2018 week20

 Super Bowlが始まる前から「MVPのジンクス」が発動。有力候補のMahomes、Breesを抱えた2チームがいずれもConference Championshipでアップセットを喰らった。こちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56864477.html"ではccについて「プレイオフの中でももっともつまらない展開の多いラウンド」と述べたが、実際には2試合ともOTに突入するという壮絶な展開になった。
 これまでChampionshipでOTに突入した事例は、直近では2014シーズンのPackers @ Seahawksがあり、21世紀に入ってからだと4試合がそうだった。面白いことにいずれもNFCのゲーム。かつてAFCのChampionshipでOTになった事例は1つしかない。両試合ともOTになったのはもちろん初めて、というかプレイオフで連続OTは初めてらしく、最大の勝者は何といってもこれだけ面白いゲームを連続して見ることができたファンということになる。
 実力的には勝った側も負けた側もおそらくほとんど差はなかったに違いない。プレイオフは試合数が少なく、おまけにトーナメントということでツキの要素が大きくなる。100回プレイすればホームのSaintsやChiefsの方が勝つ回数は多かったかもしれないが、今回の試合に限ってはどちらもアウェイが拾うことになっただけ、とも言える。
 レギュラーシーズンも含めたOTの成績(1940シーズン以降)を見るとChiefsが19勝22敗2分、Ramsは15勝14敗2分、Patriotsは21勝23敗、そしてSaintsが15勝15敗となる。特にOTに強いチームというのが存在するわけでもないことが分かる。もつれたゲームで勝つか負けるかについては、長い目で見れば偶然の働く要素が多いと考えたくなるデータだ。優勝したければ強くなることは当然に必要だが、同時に幸運にもならなければならない。
 ANY/Aで見るとRamsが6.57に対してSaintsが5.51とこちらはパス効率通りの結果となった(Goffは6.44、Breesは5.64)。数字を見る限りRamsディフェンスがSaintsのパスオフェンスを抑えきったところが大きな勝因だろうか。Goffの成績自体は平均だが、悪いGoffが顔を出さなくて済んだのは大きい。
 もう1試合はBradyの6.04に対してMahomesが8.83とこちらは圧倒的にChiefsの優位。にもかかわらずChiefsが敗北したのは、こちら"https://twitter.com/fbgchase/status/1087200427916038147"に書かれている「プレイ数の差」が最大の理由だろう。Patriotsは攻撃の効率よりも量で相手を圧倒して勝利を掴んだわけで、こういう飽和攻撃的なことができるあたりがPatriotsの強みと言えるのかもしれない。

 それにしても今回、McVayがついにSuper Bowlまでたどり着いてしまったおかげで、これからいよいよ彼のhypeが高まりそう。既にこちら"http://www.thedrawplay.com/comic/how-to-get-an-nfl-coaching-job-interview/"で皮肉られているように「McVayと接点のあるコーチ」というだけでNFL各チームが飛びつく流れが出てきているが、これでいよいよその流れは強まりそうだ。ましてSuper Bowlに勝ったりすれば、次のオフにはどんな光景が待ち構えていることやら。
 もちろんHCの仕事が大切なのは間違いないが、1~2シーズンで判断するのはいくら何でも早すぎ。また実際にはHCの存在よりもチーム力そのものや、そのチームを構築したフロントの役割の方が大きいケースも存在する(例"https://en.wikipedia.org/wiki/1995_Dallas_Cowboys_season")。フィールドでスポットライトを浴びるのが選手やコーチであるのは当然だが、彼らを輝かせたチームがどのようにできあがったのかを見るのも興味深い。
 Championship前にそれを試みたのがFootball Perspective。今シーズンのApproximate Valueを使い、この4チームがどのように選手を集めて強いチームを作り上げてきたかについて、4回に分けてまとめている。ある年に手に入れた選手(ドラフトとそれ以外)がどのくらいのAVを積み上げたかについて分析したもので、それぞれに特徴が出ているので紹介しよう。
 まずはPatriots"http://www.footballperspective.com/how-did-the-patriots-get-here-look-to-the-2015-draft "。見ての通り、直近4年間に手に入れた選手がまさに中核となって活躍している。その意味ではとてもカレッジ的なチームの作り方にも見える。ただしドラフトは当たり年とそうでない年の差が大きい。あくまで安いベテランも含めてのチーム作りであることが分かる。
 記事中では2015年ドラフトの、特に4巡以降における当たりが大きく寄与していることを指摘している。一般的に戦力になるのは上位指名選手たちであり、下位指名のドラフトはスターターになるだけでも儲けもの。そんな選手たちの中から複数のstealをなし遂げたことがこのチームにとって大きなプラスになっているというわけだ。
 次にSaints"http://www.footballperspective.com/how-did-the-saints-get-here-look-to-the-2017-offseason/"だが、こちらはもちろん2017年ドラフトの効果が大きい、のだがそれに加えて同年に手に入れたFAなど他の選手たちもチーム力を高めるうえで大いに寄与していることが分かる。逆にこの年以外はそれほど突出して多い年がいるわけではない。
 Saintsはもともとドラフトで極めて絞り込んだ指名をすることで知られるチームだ。直近の4年間に彼らが指名したのは28人と、例えばBrowns(45人)に比べるとかなり少ない。こうした指名法は基本的にうまく行かないことが多い(Breesを抱えながらなかなか勝てなかったのもそれが理由)のだが、たまに的中した年があるとこのように大きなプラスを得ることができる。
 Chiefs"http://www.footballperspective.com/how-did-the-chiefs-get-here-look-outside-the-first-two-rounds/"は上記2チームに比べると選手を手に入れた年はばらついているのだが、それより大きな特徴は「最初の2巡以外」を中心とした選手層を築き上げていることだそうだ。チームの作り方としては割とPatriotsに似ている感じがある。
 Patriotsとの違いを敢えて言うなら、ドラフト選手の寄与度が彼らより高めというあたりだろうか。その意味ではPatriotsに比べて「今ここ重視」感はある。ただしそれ以外のチームに比べれば毎年均等に戦力を追加しているのは間違いないし、実際彼らは現在6シーズン連続で勝ち越すなど、リーグでも強豪の地位を保持している。長期にわたって強豪であり続けるPatriotsほどではないにせよ、長持ちするチーム作りに取り組んでいると見られる。
 最後にRams"http://www.footballperspective.com/how-the-rams-got-here-the-dream-offseason-was-2017/"だが、こちらもSaints同様に2017年がカギを握る年であったことが分かる。ドラフトが大当たりだったわけではないが、他の補強が見事に的中し、一気に強いチームを作り上げることに成功した。昨年のオフにも猛烈な補強をしたことは指摘済み"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56776519.html"だが、本当に重要だったのはその前の年だったようだ。
 グラフを見ても4チームの中で最も横軸が狭く、基本的に若いチームであることが窺える。問題は短期集中型のチーム作りによるプラス効果がいつまで続くか。今いる選手たちのサラリーが上がり、あるいは彼らがFAになるとき、うまく「長期安定」しているPatriotsやChiefsのような形状にグラフを変えられるかどうかが重要だ。もちろんそんなことは無視して目先の勝利に集中する手もある。その意味では今シーズンはまさに大チャンスだろう。

 というわけで2018シーズンも残りはPro BowlとSuper Bowlの2試合のみとなった。PatriotsのBradyはこれで実に9回目のSuper Bowlとなるのだが、この数字は他のあらゆる「チーム」の出場回数より多い"https://twitter.com/Job93155507/status/1087193754342174720"。Patriots以外に最もSuper Bowlの出場が多いのはCowboys、Steelers、Broncosのそれぞれ8回だ。
 Bradyが先発として過ごしたシーズンはこれまで合計17シーズンある。そのうち16シーズンでプレイオフに、13シーズンはConference Championshipに、そしてキャリアの半数以上に当たる9回でSuper Bowlまでたどり着いた計算。2回に1回以上はSuper Bowlに出ているわけだ"https://twitter.com/MichaelDavSmith/status/1087190763220410374"。次の試合で彼が何をするにせよ、何らかの新しい記録が生まれるのは確かだろう。
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コメント

No title

通りすがり
いつも楽しく記事も読ませていただいています。これからも素晴らしい記事を楽しみにしてます。今回のペイトリオッツ対チーフスについて一昨年のスーパーボウル同様ペイトリオッツは量における飽和攻撃で勝利をしたという点に関してなんですが、どちらの試合も引き分けとなり60分の試合では勝てなかったわけで、もちろん負けたわけでもありませんが。このプランタイムポゼッションを奪う戦術は全てのスポーツにおいてオフェンス偏重のチームに対する答えとして共通していると思います。アメフトに関して言えばランゲームが重責を担うと思っています。タイムコントロールとランゲームの相関についてはどのようにお考えでしょうか?ただし、ブレイディのような50回パスを投げたら勝率が抜群に高いQBが実在したり昨今のパス成功率を加味するとランはやっぱり重要度が低いのかとも思うんですが、、ランゲームとタイムポゼッションと勝率について何か答えがあればお教え願います

No title

desaixjp
Super Bowl XXVで勝ったGiantsは40分強のタイムポゼッションを記録していますが、彼らのランは39回、パスは34回でした。またSuper Bowl LIのPatriotsはやはり40分強のタイムポゼッションで、ランは25回にすぎず、パスが68回と圧倒的でした。そして今回のChampionshipはラン48回、パス46回とほぼ同数でした。ランとタイムコントロールとの相関が高いようには見えません。

勝率との関係についてはよくわかりません。ただランとタイムコントロール、勝率それぞれの相関が高い場合、それが「リードしたチームがランで時間を潰した結果」でしかない可能性があることは踏まえておいた方がいいでしょう。「ランで時間をコントロールして勝った」のか、「勝っていたからランで時間を潰した」のか、そのあたりをきちんと見極める必要がありそうです。

No title

通りすがり
> desaixjpさん
ありがとうございます
なるほど!です3Qまでをとれればあるいは?ということですねありがとうございます。しかし偉大なパス成功率ですね(笑)

No title

desaixjp
ランと勝率の関係について調べるなら、どのような点差の時にランが使われるかを調べる手もあるでしょう。
ランの比率が大きく増えるのはリードしている時で、同点時やリードされている時は圧倒的にパスに頼っているのがリーグ全体の傾向です。
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