Super Bowl LIII

 「オフェンスのイノベーション」(キリッ)と格好つけた記事を載せたら、その直後にSuper Bowl史上最少得点のゲーム"https://twitter.com/SNFonNBC/status/1092272404271894529"が展開されることになるとは。だからゲームは面白い。
 特にRamsオフェンスの低調ぶりが目立ったが、ゲーム直後から指摘されていた"https://twitter.com/Idontwaitinline/status/1092283857775284226"のがオフェンスのメンツ構成の問題。11 personnel、つまりRB1人、TE1人というメンツにこだわったRamsは、Patriotsによる5人以上のパスラッシュに対処しきれなかった。それがあの不調なオフェンスの原因だという説明である。
 Ramsはシーズン中、ほぼ11 personnelばかりを使ってプレイしてきた"https://twitter.com/brollinsphd/status/1092239259845705728"。だがその弱点は他チームに気づかれており、LionsやBears、Eaglesが対策を打っていた"https://twitter.com/BasSuurland/status/1092266167010553857"。この3ゲームはRamsのExpected Pointsがシーズンでも最も低かった試合である。
 こちら"https://twitter.com/TheDycer/status/1092282282000502785"によれば、Patriotsのディフェンス相手には12 personnel(RB1人、TE2人)の方が効果的であったという。だがRamsがフォーメーションを変えたのはようやく第4Qになってから"https://twitter.com/PaddedRoom2006/status/1092252573892071425"。シーズン中に上手くいったやり方にこだわり、アジャストメントが遅れたMcVayの責任、ということになる。

 このあたりの話についてはBarnwellがより詳細に書いている"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/25921740/"。PatriotsのディフェンスはLionsのPatricia(つまり元PatriotsのDC)が実行したのと同じく、アウトサイドゾーンのランを止め、それによってプレイアクションパスを機能させなくするというものだそうだ。
 Goffのプレイアクションパスは彼にとって極めて大きな武器となっていた。シーズン中の彼のプレイのうち3分の1以上がプレイアクションであり、なおかつレーティングが112.3とそれ以外のパス(95.0)よりも高かった"https://twitter.com/FanDuel/status/1091788345406095360/"。だが対応策を打たれたLionsとのゲームではプレイアクションのレーティングが39.6と酷い状態だった"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/25877288/"。
 Super BowlではこれにRams側のミスも重なった。PatriotsがDime(つまり5DB)で対応したのは20プレイあったそうだが、そのうちRamsがランを選んだのはたったの1回。boxに6人しかいない局面でランが出やすいという統計がある"https://fivethirtyeight.com/features/todd-gurley-is-in-the-right-system-at-the-right-time/"ことを踏まえるなら、彼らはもっとこうした局面でランを活用すべきだった。
 とはいえこのゲームにおいてRamsのランオフェンスは、Boxに6人以下しかいない時も一向に冴えなかったようだ"https://fivethirtyeight.com/features/the-rams-really-made-a-mess-of-super-bowl-liii/"。そう考えるとBoxの人数が少ない状態でもランを止められるよう対処したPatriotsのディフェンスが優れていたということになり、おそらくDLに5人並べる5-1フォーメーションの採用"https://twitter.com/CoachPaulAlex/status/1092216887822274561"が効果的だったのだろう。
 最初の方のツイートでも指摘しているように、Ramsがアウトサイドよりもインサイドでランを進めるべく12 personnelに切り替えたのはゲームも終盤になってからだった。結局、彼らはプレイ全体の78%で11 personnelを採用したが、プレイの効率はむしろ12の方が良かったという。シーズン中の成功体験に縛られ、プランBへ移行するのが遅れてしまったことが、Ramsのオフェンスにとっては致命的になったというわけだ。
 一方でPatriotsのオフェンスもおよそ冴えない成績である"http://www.footballperspective.com/super-bowl-liii-was-even-lower-scoring-than-you-think/"。その一因となったのがWade Phillipsの構築したディフェンス。BarnwellによればRamsはDonaldらDLがプレッシャーをかける一方でカバレッジをうまくディスガイズし、Bradyを見事に混乱させていたという(最初のインターセプトもそれが理由)。
 少なくとも前半はRamsディフェンスもPatriotsディフェンスと同じくらいいい仕事をしていた。例外はEdelmanだったが、Ramsは彼をカバーする役割をTalibからPetersに変更することで、うまく押さえ込むことに成功したそうだ。だがPatriotsは終盤になってRamsのディフェンスを攻略する方法を見つけることに成功した。それが22 personnelを使ったHoss Y-Juke、なのだそうだ。
 Hoss Y-JukeについてはBarnwellが動画付きでツイートしている"https://twitter.com/billbarnwell/status/1092573908170088448"。まずは2人のRBをワイドに配置してCBをそちらに引きつける。それによって2人のTEとEdelmanの相手をする選手がSあるいはILBになり、いずれかにミスマッチが生まれる。実際のプレイに際しては両端のRBはヒッチ、スロットの位置にいる2人のTEはシームに走り、Edelmanは中央で敵の動きを見ながらオプションルートを取る。
 PatriotsはTDドライブにおいてこのプレイを3回連続で行い、3回ともパスを成功させた。最終的に決勝点につながったこのドライブ以前において彼らはDevelinをワイドの位置まであまり移動させようとしなかったのだが、それはRamsのDLが疲れるのを待っていたためではないか、とBarnwellは推測している。Donaldらの体力が残っている状態でバックスに誰もいないフォーメーションを選択するのは、QBにプレッシャーがかかるリスクを高める。相手DLが十分に疲れるのを待ってHoss Y-Jukeを行えば、パスプロが5人でも持ちこたえられるという判断なのだそうだ。
 その次のドライブでPatriotsが多用したのはラン。DevelinがFBの位置に入り、時間を潰しながらゴリゴリと進むオールドスタイルのオフェンスを展開した。そしてRamsはこのドライブを効果的に止めることができず、8プレイ(全てラン)で72ヤードを進まれ、だめ押しのFGを決められた。とてもパス全盛期のNFLとは思えないような展開だが、それまで持ちこたえてきたRamsディフェンスがGoffのインターセプトで緊張の糸が切れた、と考えてもいいかもしれない。
 今回のSuper Bowlは退屈でつまらんゲームだったというのが一般的な見解だろう"http://www.thedrawplay.com/comic/the-logo-super-bowl-53-deserves/"。だがこれだけオフェンス優位な時代において、双方のディフェンスがここまで相手を押さえ込むことに成功した点はきちんと評価しなければならない。このゲームはつまりFloresとPhillipsのゲームだったのであり、少なくとも彼らは称賛に値する仕事をしたと思う。

 個々のプレイ分析ではなくトータルの数字を見ると、もう一つ見えてくることがある。それはプレイ回数だ。第3Qまでのプレイ数を見るとPatriotsの53回に対してRamsは39回と前者の方がかなり多い。またプレイ1回あたりの獲得ヤードもPatsの5.1に対してRamsは3.2、First Down獲得率も前者の22.6%に対して後者の15.4%とPatsがリードしている。本来なら3-3の同点ではなく、Patsがリードしていてもおかしくないような展開だ。
 にもかかわらずPatsがRamsと同じ点数にとどまったのは、1つにはHekkerの優れたパントが理由だろう。Super Bowl記録となった65ヤードパントを含め9回ものパントで計417ヤードを稼いだ彼のおかげで、Patsは常に自陣深いところからのドライブ開始を強いられた。彼の大活躍はExpected Pointsにも表れている"https://www.pro-football-reference.com/boxscores/201902030ram.htm"。パントで積み上げた6.49という数字は、Ramsのオフェンス、ディフェンスよりも高い。このゲームにおけるRamsのMVPは彼だろう。
 もう1つは3rd down conversion。Patsは第3Qまで10回の3rd downのうち3回しかFD更新ができなかった。レギュラーシーズン中の彼らのconversion率(40.8%)を下回る数字であり、それだけいつもよりドライブが断ち切られていたことになる。3rd downは母数が小さいため偶然の要素が大きく、つまりRamsディフェンスが幸運に恵まれていたとも考えられるのだが、理由はどうであれ第3QまでのRamsは相対的に不利な展開にもかかわらずよく食いついていったと評価することができる。
 そのRamsが最後に引き離されることになった原因こそが、プレイ回数ではなかろうか。相手ディフェンスにたくさんプレイさせ、オフェンスチームにはプレイさせない。やがて相手ディフェンスは疲れて失点を許し、出場機会を制限された相手オフェンスは十分な得点を取れずに敗れる。昔ながらのボールコントロールオフェンスがAFC Championshipの時と同じように炸裂した、と解釈すべきなのかもしれない。まさか今の時代にこんなゲームを何度も見られるとは思っていなかったけど。
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コメント

No title

きんのじ
「オフェンスのイノベーション」でのご回答、ありがとうございました!

スーパーボウルについての数日考えての感想ですが
・試合としてはつまらなかったと思います。僅差の展開だったから緊張感はあって最後まで見れたものの、レギュラーシーズンでこのような試合が繰り返されたらブーイングの嵐だと思います。
・でも、見処は少なかったけど、考え処は多かった試合だったと思います。
リプレイを見て考察する気力はなかなか沸きませんが...(^^;
・僅差の展開ですが「この展開で何回やってもPatriotsが勝つだろう」という、Patriotsの良い状態のオーラを感じてました。McVayはBelicheckの掌の上感というか、点差以上の実力差を感じました。
・スタッツ的に「Patriotsのランは効果的だったとは言えなさそう」との解析、不思議です。ランを4回か5回続けたり、FBセットを多用したり。何だったのか...
・Patriotsの主力兵器の「Brady2秒パス」や「RBの変幻自在で掻き回す戦法」を、はなから「対策されてるの知ってるから使わないよ」張りに封印してた印象で不思議です。

No title

きんのじ
・Ramsの敗因が、McVayが11Personelに固執し過ぎた、プランBに移行するのが遅かったとするなら、Patriotsは早々に切り換えたのか?印象は否で、Patriotsも頑なにランに拘っているように見せていた印象、試合中の違和感があります。
・もし...の妄想ですが、PatriotsがBelicheckが、McVayの負けず嫌いの性格まで読み取って、効果的でないプランAの泥沼勝負に引きずり込んでいたと想像すると、やっぱりPatriotsは勝つべきの展開で勝った。McVayはBelicheckの掌の上だったと納得できそうで、そんな妄想をしております。

失礼しましたー。

No title

desaixjp
http://www.sharpfootballanalysis.com/blog/2019/why-the-rams-lost-the-super-bowl
↑の分析によれば、Patsオフェンスは元々Ramsディフェンスとの相性がよく、それまでのやり方を大きく変更する必要はなかったそうです。逆にRamsは得意としていたオフェンスがPatsディフェンスとの相性最悪だったそうで、だからこそプランBに移行すべきだったとか。残念ながらMcVayが柔軟性に欠けていたのは確かなようです。

No title

きんのじ
情報ありがとうございます!

Ramsの「12personelを使うべきだった」論で、11と12の平均を比べることに、正しい分析なのか?疑問を感じるところがあります。

野球のピッチャーの例ですが、速球とチェンジアップを武器とする投手の成績で、たまに投げるチェンジアップは被打率が優れていても「チェンジアップをメインに多投すべき」とはならないかと思います。
パーソネルの11と12の比較も同じではないのかな?という感覚があります。

11と12それぞれのプレイ数やヒストグラム的な分散なんかも見てみないと、奇策的にロングゲインが多い可能性もありそうだし…等々、疑問が出てしまいます。
アメフトの場合、フォーメーションは見えていますから野球の球種とは違うのかもしれません。でもモーションはあるけれど…。
モヤモヤなコメントで失礼しました。

No title

desaixjp
上記の分析を書いた人は、もともとSuper Bowl前に40ページのレポートをマスコミ向けに書いています。彼の主張の妥当性を評価するうえではそれにも目を通した方がいいのでしょう。残念ながらネット上でそれを見るのは難しそうですが。
personnelの平均比較に意味があるかは、確かに母数の多寡次第だと思います。また12に変えていたとしても、Belichickが何か落とし穴を用意して待ち構えていた可能性は否定できません。
ですが結果的に11 personnelでダメな結果しか残せなかった以上、もっと12を試すべきだったという主張に反論するのは難しいでしょう。12を増やしても効果はないことを別のデータで示さなければ、説得力のある議論は展開できないと思います。

No title

きんのじ
Ramsオフェンスはタッチダウンゼロの無惨な負けで、批判されて当然と思います。
ただ平均値比較から、12パーソネルが11 パーソネルより優れているかのような前提だと、それは正しくないと思います。
なぜ12パーソネルの平均が高いのか?の検証からしないと理解できた気がしません。

誰への反論だか不明な発言、たいへん失礼しましたー。

No title

desaixjp
個人として検証し理解することを優先するのは別にいいと思います。ただしデータ分析が「正しくない」と主張するのであれば、それが正しくないことを示す具体的な論拠を提示する必要があります。つまり「平均値の比較は優劣を示さない」ことをデータで裏付ける必要があります。学校の成績など平均点の高い方が優秀とされる実例が一般には多いだけに、それを否定するならよりしっかりとした証拠が必要でしょう。単に「検証が不十分」というだけでは「正しくない」ことの立証にはならないのではないでしょうか。

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きんのじ
お返事ありがとうございます。クドクドすみません。平均のサンプル数が気になって、どうにも納得できない状態でした。

サンプル数については触れて頂いたので近い見解のように思っております。
シーズン300キャリー平均4yds合計1200ydsのRB(A)と、シーズン40キャリー平均5yds合計200ydsのRB(B)とを、平均ydsで優劣は計れないのでは?という考えでした。

スーパーボウルでAがマークされて走れない時、Bを使うべき!という意見は理解しつつも、平均の土台が違うのだから平均だけをみて「こうすべきだった」的な優劣は納得いかないなぁ...という心境です。

しつこくてすみません(^^;(^^;

No title

desaixjp
母数の少なさが気になると言われれば、それはその通りだと思います。ただ母数の少ないデータから導き出した結論であっても、データという論拠がある以上は無視できないだろうと考えています。もちろんNFLはただのスポーツ興行なので、そんなことは一切気にせず好きな感想を述べるのも自由です。楽しんでこそのエンターテインメントですから。
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