来季への空想

 MLBからドラフト1巡で指名されていたKyler MurrayがNFLのドラフトに参加すると宣言した"https://twitter.com/TheKylerMurray/status/1084908931007348737"。一方、今月下旬に行われるシニア・ボウルに参加するQBの名前も発表されている"https://twitter.com/JimNagy_SB/status/1082794848338542592"。まだプレイオフ3試合&プロボウルが残っているものの、既に一部はドラフトに向けて走り出している状態だ。
 昨年末にESPNが出したQBのドラフト有力候補に関する記事"http://www.espn.com/nfl/draft2019/story/_/id/25548365/"には実はMurrayも載っているので、これをとっかかりにしながらざっと今年のドラフトプロスペクトについて確認しておこう。数字はパス成功率、パス試投数、そして試合数だ。

Dwayne Haskins 70.0% 590 22
Daniel Jones 59.9% 1275 36
Will Grier 65.7% 785 28
Drew Lock 56.9% 1553 50
Ryan Finley 64.2% 1461 46
Jarrett Stidham 64.3% 848 37
Kyler Murray 67.4% 519 29

 どれもこれも帯に短し襷に長し。HaskinsとMurrayは高いパス成功率こそ魅力だが試合数も試投数もえらく少ない。小さい母数で極端にいい数字を叩きだした可能性があるだけに、彼らにドラフト資源を投入するのはなかなかリスキーであろう。
 逆に試投数も試合数もトップのLockはパス成功率が低すぎる。最近のカレッジで6割にすら到達しないパス成功率というのはさすがに拙いんではなかろうか。同じことは1000試投を超えていながら6割弱の成功率にとどまっているJonesにも当てはまるわけで、なかなか選びづらいのが正直なところだ。
 数字だけで判断するならこの中でもっともマシなのは46試合に出場し64.2%のパスを通しているFinleyだ。昨シーズンのMayfieldのような「彼一択」というほどの圧倒的な存在ではないが、リスクを避けて選びたいチームならFinleyが一番よさそうに思える。ただし彼はカレッジに6年もとどまっており、来シーズン途中で25歳になるという問題もある。成長の余地があまりなさそうなのだ。
 残るGrierとStidhamはパス成功率はまだしも、試投数や試合数は信頼感が置けるほどのレベルには達していない。中途半端な彼らを選ぶくらいならいっそハイリスク覚悟のうえでHaskinsやMurrayにドラフト資源を投じた方がいいという判断はあるだろう。
 とりあえず試投数が多く成功率が6割を下回っている2人は除外し、あとはチームが何を目指すかを考えながら選択するという方法しか思い浮かばない。ギャンブルするならHaskins、Murrayで、超一流にはなれそうにないが堅実なプレイを安いコストでやってくれればいいと考えるならFinley。残り2人はドラフト巡が下がっても残っていたらスティール狙いで指名といった感じだろうか。
 今年のドラフトはDTやEDGEといったDLが豊作のようだ"https://twitter.com/JimmyKempski/status/1085223575789944832"。一方QBは昨年ほどではないと見られているようだが、それでも3~4人が1巡で指名されると見ているモックドラフトは多い。昨年は珍しくそうでもなかったが、基本的にQBはいつでも人材不足のポジションであり、ドラフトで期待できる選手がいるのなら指名しておきたいという動きが出ても不思議はない。NFLでtankingが成立するか否かについては色々な意見はあるものの、QBに関しては1巡上位でないと成功率が下がるという見解もあり、その通りであればQBを取るためのtankingはあり得なくはない。

 一方で昨年のドラフト選手たちのApproximate Valueが固まった。こちら"https://www.pro-football-reference.com/years/2018/draft.htm"を見ると最も活躍したのは2巡のDarius Leonardで、以下1巡のQuenton Nelson、Saquon Barkley、Leighton Vander Eschが続く。QBたちの中ではMayfieldがトップで、2桁の数字を達成したのは計6人だ。
 チーム別に見ると最も成功したと言えるのはColtsで、合計で60AVに到達している。これは2番手のBrowns(34)の倍近くもあり、非常に好調だったと言える。一方、プレイオフで生き残っている4チームはいずれも数値が低く、ChiefsとPatriotsはともに10、SaintsとRamsはいずれも7しかない。足元のドラフトが不調であってもトータルとしてのチーム力がそれだけで落ちるわけではないことが分かる。
 それにドラフト選手たちの評価もこれで決まったわけではない。チーム側から見た彼らの評価は結局のところ安いサラリーで働く4年間にどれだけの実績を積み上げられたかで決まる。ドラフトが冴えない結果になれば、他の「安くていい選手を使えるチーム」相手に後れを取ってしまう原因になるからだ。一方でドラフトはくじ引きのようなものであるため、ドラフトの結果にはどうしても差が出る。足元で成功しているチームの中にも(Patriotsのような例外もあるが)過去4年の間にうまいドラフトをしたところが多い。
 では現時点で先行きの明るいチームはどこだろうか。直近2年のドラフト選手たちのAVだけを見るなら、何といってもColts(計102AV)だろう。今シーズン後半の盛り返しは単にLuckが復活しただけではなく、ドラフトの成果を反映したものである可能性が存在する。またSaints(96)、Browns(87)、49ers(83)、Bears(82)あたりもこの2年ほどいいドラフトをしており、これからの2年間は収穫期に入ることが期待できる。
 逆にこの数字が最も低いのはPatriotsで、計18AVと2番目に少ないEagles(30)よりも40%も少ない。ただし彼らは元からルーキー契約選手よりも「安いベテラン」に頼る傾向の強いチーム"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56809701.html"であり、この数字を額面通りに受け取れないのが問題。普通のチームならそろそろプレイオフから脱落しても不思議はないのだが、さて来年は?

 また既にシーズンが終わったチームにとっては2019年度のサラリーキャップへの対応も必要になってくる。キャップに余裕のないチームについてキャップヒットの大きな選手を確認し、彼らがどうなるかについて想像を巡らせてみるとしよう。
 まずこちら"https://overthecap.com/salary-cap-space/"で赤字が予想されているEaglesだが、こちらは単純にFoles"https://overthecap.com/player/nick-foles/773/"を切ればいい。普通にカットしても18.8ミリオンが浮き、赤字は消える。もちろんトレードしてもいい。FolesとWentzのどちらもキャリアANY/A+は102と一緒なので、若くて安いWentzを残しFolesを出すのは当然だ。ただしドラフト新人やFA対応のためには、Foles以外にもキャップを空ける対策は必要だろう。
 次は同じく赤字予想のJaguars。ここはBortles"https://overthecap.com/player/blake-bortles/2942/"をどうするかが問題になる。普通にカットした場合は16.5ミリオンのデッドマネーが発生するし、6月1日以降に延ばしても11.5ミリオンは覚悟しなければならない。トレードが成立すればデッドマネーは10ミリオンで済むのだが、Folesと違ってBortlesをほしがるチームはあまりないだろう。Osweilerの時のようにドラフト権を付けて譲り渡す必要があるかもしれない。
 黒字予想だがほとんど余裕のないVikingsでは、最高給取りのCousins"https://overthecap.com/player/kirk-cousins/1443/"と「全額保証」契約を結んでいるため、彼のキャップに関してはあまり対応の余地はない。ただし彼以外にも10ミリオン超のキャップヒットとなる選手が7人もいるため、そのあたりからキャップをひねり出すことは可能だろう。
 次はBucceneersだが、ここはいざとなればWinston"https://overthecap.com/player/jameis-winston/3849/"をデッドマネーなしでカットするという手が使える。実際にやるかどうかは別問題だが。SaintsはBrees"https://overthecap.com/player/drew-brees/1492/"のキャップヒットが最も大きいが、キャップを空けるためには当然彼以外のところで対応する必要がある。
 DolphinsはTannehill"https://overthecap.com/player/ryan-tannehill/717/"の処理が課題。カットするのが手っ取り早いが、tankingめざしてもう1年引っ張る方法もアリか。BearsはMack"https://overthecap.com/player/khalil-mack/2944/"のキャップヒットが最も大きいのだが、これまたカットはあり得ない選手。やはり他の場所でスペースを空けるしかないだろう。
 なおPatriotsのキャップ対応についてはこちら"https://www.patspulpit.com/2019/1/8/18173404/"に予想が載っており、Bradyの契約延長、Gronkowskiのカットなどが語られている。確かにGronkは引退が噂に上るなど、Patriotsでの居場所がなくなりつつあるのは確かだろう。というか去年のオフに彼をトレードしようとしたBelichickは、おそらくその時点で彼の劣化を正確に予想していたのだと思われる。相変わらず選手の見極めが恐ろしいほど優秀かつドライだ。
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