チーム作りの道筋

 Pro Bowl"https://www.nfl.com/probowl "が開催されAFCが勝ったが、特に感想はなし。とりあえずJuJuの打撲傷"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001013721/article/ "が軽いことだけを祈っている

 前に紹介したBrownsの内幕暴露物"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/25797430/"の中に、Sashiらがフロントに就任した際にアナリティクスグループが作成した「Brownsのガードレール」なる資料があったという話が記されていた。この資料について、実は記事の著者がツイート"https://twitter.com/SethWickersham/status/1088447717548920832"している。
 少し横長の紙は9つのセクションに分けられ、それぞれチーム作りのための基本原則を数項目、箇条書きにしている。一番上にはDePodestaの言葉として「常に自らが信じているシステムの有効性を問い、容易に明らかにならないところに価値を発見するよう試みよ」とある。一般通念とは異なる価値をデータから見つけ出すマネーボール的な手法を簡単に言い表した文章だ。
 9つあるセクションは「タレント獲得:FA」「タレント獲得:ドラフト」「タレントの保持」「カギになるポジション」「コミュニケーション」「競争力のある優位性」「コーチング」「サラリーキャップ」「学習」について書かれたもの。これらの項目ごとにまとめた箇条書きについては「これらの信念を常にテストし続けなければならない」とも書かれており、あくまで環境次第で変わる「原則」であることも示している。
 具体的な箇条書きの内容はどんなものだろうか。まずFAに関しては「デプスに金を払うな」とある。他の選手が既に担っている役割のために高価なFAを取りにいくな、という意味だろう。だから例えばJetsがBridgewaterをやっすい値段で取った事例"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56627795.html"や、SaintsがBryantをこれまた低い価格で雇った例"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56814527.html"などは当てはまらない。今のNFLでこうした間違いをするチームはあまりないだろう。
 次にFAで求められているのは「違いを生み出すものを特定せよ:スキームの産物に気づけ」。典型的なPatriots産のFAに注意せよ、という文言だ。昨年のオフであればLT最高額でGiantsに引き取られたSolderが分かりやすい「スキームの産物」に当たる"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56624539.html"。一方、違いを生み出す存在としては、最も極端な例がFAでBroncosに移籍した時のManningだろうか。
 他にもFAを使うのはできるだけ減らせとか、年齢が重要だとか、リーダーシップやタフネスを把握せよといった内容の文言が並ぶ。簡単に言うと過去の実績に惑わされることなく、過大な期待を持たずにその真価をきちんと見定めろということだろうか。ルーキーよりコスト高になるFAに対しては、どうしてもシビアに見る必要があるのは確かだ。
 次にドラフトについてだが、これまでの指摘と平仄が合っているのが2番目にある「可能な限り多くの指名権を積み上げろ――特に最初の2巡」というところだ。Brownsはこの原則に従い、2年間に24人の指名を行った。うち1~2巡で指名した数は6人で、さらにSashiがクビになった後のドラフトでも彼の残した指名権を使って1~2巡で4人を指名。彼らのうちOgbah、Garrett、Peppers、Mayfield、Wardは年平均で10以上のApproximate Valueを記録しており、確かに1~2巡が役に立つことが分かる。
 「高い割引率がある将来の指名権を積み上げろ」という言葉もある。1年後の指名権は現在の指名権より1巡低く評価されることが多いが、これは実際の得失と比べても過小評価に当たる。だから今年の指名権を来年のものと交換する方がトータルでは得になるのだ。2019ドラフトで、昨年のドラフト権と引き換えに指名権を得た例としては、1巡だとPackers、2巡だとColts、Eagles、Patriotsがいる。ドラフトがうまいと評価されるチームの多さに注目だ。
 あとは「ブルーチップより先にレッドチップをドラフトするな」「ポジションの希少性に注意」「性格、プレイ、及びデータが人物評価の構築を助ける」といった注意事項がある。FAに比べて選手の能力評価が難しいドラフトにおいては、個々の選手にほれ込むような指名をするのは避けて客観性を重視すべきだという考えだろう。
 選手の新規獲得ではなく既存のロースターに対する扱いとしては「ロースターの最下部をつねにかき回せ」という言葉がある。次にある「何を持っているか知るために若い連中にプレイさせろ」という言葉と合わせ、チームの核になる部分以外では試行錯誤を続けるべきだという指摘だろう。若い選手たちにチャンスを与えることにもなるし、チームから見ればよりよい選手を見つける機会を得ることになる。ロースターでも下位の選手であればサラリー自体が少なく、多少入れ替えてもキャップへの影響は限定的にとどまることも背景にありそうだ。
 カギになるポジションとしては「QB、CB、パスラッシャー、OT」の名が挙がっている。Brownsがマネーボールチームを雇った当時のNFLにおけるトレンドそのままであるが、要するに「パスプレイに絡むポジション」がカギという考えだ。基本は今も変わっていないが、パスラッシャーの中にはEDGE以外にDTも含まれるようになっていること、それに伴いオフェンスでもInterior Lineの重要性が増していること、などの変化は生まれている。
 また、ここではあくまで一般論としてカギになるポジションしか書かれていないことに注意すべきだろう。実際には選手の価値は相対的にしか決まらない。いくらカギと言われてもコストが高すぎればむしろチームを傷つけるし、逆に無視されていたポジションがコスト安によってチームへの貢献度を増すこともある(最近のパスレシーブもできるRBたちなど)。さすがにQBの重要度は無視できないし、だから「QBに投資し続けろ」という見解も間違っていないと思うが、これらの原則が正しいかどうかを常にテストしなければならないことを示す分かりやすい例でもある。
 コーチングの部分では「コーチたちをコーチングに専念させ、マネジメントの負担を取り除け」とある。理屈はその通りだし、そういうアプローチを取るチームは多いだろう。だが一方でHCが事実上のGMを兼任しているPatriotsがリーグの中で常に強豪であり続けていることもまた事実。彼がマネジメントの細かい作業をどこまで手掛けているかは分からないが、例えばキャップ対策のような作業は負担になると同時にチーム力強化に結び付く可能性を秘めた作業でもある。理屈はともかくどこまで負担を分担できるかというと、なかなか難しそうな面もある。
 サラリーキャップに関しては「可能な限り長く柔軟性を維持せよ、少なくともベテランのフランチャイズQBが手に入るまで」とある。逆に言えばフランチャイズQBさえ手に入ればサラリーキャップの融通が利かなくなっても何とかなる、という見解表明だともいえる。確かに超一流のQBがいれば、チーム作りの下手なフロントでもそれなりの成績を残せたりはする(例:BreesのSaints)。問題はフランチャイズQBが希少資源であること、そして超一流QBが手に入ると次は彼をいかに安く使うかが問題になること(例:Brady)だ。勝利への道は果てしなく険しい。
 サラリーキャップについては「可能なら2年目より後、そしていかなる場合も3年目より後にはデッドマネーを残すな」という言葉もある。ルーキー契約を除き、どんな選手であっても4年目以降はいつでも切れる状態にしておけという言葉だ。新規契約や契約延長に際して記事の見出しはトータルの年数と金額を載せることが多いが、実際にはそれより短い期間で契約を終える気まんまんのものが多い。それだけ変化が激しいスポーツであり、チームとしては常に「次の道」へ向かう準備をしておかなければならないのだろう。
 また「クリエーティブであれ、契約構築に際しては常に先んじよ」という言葉もある。これを見て思い出すのはOsweilerのトレード"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56257204.html"。確かにあれはNFLではかつてなかったタイプのトレードであり、他に先んじて取り組んだ興味深いやり方だった。ドラフト指名権を手に入れるとしてもコストが高すぎるという意見もあったが、クリエーティブであったことは間違いない。
 残る3つのセクションに書かれていることは、フットボールチームでなくても当てはまるような内容が多い。特にDO NOT SILO、つまり「蛸壺化するな」という部分は、おそらくどんな組織においても重要だ。担当分野を狭く決め、他部門に手出しさせない一方でそこ以外には取り組まないという姿勢は、すぐ硬直化と停滞を生み出す。世界中が停滞しているなら別に問題はないが、他が変化している時に自分たちは変わらずにいられると思ってしまえば、その時点で組織としては死に向かっている。生き残りたければ常に外に目を向けるべきだし、外の視線を入れるべき。
 逆に言うなら、そんな当たり前のことを改めてシートに入れ込まなければならないほど、Brownsという組織の問題が根深かったということだろう。そしてこの内幕暴露話が事実であるなら、問題の大半はオーナーが原因。同じ人物が今でもオーナーを務めている以上、同じ問題が再燃する懸念が常に残っていることを心にとどめておくべきだと思う。
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