NFLに革命が到来した。アナリティクス革命、略して「アナ革」だ。別に略す必要はない。
MLBの後を追ったのがNBAだ。2009年からコート上の選手の動きを追跡するシステムが稼働し、データ解析がゲームに影響を及ぼすようになってきた。最も大きなインパクトは3ポイントの重要性向上"
https://qz.com/1104922/"で、足元のWarriors dynastyなどはこうしたアナリティクスの成果がもたらしたものとも考えられる。
NBAの「3ポイント」に相当する、アナリティクスの広がりを示す指標をNFLで探すなら、4th down shortにおけるgo for itの増加かもしれない。2018シーズンにおいて4th downで残り1~3ヤードの時にランかパスを行った比率は35.8%と全体の3分の1を超えた。17シーズンのこの数値が26.8%だったのに比べ、一気に増えていることが分かる。Pro Football Focusの創設者であるHornsbyは、各チームが攻撃権を保持することの重要性をやっと理解したのだと指摘している。
Sharpの指摘の中には、一般通念とアナリティクスとの差異を示す一例が紹介されている。曰く「3rd down efficiencyは効率的なオフェンスのカギではない」。むしろそれより前のdownでFDを取ることの方が重要だという指摘はその通りだろう。3rd downは母数が小さく、数字がぶれやすい。それよりはプレイ全体の中でFDを更新したものの比率がどの程度だったかを見る方が、オフェンスの強さを計る指標としてはより適切に思える。
彼はまた1st downでよりパスを投げるべきだとも主張している。そして2018シーズン、1st downにパスが投げられた比率は50.1%と、17シーズン(47.1%)から大きく伸びた。1st downからよりアグレッシブになるべきだというSharpの意見も、20年の時間を経てようやく受け入れられるようになってきたわけだ。
もちろんそうした動きの多くはまだ「始まったばかり」だろうし、具体的にどこまで重視し導入すべきなのかについてはしばらく試行錯誤が続くと思われる。データ活用は例えばゲーム内だけではなく、選手の体調管理といった側面でも利用可能ではあるが、実際にそれを上手く使いこなすには一定の時間を要するという。それでも、そうした課題は「他チームより一歩でも先んじる」必要性によってどんどん乗り越えられていくだろう。
論文に対する反響は皆無だったとCarterは述べているが、彼の取り組みは後の時代に確実に影響を及ぼした。1988年に出版されたThe Hidden Game of Football"
https://www.amazon.com/dp/0446514144"にはCarterの論文と似た数値化の手法が紹介されているし、そしてこの本はのちにアナリティクスが広がっていくうえでの淵源となった(例えばAdjusted Yards per Attemptといった概念もこの本で紹介されている)。
Football Outsidersの創業者であるSchatzは、アナリティクスが本当に受け入れられるには最終的にはオーナーたちがアナリティクスを理解し、コーチたちのアナリティクスに基づく決断を理由に彼らをクビにしないようになることが必要だとしている。アナリティクスが勝つうえで役立つものであれば、いずれその時が来るのは間違いないだろう。少なくとも革命前に戻ることは、おそらくもうできない。
コメント