Barnwellがこのオフに行われたFAやトレードについてグレードをつけており"
http://www.espn.com/nfl/story/_/id/26152205/"、その中にも今回のトレードの評価が載っている。RaidersはA-、SteelersはC-だ。予想通り前者が高く後者が低いのだが、実のところSteelersの評価はどん底とまでは言えない。少なくともBrownsによるRobinsonとの1年契約(評価はD+)などに比べればまだましと見られている。
Steelersの契約のやり方には一つの特徴がある。それはサイニングボーナス以外にほとんどサラリーの保証をしないということだそうだ。そのためSteelersと契約を結ぶ選手たちは、全契約額に比べて保証額が随分と低い契約を結ばされることになる。Brownもそうで、彼が2017年に4年分の契約延長をした時、延長額68ミリオンのうち保証されていたのはサイニングボーナス19ミリオンだけだった。
一方、彼の半年後に延長を勝ち取ったHopkinsは、81ミリオンの額のうち実に49ミリオンが保証されていた。2018年にRamsとの間で5年81ミリオンの契約を結んだCooksも、そのうち50.5ミリオンほどが保証額だった。保証額の小さい選手は、早いタイミングでカットされやすくなる。Brownのような選手を早々にカットすることはないと思うかもしれないが、もし彼のフィールド上での生産能力が低下でもすれば、チーム側はいつでも彼と縁が切れる状態にあったのは確かだ。SteelersがBellとの間でトラブルを起こしたのも、同じくBellに提示した契約の保証額が少なすぎたのが理由だという。
加えてSteelersはBrownの契約を毎年のようにリストラした。その年のサラリーをサイニングボーナスに変え、それによってキャップスペースを広げる方法だ。チームにとっては目先のキャップ不足を埋め合わせる適当な方法としてよく使われるのだが、選手側にとっては結局のところ来年以降の保証は全く増えない。確かに今年の分は大きく保証されることになるが、長期にわたって安定した仕事を求める選手にとってはあまり満足のいくものではないのだろう。そのくせデッドマネーだけは膨らんでいく。
一方のRaidersの負担はそれほど大きくない、というのがBarnwellの評価。Watkinsが3年48ミリオンの契約を取れる世界でBrownがインセンティブも含め3年54ミリオン強を得られるのは、全然おかしくないという意見だ。またBrownを入れることで、Carrがどこまでやれるかを確認することもできる。これでダメなら堂々とCarrを切ることができる、というのがGrudenの狙いかもしれない。
RaidersにとってはLas Vegasへ移る時の目玉選手ができたという面もある。Brownもこれだけ金がもらえれば、少なくとも当面は満足だろう。あとはフィールド上で事態がうまく回るかどうかだ。Grudenは過去にBuccaneersでKeyshawn Johnsonともめたことがあるし、Raidersの穴はレシーバーだけではない。Brownにしても、結果的にはSteelersに残っていた方が優勝確率は高かったと臍を噛む可能性がないとは言えない。
SteelersにとってはSmith-SchusterがBrownの穴を埋められるかどうか、そしてRoethlisbergerに残された時間があとどのくらいあるかが問題だろう。来年以降になればデッドマネーが消え、空いたキャップスペースを使ってチーム力の強化に取り組む余裕も出てくると思うが、今年はそうもいかない。それでも終わったことを悔やむより、次の一手を考えた方がいいのは確かだ。彼らのオフのチーム作りは、これからが本番である。
確かに21世紀に入って以来、Steelersはかなり高い成績を収めている。記事中にも指摘されているように彼らが最後に負け越したのはRoethlisbergerが入団する直前の2003シーズン。15年間にわたって8勝以上を記録し続けたのは、リーグでも5位タイに位置する。またこの期間中に2回以上Super Bowlを制覇したチームは3つしかない。同期間のトータル勝率もPatriotsに続いてSteelersが2位だ。
だがこの「ダイナスティほどではないが強豪としての15年間」、Steelersはずっと同じタイプのチームであった訳ではない。前半の彼らはディフェンスが強く、オフェンスはそれほどでもなかった。2012シーズンまでの9年間、失点でリーグトップ10に入った回数が7回もあったのに対し、得点では2回しか入らなかった。一方、2013シーズン以降の6年間を見ると得点のトップ10が4回に対して失点は2回。チームスタイルが途中で変わったことが明確に分かる。
チームの性格が途中から変わること自体は別に珍しくない。Chiefsなどは2016シーズンまでディフェンスがオフェンスより強いチームだったのに、17シーズンからがらりと性格が変わり、18シーズンには得点が1位で失点が24位という状況になっている。チームのメンバー編成などに合わせて融通無碍に強みを発揮できるようにすることは、チーム作りにおいてはむしろ優位をもたらすと言える。Steelersの場合、Brownが13シーズンからずっと1000ヤード超のレシーブを続け、またBellが同シーズンに入団したのをきっかけに、チーム性格を大きく変えたと考えられる。
だがその2人が相次いでチームを去ることになった。オフェンスにアイデンティティを持つようになったチームから重要なカギが失われ、それが結果として彼らの「非ダイナスティ」を終わらせるのではないか、というのが記事の指摘だ。確かにその可能性はあるだろう。特に2019シーズンに限るならBrownがいなくなっても多額のデッドマネーが残るため、浮いた金を他のポジションの強化につなぐことが難しくなる。Roethlisbergerの年齢まで考えるなら、ここで1年を失うのは非常に苦しい。
それでも、オフェンスに過剰なサラリーを投じていたこれまでのチーム作りがよりバランスのいい方向へシフトするのなら、それは決して悪いことだとは思えない。何しろ彼らが優勝までたどり着いたのは13シーズンにチームが変身する前の、ディフェンス主体に作られていた時代のことなのだ。Steelersが再びかつてと同じチーム作りへ立ち戻るなら、Roethlisbergerの引退を花道で飾る確率も上がるのではなかろうか。
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