タグ見直し案

 フランチャイズタグの期限が到来し、トータルで6人にタグが貼られた"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/26121821/"。2年連続でタグを貼られたCowboysのLawrence(20.5ミリオン)を筆頭に、SeahawksのClark(17ミリオン強)、TexansのClowney(16ミリオン弱)、ChiefsのFord(15.4ミリオン)、FalconsのJarrett(15.2ミリオン)、そして49ersのGould(5ミリオン弱)だ。6人中、Edgeが4人、パスラッシュもできるDTが1人、そしてキッカーが1人だ。
 今年のドラフトはDLが豊作と言われているが、にもかかわらずEdgeやDTがタグの中心になっているあたり、リーグにおけるほとんど強迫観念と化したパスラッシュへの依存が一段と強まっているように見える。オフェンスがよりパスに重点を置くようになったことへの対処だろうが、結果としてこれでまた一段とEdgeやパスラッシュのできるDTに対する需要が高まり、彼らのサラリーが上がることになりそう。
 もちろん最大の恩恵を受けるのはFlowersだ。こちら"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/26142658/"でも指摘されているが、EaglesとGrahamの3年契約"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/26111258/"も含め、他のFA候補だったEdgeたちが次々と市場から消えていることが大きい。Flowersがフランチャイズタグに匹敵するレベルの契約をどこかと結ぶ可能性もあり、そうなるとPatriotsはおそらく対抗しないだろう。Solderのパターンが予想される。
 またタグが確定したのに伴い、誰がFA市場に出てくるかも固まってきた。それを受けてNick Korteがさっそく2020年の補償ドラフトに関する見通しを示している"https://overthecap.com/2020-compensatory-picks-potential/"。内訳をみると、補償ドラフト権を得る可能性が極めて高いとされているのはPatriots、Chiefs、そしてEaglesの3チーム"https://twitter.com/nickkorte/status/1103317644512378881"。つまり過去2回の優勝チーム及びconference championshipに出たチームである。
 それだけではない。高いとされている6チームのうち4チームは2018シーズンに勝ち越しているし、逆に低い方の8チーム中5チーム、極めて低い5チームのうちの4チームは負け越している。Rich get richerという言葉が思い浮かぶ。

 フランチャイズタグからFA解禁へ至るのは毎年のことだが、足元ではこのタグ制度に対する批判の声が強まっている。特にBellがフランチャイズタグに基づくテンダーへの署名を拒絶し、1シーズン丸ごと棒に振ったあたりから、問題視する向きが増えてきたように感じる。選手が市場で自分の価値を試す機会を奪っている、というのが理由だ。
 Zack Mooreがこの件について分かりやすい批判をしている"https://twitter.com/ZackMooreNFL/status/1102691037653463040"。8年目かそれ以降の選手はリーグ全体で14.6%しかいないのだが、タグを2年連続で貼れば普通のドラフト選手で6年目、ドラフト1巡選手なら7年目まで、選手の交渉相手が特定のチームのみに限られるような状況ができあがってしまう。もちろん実際にそういう目に遭う選手はごく一部だが、それでも制度的にこれだけ多くの選手が特定のチームに何らかの形で縛られるのは問題だと彼は指摘している。
 おまけにこの制度はNFLにのみ存在し、他の北米プロスポーツには存在しない"https://en.wikipedia.org/wiki/Franchise_tag"。もとはと言えばBroncosのオーナーがElwayをチームに残したいがために導入を主張したルール"https://www.sbnation.com/2019/2/19/18225141/"であり、広く認められている制度とは言いがたいのだ。そもそも本当に長期にわたって残したい選手であれば、契約が切れる1年前には延長するのが今では通例となっており、タグを貼る狙いはむしろサラリー交渉上のチーム側の武器あるいはトレードのための方便と化している。
 NFLの選手寿命は決して長くない。それだけに実力のある選手ができるだけ早いタイミングで市場での評価を試してみたいと思うのは無理もないだろう。だが今のNFLではタグに加えて低く抑制されたルーキー契約のせいで、多くの選手が最も活躍できる時期を非常に安いサラリーでこき使われる形になってしまっている。ルーキー契約見直しに加えてタグのあり方も変えるべきだという声が出てくるのは不可避と言える。
 具体的にはどのように制度を変えればいいのだろうか。元代理人が提示している改革案"https://www.cbssports.com/nfl/news/agents-take-five-changes-that-would-improve-the-franchise-and-transition-tag-system/"では、5つのテーマについて今の制度を変更すべきだとしている。
 まず1つ目はタグの金額を決定するポジションの再定義だ。以前こちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56654330.html"でも指摘したが、タグで使用されるポジションの割り振りが今や完全にアナクロと化しており、現状とは合わなくなっている。特に問題となるのがLBとDEというポジション。タグの設定では違うポジションになっているが、現実には4-3のDEと3-4のOLBはほぼ役割がかぶっており、実際に最近ではむしろまとめてEdgeと呼ぶ方が一般的だ。
 この矛盾は、安い金額でタグを貼りたいチームにとっては都合のいい状況をもたらす。今年のケースでもClowneyとFordはDEではなくLBとしてタグを貼られており、結果として彼らのフランチャイズテンダーはDEとしてタグを貼られたClarkより低い金額になってしまっている"https://twitter.com/corryjoel/status/1103056280308998144"。
 修正案としてはディフェンスをDEとLBではなく、edge rusherとinterior lineに定義し直すことを求めている。その場合、LBは本当にラインの後ろに控える選手たち(3-4のILBと4-3のLB)のみに適用されることになるだろう。またOLについてもひとまとめにするのではなく、T、G、Cそれぞれにタグの金額を決めるべきだとしている。実際、最近はT以外のOLにタグを貼られることはほとんどない。
 2つ目の修正案は2回連続のタグ適用を禁止するというもの。Cousinsのようにこれのおかげでサラリーが上昇した選手がいる一方、Bellの場合はチームによるこの措置があれだけのトラブルを引き起こした。今年もLawrenceが2年連続でタグを貼られているが、そもそも選手が市場に出て自分の価値を試す機会を奪う制度について複数年連続で使用することができる事態は望ましくないとも考えられる。
 3つ目はタグを貼った後の選手と複数年契約を結ぶ際に設定されている期限の廃止だ。タグを貼られた選手と複数年契約の交渉ができるのは7月15日まで。この期間までに長期契約に合意できなければ、チームは翌年またタグを貼るかどうかを検討せざるを得なくなる。もともとは長期契約のための交渉時間を稼ぐためのシステムなのに、期限を切ってしまったのではその効果も限られてしまう。
 4つ目はタグを貼られた選手を他チームが雇う際に求められる補償の削減だ。フランチャイズタグの多くはNon-Exclusiveと呼ばれるもので、このタグだと他のチームも選手と交渉し契約を提案することができる。しかし提案された契約に対してはタグを貼ったチームが同じ条件でマッチすることができるし、しない場合は選手を失う代わりに2つのドラフト1巡指名権を補償として受け取れるようになっている。
 この「2つの1巡指名」という条件のため、多くのフランチャイズタグはNon-Exclusiveと呼ばれているくせに実際はほぼ他のチームを排除した状態で交渉がなされることになる。誰も1巡を2つも渡したくはないのだろう。フランチャイズタグの中にはExclusiveという、より高額のサラリーを払うことで他のチームを完全に排除できる制度もあるのだが、そちらが使われる頻度は少ない。
 修正案として提示されているのは、制限付きFAに対する最高テンダーで補償されることになっている1巡と3巡のドラフト権。このくらいまで補償条件を引き下げれば、他チームとの交渉もより現実的なものになるという考えだ。
 最後はトレードの禁止。Folesにタグを貼るかどうかが論じられていた時に指摘されていたのが、トレード狙いでのタグはルール違反ではないかというもの。実際には過去にCasselやLandryのようにタグを貼ってトレードした事例があり、それらが認められているため、現在のルール下では違反にならない可能性がある。修正案ではこの部分を明確にし、タグはあくまでチームに残すことを目的としたものしか認めないようにするよう、主張している。
 実際にルールの見直しが行われるとしたら現在の労使協定が切れる2021年以降だろう。実際にどんなルールになるかは分からないが、少なくとも今のままではまずいというコンセンサスはできつつあるように見える。
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コメント

No title

きんのじ
お邪魔します。
タグは選手のデメリットだらけな気がします。
・タグの後にキャリアエンドの怪我をすると、その年だけのサラリーしか貰えない。大型複数年契約の機会損失は大きい。
・かといってタグの後に手を抜いて成績が低下すると、翌年の自分の商品価値が下がってしまう。

2年連続とか、すごいストレスになりそうと思います。

タグ貼られて喜ぶ選手もいなさそうで、チームに一方的に有利なだけなら、そんなルールは無くてもいい、次の改訂でやめちゃえば良いと思いました。

No title

desaixjp
タグ廃止論を唱えている人たちも、基本的に選手側のデメリットを大きく取り上げています。一方で今年も対象になった選手は6人のみと、廃止しても影響が限定的な制度です。2021年の新しい労使協定では廃止しやすい制度だと思います。
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