオフェンスの有効性が広く知られるようになったし、TEという低コストな選手を使ったパスオフェンスがサラリーキャップ下では大きな効果を持つことも分かった。問題はGronkレベルのTEは滅多にいないこと。有能なTEが大きな武器になるのは間違いないが、そもそも入手自体が難しい希少資源でもある。PatriotsにとってもこれだけのTEがいた時期はBen Coates時代まで遡らないと存在しないだろう。
 だがフィールド上でのパフォーマンスも18シーズンに入ると明白に衰えていた。彼のVAMP"https://ftw.usatoday.com/2019/03/nfl-teams-cap-spending-efficiency"を計算してみると、およそ7ミリオンの赤字となる。実際にはPFFのグレードで90、スナップカウントが1000に達していたとしても5ミリオン近い赤字になるわけで、そもそもTEで10ミリオンを超えるキャップヒットはどうやっても赤字が避けられなかったのだろう。
 いずれにせよGronkの引退及びGilmoreのリストラ"https://www.patspulpit.com/2019/3/22/18277130/"によって、少し前まで10ミリオン超のキャップヒットが5人(この2人プラスBrady、McCourty、Hightower)いたPatriotsのサラリーキャップ状況はかなり変わった。このチームにしては珍しくトップヘビーなサラリー状況だったのだが、その度合いがかなり低下したことになる。もしBradyの契約延長が行われれば、さらにトップレベルのサラリー比率が低下し、例年通りの「安いベテラン中心」なサラリー状況になるかもしれない。

 Gronkは昨シーズン「払いすぎ」になっていたが、今シーズンそうなりそうな選手についてVAMPを使ったランキングが公表されている"https://ftw.usatoday.com/gallery/nfl-most-overpaid-nfl-players-2019"。怪我で今シーズンは出られないと思われる20人目を除いてそれなりに納得のいくメンツが載っているのだが、個々の名前より全体の傾向が面白い。
 まず20人目は外すとして、残る19人のうち前に紹介した"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56912355.html"「自家製選手」はたった5人(Stafford、Smith、Manning、Trufant、Carr)しかいない。残る14人は全てFA選手として高額契約を勝ち取り、その金額がでかすぎて採算の悪い選手一覧に顔を出してしまっている。
 「自家製選手が割高だ」説の中では、高額選手(キャップヒット3.5ミリオン以上)を並べてみてもFAより自前の選手の方がVAMPが悪いと指摘していた。だがトップ19に限ってみれば自家製選手よりFA選手の方が多い。つまり単純に「自前の選手の方がFAよりも高いケースが多い」とは限らないことが窺える。一方でこの19人に限ればVAMPの平均値は自前選手の方が悪く(5人のうち4人はトップ9に含まれているため)FA選手の方がマシになる。
 もちろんこれはトップ19人の数字であり、なおかつ2018シーズンの実績に基づいて19シーズンにどうなるかを予想したものである。だから前に出てきた「自前選手がFA選手より割高」という説を今回のデータで調べるのは、必ずしもいい方法ではない。今シーズンが終わってみたらこのランキングの順位が大きく入れ替わり、FA選手より自前選手が上位に並ぶ可能性もあるからだ。結局のところ、自家製選手が本当に割高なのか、どのくらい割高なのかについては、さらにデータを見た方がいいことになる。
 もう一つはポジションの偏りである。19人中CBが7人と3分の1以上を占め、なぜかこのポジションに「支払い過多」選手が多くなっている。逆にディフェンスの高額サラリーポジションとして有名なEdgeでランキング入りしているのはPierre-Paulだけ。全体が高額評価だからその中でさらに割高な選手は少なくなる、ということかもしれないが、それならオフェンスの高額ポジションであるQBが3人もランク入り(それ以外のオフェンス選手は4人)しているのがおかしい。
 もちろんたった19人だけの母数であまり軽々に判断すべきでないことも確かだ。今回のランキングはたまたまこのような偏りになっているが、来年同じことをすると全く違うランキングになる可能性もある。それでも新しい材料が手に入ったことは事実。今後は贔屓チームがCBと契約を結ぶ際には注意を払うようにした方がよさそうだ。

 逆に「受け取り過多」の20人をランキングしているのがこちら"https://ftw.usatoday.com/gallery/nfl-most-underpaid-nfl-players-2019"。こっちのデータは上記のものとは違い、割と予想通りと言える。まず普通にやればルーキー契約の選手ばかりになるという指摘はまさに想定通り。今回のデータで唯一の例外となっているのがFitzpatrickなのだが、あれほど特殊な事例でなければベテランがこのランキングで上位に入るのは不可能であることが逆にわかる。
 なぜFitzpatrickは例外なのか。まずそもそも2018シーズンの彼の成績が例外的によかった(ANY/A+で125とキャリア最高)ことが要因の1つ。元々彼はWinstonらと並ぶgunslingerなQB"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56861326.html"であり、それがうまく回ると非常にいい成績につながりやすいところがある。昨シーズンの彼はそういった幸運に恵まれていたことは否定できない。
 一方で彼のサラリーは安い"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56808244.html"。ドラフト順位の低さやジャーニーマンであること、それに加えて彼の年齢が30代後半に差し掛かっていることも影響しているだろう。NFLは若者が優遇されるリーグであり、30代のそれも後半になるとほとんどのチームがサラリーを出し渋る。実績あるCameron Wakeが安い値段で契約を結んだ"https://ftw.usatoday.com/2019/03/nfl-free-agency-grades-nick-foles-landon-collins-malik-jackson"ことからも、その傾向ははっきりしている。
 だがそうした条件を満たしたFitzpatrick以外のベテラン「受け取り過多」選手を見ると、その大半は単なる「契約上のマジック」で作り出された偽りの割安選手だと言わざるを得ない。ベテラン2位に顔を出しているGrahamは初年度のキャップヒットこそ3.5ミリオンしかないが、2年目は13ミリオンを超える契約になっており、彼が割安でいられるのはこの1年だけだ。同じEaglesのJackson(6位)もそれは同じで、今年2.8ミリオンのキャップヒットは来年には10ミリオンへと急増する。
 Eaglesの選手だけではない、4位のFoles、5位のOkafor、7位のRyan、10位のSmithらは、多かれ少なかれ来年以降にキャップヒットが急増する契約を結んでいる。例外は3位のWoodsと、そしてPatriotsと契約している2人(AndrewsとEdelman)だ。Woodsのようにベテランミニマム水準で拾った選手がいきなり大活躍するパターンになるか、もしくはPatriotsのようにリングを餌に安くサラリーを抑えるか。割安にベテランを使おうとすると手段は限られてくる。
 逆にルーキー契約は簡単にVAMPで多額の黒字を出せる。特にMarket Priceの高いQBはそうで、トップ5人は全てQBだ。MVPレベルのMahomesは当然としても、平均を上回る成績を収めればそれだけでトップクラスのVAMPを記録できてしまうあたり、いかにルーキーのコストが安すぎるかが分かると思う。またQBに次いでWRが多いのも目立つところ。QBの次にMarket Priceの高いEdgeやInterior DLではなくWRが出てくるのは、EdgeやDLがローテーションをするためスナップカウントが低くなるのが理由かもしれない。
 そしてまたこのランキングを見る限り、ベテランの仕事がルーキー契約の選手たちに奪われていく"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56873223.html"理由もよく分かる。ほとんどの選手は単にベテランであるというだけで採算割れを起こしてしまうのだ。今の労使協定下における大きな問題だ。
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コメント

No title

きんのじ
個人的感想ですが、全盛期のGrahamは全盛期のGronkと遜色無いモンスターだったと思います。ただ全盛期の期間が、GrahamはGronkよりかなり短かった印象です。SaintsからSeahawksに移った頃には、既にボロボロだったと思います。

そのGrahamがSaintsからタグを貼られたとき、TE登録とWR登録とで、トップ5平均のサラリー算出に相当の金額差が出る。自分はWRと遜色ないヤードを稼いでるからWR登録としてくれ。と、ごねた(正当な主張と思います)事が記憶に残ります。リーグに申し立てたけど、結果TEとして申し立ては棄却されてしまったかと。
その時も、タグって選手に不利な、遺恨を残す仕組みだなぁ...と思いました。

Gronkも9年でボロボロに消耗...。
Wittenみたいなキャリアの長い鉄人系と、ひたすらハードタックルのリスクを浴びるキャッチ型と、同じTEにしてしまうのもどうなのか?という気もしました。

No title

desaixjp
選手によってやたらと頑丈な人がいるかと思えば、ガラス細工に例えられる選手もいるというのは、TEに限らず色々なポジションで見かけますね。
QBでいえば鉄人Favreと、有能だったけど怪我ばかりだったPenningtonあたりがそれぞれの例として思い浮かびます。
Gronkについては高すぎる運動能力に肉体がついていかなかったのかな、という印象もあります。彼のプレイを見ていると確かにすごいのですが、安定感は感じられませんでした。一歩間違えると怪我しそうな危なっかしい動きだったなと、今でもそう思っています。
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