積極か慎重か

 Football Perspectiveが昨シーズン中にこんなエントリー"http://www.footballperspective.com/completion-percentage-and-passing-first-down-percentage-part-ii/"をアップしていた。パスの成功率とパスのFirst Down率をそれぞれZ-score化し、「パス成功率は高いがFD率は低い」ところと、逆に「成功率は低いがFD率が高い」ところを数値で示したものだ。
 昨シーズンの序盤、Jetsはパス成功率が極めて高かった一方でFD率は相対的に低く、両者のZ-scoreの差はリーグでも最大だった。逆にパス成功率は全然ダメだがFD率が異様に高かったのがBuccaneers。Winstonの持つ特殊な能力"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56803351.html"が数字に明白に表れていることが分かる。
 で、このデータを見ていて思いついたのが、QBをGame ManagerとGunslingerに分ける議論"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55184946.html"。この時はFootball Perspectiveの主張に違和感があると指摘したし、その考えは今も変わっていないのだが、別の指標を使ってGame ManagerとGunslingerを区別することはできるかもしれない。即ち、パス成功率とパスFD率を使って。
 Winstonはパス成功率よりもFirst Downを取ることを重視してプレイしているQBなのであり、一方2017シーズンにJetsでプレイしていたJosh McCownはFDよりもまずはパスを通すことを考えていたのだと思われる。前者はパス失敗を恐れないアグレッシブなGunslinger、後者は慎重にゲームを進めようとするGame Managerである、と解釈することができるのではなかろうか。
 というわけで、とりあえず直近5年間(2014-18シーズン)のパス成績を使い、上と同様にZ-scoreの差を算出してみた。対象は1000パス試投以上のQBで、数値が大きいほどFD率よりパス成功率の方が高い(つまりGame Managerな)QB、低いほどアグレッシブなGunslinger QBとなる。

Bradford +2.33
Flacco +1.73
Brees +1.08
Carr +1.08
Cutler +0.95
Keenum +0.90
Manning +0.75
Cousins +0.74
Smith +0.47
Prescott +0.44
Tannehill +0.39
Osweiler +0.38
Taylor +0.34
McCown +0.31
Roethlisberger +0.13
Wentz -0.04
Dalton -0.05
Stafford -0.12
Kaepernick -0.12
Rodgers -0.15
Brady -0.17
Mariota -0.22
Wilson -0.24
Ryan -0.24
Rivers -0.42
Luck -0.69
Bortles -0.72
Goff -0.99
Hoyer -1.21
Fitzpatrick -1.49
Newton -1.61
Palmer -1.71
Winston -2.24

 それぞれ両極端にはさもありなんと言いたくなる名前が並んでいる。Winstonはやはり究極のGunslingerのようで、低いパス成功率と一方で極端に高いFD率(RyanやBradyやRoethlisbergerより上)が同居している。一方のBradfordは究極のdink and dunkなQBであり、かつて70%ものパス成功率を記録しながらANY/Aではリーグ中位というトンデモ成績を叩きだしたことのある選手だ。
 彼らも含め、極端なQBはどうやら扱いづらそうであることが分かる。Game Manager度の高いQBたちの中で超一流と言えるのはBreesくらいで、後は平均かそれ以下のQBたちが中心。逆にGunslinger度の高い連中を見ると、超一流と言えるほどの選手は見当たらず、Palmerが最もいい選手だと思われる。一方、BradyやRodgersをはじめとした有力選手たちは、少しGunslinger寄りではあるが、基本的に真ん中付近に集まっている。
 実際、Gunslingerの中には今シーズン交代で先発を務めることになったWinstonとFitzgerald、一度MVPを取ったことがあるため不動のエースとなっているもののお世辞にもパスがうまいと言われることはないNewton、そして結局は先発失格で控えに戻ったHoyerが並んでいる。Palmerも結局のところはジャーニーマンであり、唯一先発を続けているNewtonのPanthersも隔年ごとにしか活躍できていない。
 かといってGame Managerがいいのかというとそうでもない。もちろんBreesという化物はいるのだが、彼を除くとついに先発失格どころか雇うチームもなくなったBradford、新人に先発の座を奪われたFlacco、既に引退しているCutlerと微妙な名前が並んでおり、Carrは先発をキープしているものの成績的には平凡なQBだ。
 要するにプレイスタイルが極端に偏っているQBはなかなか成功しづらいのだろう。パス成功率が低いQBは将来の成績が低迷するリスクが高く、それだけ安定度に欠ける。当たればでかいが外れも多い。逆にパス成功率が高くてもFD率が低ければ、効率よくオフェンスを進めることができなくなる。Breesのように突出して高いパス成功率を達成しなければならなくなるのだ。

 一方で一般的なイメージと違う数字もある。RoethlisbergerはかなりGunslingerな印象のあるQBなのだが、少なくとも直近5年についてはむしろGame Manager的なプレイ、つまりFD率よりパス成功率重視なプレイをしていたように見える。RodgerとBradyがほぼ同じ、むしろ僅かにBradyの方がGunslinger寄りであるのも驚きだ。どちらかと言えばBradyの方がGame Managerにみられることが多い。
 Smithの数値がプラスになっていること自体は想定通りだが、思ったほど数値が高くないのは驚き。CousinsやManningの方がもっと慎重にプレイしていたとは思わなかった。RyanとWilsonについても、この両者がほとんど同じ位置にいるのは予想外。WilsonはもっとGunslinger度の高いQBだと思っていたのだが、実はそこまで極端な数字ではないことが分かる。
 最近の若手が対照的な数字を示しているのも面白いところだ。Wentzは真ん中付近に位置してるのに対し、GoffはかなりGunslinger寄り。よくQBの評価で「肩が強い」という表現が使われるのだが、Wentzのように肩が強いと言われる選手が必ずしもGunslingerになるわけでない様子が窺える。選手の肉体的資質とプレイの傾向とは必ずしも一致しないのかもしれない。
 注意しておくべきなのは、この数値はあくまで「パス成功率」と「パスFD率」の相対的な差を見たものにすぎず、それぞれの絶対値を示したものではない点だ。例えばStaffordとKaepernickはこのランキングでは似たような位置にいるが、成功率やFD率そのものを見るとKaepernickはかなり低い。QBの能力というより性格の違いを示すデータだと思ってほしい。
 また、あくまで直近5年の数字である点も外せない。選手によってはかなり少ない母数で評価されているため、彼らの本来の性格を表していない可能性はあるし、そうでない選手でも他の時期を取れば違う数字が出てくることは考えられる、というか上にも書いた通り多分Roethlisbergerは違う。もっと長期でデータを取ってみれば、また異なる風景が見えてくるかもしれない。
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コメント

No title

きんのじ
Winstonが特別なのは納得ですが、同年のランプレイによる更新数との関連も見ないと、判断が偏りそうに感じましたがどうなんでしょう?

No title

desaixjp
ご指摘はその通りです。
さらに言うならランプレイによるFD更新だけでなく、FD更新のために必要であったヤード数の差や、プレイ時点での得失点差、残り時間などもQBのプレイスタイルに影響を与えていたでしょう。
ここではそうした要素を全て省略し、簡単な方法で算出することを選びました。
全ての要素を入れた算出法は、存在するとしても複雑になりすぎるか、あるいは条件設定が厳しすぎて十分な母数が集められない可能性があるからです。
あくまである一面から切り取った時に何が見えてくるかを調べてみた取り組みだと思ってください。

ちなみに直近5年間を見ると、ランプレイのうちFD更新につながる割合は23.4%、パスの方は33.0%でした。

No title

きんのじ
ご回答ありがとうございます!
私も分析に関わるところがあり「分析要素を多く(細かく)すると、各要素の差の意味や発生理由が分からなくなる」迷路にはまることが多く、ブログ主さんのやりたいこと・主旨を理解しました。
これからも楽しく拝読させて頂きます。

No title

desaixjp
いえいえ、こういう指摘は新しい分析のきっかけになることも多いのでありがたいものです。
今回の件から過去5年間のランFD更新率とパスFD更新率の相関係数を調べてみたのですが、+0.29程度になりました。
ランでFD更新度合いが高いチームはパスでもFD更新率が高い傾向があるようで、要するに効率的なオフェンスはラン、パス双方で効率的にFDを更新できるようです。
といっても所詮は「弱い相関」なので、チームごとに色合いの差があることは否めませんが。
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